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PICK UP PLAYER | Hayate Ueki

デビューは突然だった。

今季初のベンチ入りを果たした4月5日、明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第9節 川崎フロンターレ戦15分のこと。
ダニーロ ボザの負傷により、ピッチに送り込まれたのだ。

「あの時間に出ることは想像していなかったので最初はビックリしました」

植木 颯はそう振り返っている。

「だけど、出るからにはチームの力になろう、今持っている自分の最大限を出そうと思って、ピッチに立ちました」
 
植木の特長は精度の高い左足。
さらに言えば、戦況を的確に見極め、その左足でテンポを作ることができるという点だろう。ボランチでコンビを組む安居海渡は、植木のプレーについてこう言及したことがある。

「短いパスも長い距離のボールも出せて、リズムを作っていく上でポンポンやってくれる選手。なので、そういう意味ではやりやすさを感じています」と。

植木がその片鱗を見せたのは、川崎戦後半開始からまもなく。金子拓郎がゴールネットを揺らしたものの、VAR後に取り消された一連の流れの中にある――。
ビルドアップから右サイドの関根貴大へとボールが渡り、そこから中央のマテウス サヴィオへ速い斜めのパスが入る。サヴィオの落としを受けた植木が、ワンタッチで左サイドへと展開した。
このワンタッチでのパスが淀みない流れと、左サイドでそのパスを受けた長沼洋一に『時間』と『スペース』を与えた。植木がトラップしてから出していたら、長沼に与える要素はどちらも減っていたはずだ。
長沼は余裕をもっての1対1からクロス、ゴール前でのスクランブルには植木自身も顔を出してシュート。そこから、こぼれ球を金子がプッシュする展開へと続いた。

「あそこで自分が前に絡んでシュートで終われたのは良かったなと、試合中に自分でも感じていました」

植木はそう振り返る。
残念ながら取り消された金子のゴールだったが、56分には再現。
そこにも彼は関わっていた。

中央でオナイウ阿道が持ち上がるのに合わせて左サイドをタイミングよく駆け上がりボールを引き出す。

「阿道君から優しいパスが来たので、中にしっかりとクロスを送るだけでした。あそこの形はすごく良かったと思います」

植木のクロスから生まれた金子のゴールで2-1としたゲームだったが、最終的な結果は2-3と悔やまれる敗戦だった。
その後、1試合に途中出場・1試合でベンチ入りをするも、最も欲しい『勝利』という結果は得られていなかった。

「自分が出た試合で勝っていないので――」

そんなことを、口にする日もあった。

だが、指揮官が田中達也監督へと代わっての初戦、今季2度目の対戦となる川崎戦に途中出場。ようやく勝利を味わう。

そして、続くジェフユナイテッド市原・千葉戦で初先発を果たした。
埼玉スタジアムのピッチへと至る階段を上がるときには、こう思ったそうだ。

「今まで経験したことのない声援を感じて、緊張するかなと思いましたけど意外とそんなこともなく、その雰囲気を楽しんで試合に入ることができたと思います」

頼もしさを感じさせる言葉で振り返る彼は、その左足で長短のパスを繰り出し、試合のリズムを構築していた。
彼が先発した理由には、連戦や負傷といった他の選手のコンディションに関わる要素もあったかもしれない。
だが、それらは決して『主な理由』ではないだろう――。

千葉戦後、メンバー選考について問われた田中達也監督は、次のように応じている。

「やはり日常のところ。試合は非日常であり、日常が全て非日常に表れると思っているので、そこでしっかりアピールした選手をメンバーに入れたいと思っています」

この田中監督の答えは、千葉戦後に植木が残したこんな言葉とシンクロしているように思えてならない――。

「自分のプレーが通用するところはありましたけど、ボールを受けてさばく回数がまだまだ少ないと、試合が終わった今は感じています。そこの精度や回数はもっと高めていかないといけない」

そう語った植木は、さらにこう続けていた。

「練習からもっと試合をイメージして、試合に出場した経験を生かして、まずは練習から、と思っています」、と。

千葉戦ではサミュエル グスタフソンも復帰を果たし、ボランチ陣の競争はまた激しさを増してきている。
しかし、だからと言って、植木 颯が後塵を拝するばかりとは限らない。
彼のプレーがファン・サポーターの歓喜を呼び起こす瞬間は、決して遠くないはずだ。

(取材・文/小齋秀樹)

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