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PICK UP PLAYER | 柴戸 海
柴戸 海は変わりつつある。
今年は30歳だからと威厳を出そうとひげを伸ばしているが、変わっているのは外見だけではない。
ピッチでの存在感が変わりつつある。中盤で自身の持ち味を発揮しながら、ゴール前に顔を出す機会も増えた。さらに、かつての柴戸は良く言えばがむしゃらさ、ときに落ち着きに欠ける姿が目立つこともあったが、今季は妙に落ち着いて見える。
過去といまでプレー中の感覚に違いはあるのか。そう問われると、決して陽気なキャラクターではなく、考えながら話すことも多い柴戸が即答した。
「あります。ピッチ上で見える景色は全く変わりました」
きっかけは2024年、プロキャリア7年目で初めて経験した長期離脱だった。
FC町田ゼルビアに期限付き移籍していた2年前、柴戸は左膝軟骨損傷の重傷を負い、シーズン後半戦を棒に振った。浦和レッズに復帰した2025年も回復と復帰に時間を要し、シーズン初出場は8月31日に行われた明治安田J1リーグ 第28節 アルビレックス新潟戦。ブランクは1年以上に及んだ。
かつては短期間の離脱でも柴戸は焦りを感じていた。その離脱から戻るといつも、爪痕を残さなければいけないという焦燥感に駆られた。周囲の選手の良さを吸収して自分の良さに昇華するのは柴戸の特長の一つであるが、他の選手ができることは自分もできなければならないという焦りがそうさせることも少なくなかった。
だが、膝を手術し、プレーできない日々は焦りようがなかった。
「怪我をすることがポジティブなんてことは絶対にありませんが、ポジティブに捉えるしかありませんでした。それがよかったんですよね」
焦る必要もない日々で柴戸は冷静に物事を捉え、自身を見つめ直した。
「自分の欲みたいなものは、一度捨てました。チームのために自分ができることをやる。チームに求められることをやる。それが最優先です。プラスアルファとして自分の良さを出せたらいい。以前はそっちの気持ちの方が強すぎました」
例えば、今季の個人的な目標の一つは、ゴールを取れるボランチになること。それは一見、「欲」のようにも見えるが、実際は違う。
「昨シーズンの上位にいたチームのボランチにはそういう選手がいたと思います」
明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第5節 水戸ホーリーホック戦の肥田野蓮治へのアシストを筆頭にシーズン序盤から見せるゴール前への飛び出し、VARの判定でノーゴールとなった第2節 FC東京戦のこぼれ球に反応したシュート、AFCチャンピオンズリーグ出場権とタイトルを獲得した2021年の天皇杯 決勝 大分トリニータ戦の決勝ゴールを彷彿とさせる第7節 柏レイソル戦のボレーシュートといったセットプレーからのチャンスメークも、チームとしてゴールが欲しいときに発揮したプレーだった。
コメントからもチーム全体を考え、全体を俯瞰できていると感じられることが増えた。
例えば、第4節の鹿島アントラーズ戦。相手を圧倒しながら2点のリードを奪う時間帯もあっただけに、どうしても終盤の戦いに目が向いてしまうが、柴戸はもっと全体を捉えることの必要性を説いていた。
「最後の時間も集中しようとみんなが思っていますが、失点は起きるときは起きてしまう。90分の積み上げが最後の5分、10分に出るので、最後だけ切り取るのではなくて、試合を通してどうだったかと考えることがチームとして必要だと思います」
積み上げになるのはキャリアも同じだろう。いまは、ただがむしゃらにプレーすることが大事だと思わないが、そうしていた時期を否定はしない。
「あのときに戻ったとしても、同じことをすると思いますよ」
そう言って柴戸は笑う。がむしゃらだとか、必要以上に必死だったとか、それはいま振り返れば思うこと。あのころがなかったら、怪我をポジティブに捉えることもできなかったかもしれない。怪我をポジティブに捉えられなければ、いまの柴戸はいない。
全てはチームのため、勝利のため。だからスタメン出場を続けている中でこの2試合、勝利できていないことに相当な悔しさを感じているはずだ。
次節、3月22日にホーム埼スタに迎えるのは、変わるきっかけとなる期間を過ごした町田。「『未来のレッズファン・サポーター』がサッカーの楽しさを知る、きっかけづくりの日」でもある『GoGoReds!デー』で三児の父でもある柴戸が、レッズはもちろん町田のファン・サポーターの前で変わった姿、進化した姿を見せる。
(取材・文/菊地正典)
今年は30歳だからと威厳を出そうとひげを伸ばしているが、変わっているのは外見だけではない。
ピッチでの存在感が変わりつつある。中盤で自身の持ち味を発揮しながら、ゴール前に顔を出す機会も増えた。さらに、かつての柴戸は良く言えばがむしゃらさ、ときに落ち着きに欠ける姿が目立つこともあったが、今季は妙に落ち着いて見える。
過去といまでプレー中の感覚に違いはあるのか。そう問われると、決して陽気なキャラクターではなく、考えながら話すことも多い柴戸が即答した。
「あります。ピッチ上で見える景色は全く変わりました」
きっかけは2024年、プロキャリア7年目で初めて経験した長期離脱だった。
FC町田ゼルビアに期限付き移籍していた2年前、柴戸は左膝軟骨損傷の重傷を負い、シーズン後半戦を棒に振った。浦和レッズに復帰した2025年も回復と復帰に時間を要し、シーズン初出場は8月31日に行われた明治安田J1リーグ 第28節 アルビレックス新潟戦。ブランクは1年以上に及んだ。
かつては短期間の離脱でも柴戸は焦りを感じていた。その離脱から戻るといつも、爪痕を残さなければいけないという焦燥感に駆られた。周囲の選手の良さを吸収して自分の良さに昇華するのは柴戸の特長の一つであるが、他の選手ができることは自分もできなければならないという焦りがそうさせることも少なくなかった。
だが、膝を手術し、プレーできない日々は焦りようがなかった。
「怪我をすることがポジティブなんてことは絶対にありませんが、ポジティブに捉えるしかありませんでした。それがよかったんですよね」
焦る必要もない日々で柴戸は冷静に物事を捉え、自身を見つめ直した。
「自分の欲みたいなものは、一度捨てました。チームのために自分ができることをやる。チームに求められることをやる。それが最優先です。プラスアルファとして自分の良さを出せたらいい。以前はそっちの気持ちの方が強すぎました」
例えば、今季の個人的な目標の一つは、ゴールを取れるボランチになること。それは一見、「欲」のようにも見えるが、実際は違う。
「昨シーズンの上位にいたチームのボランチにはそういう選手がいたと思います」
明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第5節 水戸ホーリーホック戦の肥田野蓮治へのアシストを筆頭にシーズン序盤から見せるゴール前への飛び出し、VARの判定でノーゴールとなった第2節 FC東京戦のこぼれ球に反応したシュート、AFCチャンピオンズリーグ出場権とタイトルを獲得した2021年の天皇杯 決勝 大分トリニータ戦の決勝ゴールを彷彿とさせる第7節 柏レイソル戦のボレーシュートといったセットプレーからのチャンスメークも、チームとしてゴールが欲しいときに発揮したプレーだった。
コメントからもチーム全体を考え、全体を俯瞰できていると感じられることが増えた。
例えば、第4節の鹿島アントラーズ戦。相手を圧倒しながら2点のリードを奪う時間帯もあっただけに、どうしても終盤の戦いに目が向いてしまうが、柴戸はもっと全体を捉えることの必要性を説いていた。
「最後の時間も集中しようとみんなが思っていますが、失点は起きるときは起きてしまう。90分の積み上げが最後の5分、10分に出るので、最後だけ切り取るのではなくて、試合を通してどうだったかと考えることがチームとして必要だと思います」
積み上げになるのはキャリアも同じだろう。いまは、ただがむしゃらにプレーすることが大事だと思わないが、そうしていた時期を否定はしない。
「あのときに戻ったとしても、同じことをすると思いますよ」
そう言って柴戸は笑う。がむしゃらだとか、必要以上に必死だったとか、それはいま振り返れば思うこと。あのころがなかったら、怪我をポジティブに捉えることもできなかったかもしれない。怪我をポジティブに捉えられなければ、いまの柴戸はいない。
全てはチームのため、勝利のため。だからスタメン出場を続けている中でこの2試合、勝利できていないことに相当な悔しさを感じているはずだ。
次節、3月22日にホーム埼スタに迎えるのは、変わるきっかけとなる期間を過ごした町田。「『未来のレッズファン・サポーター』がサッカーの楽しさを知る、きっかけづくりの日」でもある『GoGoReds!デー』で三児の父でもある柴戸が、レッズはもちろん町田のファン・サポーターの前で変わった姿、進化した姿を見せる。
(取材・文/菊地正典)
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