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PICK UP PLAYER|根本健太
秋の生暖かい風が吹くなか、日産スタジアムにはトリコロールの旗が揺れ、大きなチャントがずっと響き渡っていた。今でも脳裏に焼き付いているのは、ゴール裏の一角に陣取る浦和レッズのファン・サポーターが静まり返っていた姿だ。大卒2年目の根本健太は、2月21日の横浜F・マリノス戦を控え、大敗した2025年10月18日の悪夢を払拭することを誓う。
「倍返ししますよ。あのような試合は、もう絶対にしてはいけない。無失点で抑えて、勝って帰ります」
力強い言葉には、特別な思いがこもる。ふと過去の記憶もよみがえる。開始早々、自陣のペナルティーエリア付近で長い芝に足をとられ、まさかのボールロスト。6分に自らのミスで先制点を献上するなど、前半だけで4失点を喫した。センターバックとして屈辱を味わったあの日、重たい空気が流れる取材ゾーンで自らに言い聞かせていた。
「こんなことで潰れていたら、これからやっていけないので。しっかり反省して、次に向かいます」
その言葉どおり、ルーキーイヤーの失敗は糧となった。今季は開幕戦からスタメンに定着。持ち前の勇気あるビルドアップで起点をつくり、攻撃を支えている。相手にプレッシャーをかけられても、慌てることはない。長短のパスを使い分けながら、冷静に中盤、前線にボールを預ける。それでも、まだ物足りなさを覚えている。
「最近は自分の武器をあまり出せていないので、そろそろ出したいですね」
最終ラインの中央左寄りから右サイドへ対角線上に届けるサイドチェンジだ。長年かけて、磨きをかけてきたストロングポイント。試合にあまり絡めなかったジェフユナイテッド市原・千葉のジュニアユース時代から左足のキックだけには自信を持っていたという。当時は左サイドバックを務めることが多く、唯一無二の長所として伸ばしてきた。こだわりも強いが、相手の研究も進んでいる。今季は根本が最終ラインでボールを持つと、相手のサイドバックがすっと下がり、スペースを消してくる。
「分析されているなと思いますけど、そんなものは関係ないので。どんどん出していきたいですね」
対戦相手に対策されてこそ本物。前節のFC東京戦では同じ左利きのセンターバック、稲村隼翔が警戒されているなかでも、次から次にミドルパスを通す姿を見て、刺激を受けた。
「自分と全く同じ特長を持った選手でしたから。自分も負けているとは思っていないですし、そういう気持ちがどんどん出てくるのが、いまは楽しいですね」
右サイドハーフの金子拓郎、二田理央らとも連係を深め、パスコース、タイミングなどを再確認している。付け入るスキは必ずあるはず。もちろん、ピッチを横切るパスだけに頼っているわけではない。本人が「刺しパス」と呼ぶ縦へのボールも鋭く、FWの足元にピタリとつける。横浜FM戦でポストワークを得意とするイサーク キーセ テリンが前線に入れば、くさびを打ち込むシーンも増えるかもしれない。さらに相手最終ラインの背後に絶妙に落とす球もお手の物。新加入の肥田野蓮治を走らせる形も頭に描いている。背番号5の左足から繰り出すパスから目が離せない。
ただ、センターバックにまず求められるのは堅固な守備。それは根本自身が一番よく理解している。得意の空中戦で負けるつもりはなく、相手FWを封じ込めることにも全力を注ぐという。新シーズンからは流通経済大学の先輩でもある宮本優太とパートナーを組み、細かいコミュニケーションも欠かしていない。
「キャンプから始まって、だいぶ良くなっていますが、まだまだ完璧ではないので。改善できるところはあると思います」
守備でカギを握るのはラインコントロール。基本的に宮本が統率しているものの、相棒に合わせて、いかにタイミングよく押し上げられるか。コーチングは重要になる。根本は隣の先輩をお手本にしつつ、積極的に声を出すようになっている。
「後ろからコミュニケーションを取らないと、前の選手たちもプレスに行きづらくなりますから。いま行くべきなのか、行かないのか、はっきりしないといけません。前で奪えれば、確実にチャンスになるので。引き続き、やっていきたいですね」
FC東京戦では、開幕の千葉戦よりも改善されていた。前からのプレスが機能し、後半はとくに敵陣でのボール奪取の回数が増えた。攻守の切り替えが速いだけではない。マンツーマンとゾーンの使い分けがスムーズになったのは大きい。終盤の時間帯でもリスクを負って、人を捕まえに行く覚悟も見えた。2026年は『待つ』よりも『前へ』がキーワード。因縁深い日産スタジアムでも、しっかり体現するつもりだ。
「ファン・サポーターのみんなが客席から立ち上がるような、あのときとは真逆の試合をしたいですね。今週、同じ相手とできるのはおいしいかなって。でも、自分はあまり難しいことを考えずにやることをやるだけです」
プロ2年目を迎える23歳の口調は、極めて落ち着いていた。根本もレッズも4ヵ月前から変貌したことを証明し、横浜の嫌な記憶を上書きする。
(取材・文/杉園昌之)
「倍返ししますよ。あのような試合は、もう絶対にしてはいけない。無失点で抑えて、勝って帰ります」
力強い言葉には、特別な思いがこもる。ふと過去の記憶もよみがえる。開始早々、自陣のペナルティーエリア付近で長い芝に足をとられ、まさかのボールロスト。6分に自らのミスで先制点を献上するなど、前半だけで4失点を喫した。センターバックとして屈辱を味わったあの日、重たい空気が流れる取材ゾーンで自らに言い聞かせていた。
「こんなことで潰れていたら、これからやっていけないので。しっかり反省して、次に向かいます」
その言葉どおり、ルーキーイヤーの失敗は糧となった。今季は開幕戦からスタメンに定着。持ち前の勇気あるビルドアップで起点をつくり、攻撃を支えている。相手にプレッシャーをかけられても、慌てることはない。長短のパスを使い分けながら、冷静に中盤、前線にボールを預ける。それでも、まだ物足りなさを覚えている。
「最近は自分の武器をあまり出せていないので、そろそろ出したいですね」
最終ラインの中央左寄りから右サイドへ対角線上に届けるサイドチェンジだ。長年かけて、磨きをかけてきたストロングポイント。試合にあまり絡めなかったジェフユナイテッド市原・千葉のジュニアユース時代から左足のキックだけには自信を持っていたという。当時は左サイドバックを務めることが多く、唯一無二の長所として伸ばしてきた。こだわりも強いが、相手の研究も進んでいる。今季は根本が最終ラインでボールを持つと、相手のサイドバックがすっと下がり、スペースを消してくる。
「分析されているなと思いますけど、そんなものは関係ないので。どんどん出していきたいですね」
対戦相手に対策されてこそ本物。前節のFC東京戦では同じ左利きのセンターバック、稲村隼翔が警戒されているなかでも、次から次にミドルパスを通す姿を見て、刺激を受けた。
「自分と全く同じ特長を持った選手でしたから。自分も負けているとは思っていないですし、そういう気持ちがどんどん出てくるのが、いまは楽しいですね」
右サイドハーフの金子拓郎、二田理央らとも連係を深め、パスコース、タイミングなどを再確認している。付け入るスキは必ずあるはず。もちろん、ピッチを横切るパスだけに頼っているわけではない。本人が「刺しパス」と呼ぶ縦へのボールも鋭く、FWの足元にピタリとつける。横浜FM戦でポストワークを得意とするイサーク キーセ テリンが前線に入れば、くさびを打ち込むシーンも増えるかもしれない。さらに相手最終ラインの背後に絶妙に落とす球もお手の物。新加入の肥田野蓮治を走らせる形も頭に描いている。背番号5の左足から繰り出すパスから目が離せない。
ただ、センターバックにまず求められるのは堅固な守備。それは根本自身が一番よく理解している。得意の空中戦で負けるつもりはなく、相手FWを封じ込めることにも全力を注ぐという。新シーズンからは流通経済大学の先輩でもある宮本優太とパートナーを組み、細かいコミュニケーションも欠かしていない。
「キャンプから始まって、だいぶ良くなっていますが、まだまだ完璧ではないので。改善できるところはあると思います」
守備でカギを握るのはラインコントロール。基本的に宮本が統率しているものの、相棒に合わせて、いかにタイミングよく押し上げられるか。コーチングは重要になる。根本は隣の先輩をお手本にしつつ、積極的に声を出すようになっている。
「後ろからコミュニケーションを取らないと、前の選手たちもプレスに行きづらくなりますから。いま行くべきなのか、行かないのか、はっきりしないといけません。前で奪えれば、確実にチャンスになるので。引き続き、やっていきたいですね」
FC東京戦では、開幕の千葉戦よりも改善されていた。前からのプレスが機能し、後半はとくに敵陣でのボール奪取の回数が増えた。攻守の切り替えが速いだけではない。マンツーマンとゾーンの使い分けがスムーズになったのは大きい。終盤の時間帯でもリスクを負って、人を捕まえに行く覚悟も見えた。2026年は『待つ』よりも『前へ』がキーワード。因縁深い日産スタジアムでも、しっかり体現するつもりだ。
「ファン・サポーターのみんなが客席から立ち上がるような、あのときとは真逆の試合をしたいですね。今週、同じ相手とできるのはおいしいかなって。でも、自分はあまり難しいことを考えずにやることをやるだけです」
プロ2年目を迎える23歳の口調は、極めて落ち着いていた。根本もレッズも4ヵ月前から変貌したことを証明し、横浜の嫌な記憶を上書きする。
(取材・文/杉園昌之)
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