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PICK UP PLAYER|長沼洋一

浦和レッズにとって待望のリーグ初勝利をたぐり寄せるプレーは、長沼洋一から生まれた。

2-2で迎えた第4節 横浜F・マリノス戦の70分だった。左サイドから攻撃を組み立てようとしていた横浜FMが、浦和レッズのプレスを嫌って、サイドチェンジを試みる。
背番号88はそのタイミング、隙を見逃さなかった。

スマートに飛び出すと、相手のパスをインターセプトする。圧巻だったのはトラップするでも、後ろに下げるでもなく、ダイレクトで前にいるマテウス サヴィオに付けたことだった。
ピッチ中央でボールをコントロールしたマテウス サヴィオは、素早く前線にスルーパスを送ると、こぼれ球に反応した南野遥海がゴール左に流し込んだ。

プレーを振り返った長沼は、「来るかなと思いましたけど、ゴールにつながったので良かった」と淡々と語り、「たまたま、ああなっただけ」と謙遜するが、決して偶然ではない。
今シーズンのチームが意図する「前」を、彼自身が意識していたから生まれたプレーだった。

「それ以前も似たような状況は作れていたし、前からボールを奪ってチャンスも作れていた。(3点目につながった)あれはたまたまですけど、チームとして前から行く意識があったからこそだと思っています」

この試合では、開始5分に左サイドからドリブルで中に切れ込み、ミドルシュートを狙った。そのプレーもまた、チームに“前”や“攻める”姿勢を擦り込んだように、状況に応じて自身のプレーを変えられるところが魅力である。
右サイドバックのダニーロ ボザが攻撃的なポジショニングを取れば、逆サイドの自身がバランスを図る。一方で、マテウス サヴィオが中にポジションを取れば、するするとサイドを駆け上がって深い位置からチャンスを窺う。決して目立つことはないが、つくづく器用で、機転が利く。サイドバックながらチームの頭脳になっていると感嘆させられる。
その一方で、前への意識を持ちつつもDFとして失点が続いている現状に責任も感じている。

「失点すると、勝つ確率が下がってしまうので、点を取りたい思いはありつつも、やっぱり失点を減らしたいという気持ちもある。自分も含めて、チームとして前への意識が強いので、前へ出ていくと、どうしても背後を開けてしまうことにもつながる。すべての失点がそこからではないですけど、背後を突かれるところから始まっている失点もあるので、そこをどう改善し、チームとして成熟していくのかという思いは持っています」

表裏一体ともいえるその事象について、「そこに自分自身の伸びしろもある」と、自身に矢印を向ける。

「チームとして前向きな姿勢があるなかで、僕自身がそこにどうやって慣れて、対応して、解決していくのか。自分だけで、どうにかできる問題ではないところは周りとの関係性で対応していくなど、いろいろと考えていく必要がある。曺(貴裁監督)さんは『ハイブリッド』と表現してくれていますけど、うまく時間をつかいながら、出ていくときは出ていく、抑えるときは抑えていく。そのにおいを自分自身が嗅ぎ分けていく必要があると思っています」

決勝点につながったプレーよりも、13分にサイドチェンジから近藤友喜に背後を取られて、クロスバーに直撃するシュートを放たれたプレーを悔やむのも、そのためだろう。

「あの場面は周くん(西川周作)が触ってくれたので助かりましたけど、(植木)颯がボールを奪って、自分は『よし出ていける』と思って前に走ったタイミングだった。それによって、自分が戻るのに遅れが生じたので、まさにそこが僕のなかの課題というか。リスクを冒して前に出ていきつつも、危険な匂いは嗅ぎ分けないと」

29歳になった。プロのキャリアをスタートさせたサンフレッチェ広島、モンテディオ山形、FC岐阜、愛媛FC、サガン鳥栖と5つのチームを渡り歩いてきたが、気がつけば2024年夏に加入した浦和レッズが在籍期間でも最長になった。その浦和レッズに来てから本格的にチャレンジしているサイドバックも板についてきた。
失点というチームの課題に対しても、自らの「伸びしろ」と表現したところに、自身の課題に向き合う姿勢と、成長しようとする気概を感じた。
自身の特長について「何色にも染まることができる」と語るように、いかなるサッカーにも、いかなるポジションにも順応して道を切り拓いてきた。曺 貴裁監督が目指すサッカーにおいても、その答えであり、自身の最適解を見つけて「伸びしろ」を示してくれることだろう。機転の利いたそのプレーは、チームの窮地を救い、チームに勝利をもたらす。

(取材・文/原田大輔)

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