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PICK UP PLAYER | 松尾佑介

おそらく蹴る本人以外の全ての人が度肝を抜かれただろう。

5月16日に行われた明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第17節 FC東京戦は90分をスコアレスで終え、勝負はPK戦へもつれ込んだ。

さらに両チームの11人ずつが蹴り終えても決着はつかず、浦和レッズの1本目に蹴った松尾佑介に二度目の順番が回ってくる。

ゴール左に蹴った1本目を止められた。蹴る前に対峙するキム スンギュをじっと見ていた1本目と違い、視線を前に向けない。精神的に劣勢に立っているかと思われた。

しかし、松尾が蹴ったボールは、向かって右に勢いよく飛んだ韓国代表GKを嘲笑うように、ゆっくりとゴール中央に吸い込まれた。

GKは基本的にどちらかに飛ぶため、PKを中央に蹴るのは成功確率が高いと言われる。ただ、GKがボールを見てから反応する場合は確実に止められるため、真ん中に蹴るには度胸が必要だ。速度や勢いが緩いチップキックなら、なおさらである。

PKでのチップキックは『パネンカ』と言われるが、一度失敗してからそう時間も経っていない2本目で『パネンカ』をやるなど、誰が思うだろう。

試合後の取材エリアで驚きを持って質問したが、松尾は平然と言ってのけた。

「逆に2本目が蹴りやすかったですよ。誰がどう考えたってナーバスになっていると思うでしょうし、ああいうときは真ん中に蹴ったら入ると思っていました。1本目を外したからこそ、2本目にアレを蹴りました」

理路整然とした説明だ。とてもわかりやすい。しかし、わかっているけどできないから難しいのだ。

それでも普通は蹴らない、と食い下がっても、松尾は表情を全く崩さずに返す。

「みんなが蹴らないと思っているからこそ、蹴るべきだと思います」

アレを決めるのもこういう回答も、規格外。それがすなわち、松尾らしいとも感じられた。

FC東京戦で松尾らしさを発揮したのは、PKと試合後のコメントだけではない。

「今日はシャドーに小森(飛絢)がいたので、より僕がサイドで起点を作ってフィニッシャーとして彼がいることで、バランスは良かったと思います」

松尾自身がこう話すように、最前線のチャンスメーカーとしてプレーすると、スピードに乗ったドリブルや相手の背後に抜ける動き、圧力をかけながら相手の選択肢を減らしていくプレスなど、松尾らしいプレーを随所に見せた。

2ヵ月弱の離脱からの5試合目で一つひとつのプレーの質や回数は増えている。松尾の働きによって、チーム全体が前を向いてプレーする意識を強めたようにも見えた。

かつてのチームメートであるアレクサンダー ショルツも松尾との勝負を嫌がっているように見えた。

ショルツは試合後、小森について問われた中で「浦和のFW、小森選手と松尾選手は質が高い」とわざわざ松尾の名前を出した。それは松尾の実力を知っているのもさることながら、この試合での対応に苦慮した証だろう。

「だいぶよくなってます」

松尾自身、調子の向上を自覚している。だからこそ「1点は欲しかった」し、PKも2本目を称賛されようとも、「1番手だからこそ、1本目を外すべきではなかった」と悔やむ。

だが、FC東京戦を経て、さらに状態を上げられるとも感じている。

「上位の相手と戦う緊迫感があるゲームではまた違うものが得られますし、僕もこういうゲームをこなしていけば試合勘を元に戻せると思います。PK戦で負けましたけど、僕にとっては非常にいいゲームだったと思います」

次節は5月22日金曜日に行われる明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド最終節。相手はFC町田ゼルビア、舞台は国立競技場、MUFGスタジアムだ。この相手と舞台で思い出されるのは昨シーズン、2025年4月13日の一戦である。

2-0で勝利した試合に松尾は先発出場し、90分に交代するまで攻守にわたって質の高いプレーを披露。1-0で迎えた38分にはロングカウンターから中央を切り裂く圧巻のゴールを決めた。

「懐かしいですね」

約1年前を思い出してニヤリと笑った松尾は、町田戦に向けた意気込みをこう語る。

「いいイメージでシーズンを終えるために、勝てるゲームは全部勝っていきたいです」

果たして町田戦でどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。松尾佑介は、大舞台に強い。

(取材・文/菊地正典)

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