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PICK UP PLAYER | 金子拓郎

4月5日の川崎フロンターレ戦後の取材エリアで、金子拓郎は最初ににじませた悔しそうな表情をほとんど変えることなく話し続けた。

二度のリードを奪いながら逆転負け。言うまでもなく、笑顔はない。
「チームが勝てていないので、うれしさは全くありません。悔しさしかないです」
今季初ゴールを決めたことについても、金子は少しも表情を緩めずにそう答えた。

ただ、ゴール直後の金子の振る舞いは印象的だった。ネットを揺らすと、一目散にファン・サポーターが集うゴール裏へ駆け寄っていった。
VARの確認によってオフサイドと判定されてノーゴールとなったものの、後半開始2分足らずでゴールネットを揺らしたときもそうだった。
「たくさんのファン・サポーターの方々がこの1試合のために足を運んでくださっている中で、自分も勝ちたいですし、みなさんも勝ちたいと思って応援してくれています」両手を広げながらゴール裏に向かうと、オナイウ阿道、植木 颯、そしてファン・サポーターとともに喜びを分かち合う。金子の気持ちが表れた行動だった。

アウェイゴール裏の熱気は最高潮。その瞬間、スタジアムに響き渡っていたのは、金子のチャントだった。

「あのときは絶対に勝つ。それ以外に複雑なことは思えませんでしたが、もちろんうれしかったです」
チャントを聞いた感想をそう話した金子に聞く。あのチャントが初めて歌われた日のことを覚えているか?

「もちろん覚えていますよ」

金子はこの日の取材エリアで初めて、少しだけ表情を緩めた。ただ、その緩みは、安堵やうれしさを表すというよりは、どこか複雑な表情だった。

埼玉県で生まれ育ち、小学生のころには浦和レッズハートフルスクールに通った。浦和レッズのエンブレムが入ったウェアに袖を通したときの喜びは忘れられない。埼玉スタジアムで闘う浦和レッズの選手たちを見て、憧れた。これまでプレーしてきたクラブとは違い、チャントは誰でも歌ってもらえるものではないことは理解している。

だから初めてチャントを聞いた昨年10月18日、アウェイの横浜F・マリノス戦は、特別な日になるはずだった。しかし、金子は過ちを犯してしまい、退場処分と、のちの出場停止処分を受けることになり、全く違う意味で記憶に残る試合にしてしまった。

試合後、Jリーグ規律委員会の裁定によって4試合の出場停止などの処分を受ける。試合に出られず、反省の日々を過ごした。

心を入れ替えて臨む今季は副キャプテンに就任した。明治安田J1百年構想リーグ開幕から連戦も含めてこれまで全試合に先発出場し、ドリブル総数でリーグ2位を記録するなど、果敢な仕掛けから高いパフォーマンスを見せている。

そして、9試合目にして今季初ゴールを決めた。

加入後初出場となった植木のクロスにオナイウが飛び込んでこぼれたボールを左足で押し込んだ。カウンターになると、基本ポジションである右サイドに広がるのではなく、植木のパスを呼び込むようにゴール前に向かっていた。

「あの場所にいることが大事だと思っています。ゴール前に入っていこうという気持ちがあのゴールにつながったと思います」

後半開始2分もそうだった。左サイドからのクロスに対して斜めの動きでゴール前に入っていった。

VARの判定でオフサイドとなった先のプレーはビルドアップから、ゴールを決めたのはカウンターと形は異なるが、マチェイ スコルジャ監督がウイングに求め、自身も意識するプレーを体現したからこそ、こぼれ球を押し込む形でゴールネットを揺らした。

金子がベンチに下がったあとにチームが失点を許してしまい、結果として敗れたが、金子は自身に矢印を向ける。

「チームとして何度も終盤の失点や逆転負けを繰り返しています。一人ひとりがもっとやらないといけないし、もっとチームを変えていかないといけない。ただ、自分がピッチにいる間に同点にされてしまいましたし、3点目を取って相手の息の根を止めなければいけなかった」

そして、これまでも抱いていた思いをさらに強くする。

「俺が浦和レッズを勝たせる選手になる」

ゴールを決めたあとだけでなく、勝利をつかんでチャントを聞きたい。勝利だけを望み、勝利に貢献することだけを考えてプレーする。12日、埼玉スタジアムで行われる東京ヴェルディ戦もその強い思いで金子はピッチに立つ。

(取材・文/菊地正典)

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