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PICK UP PLAYER | 安部裕葵
忘れかけていたさまざまな感覚が、足を、身体を、そして魂を通してよみがえってくる。
明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第14節のジェフユナイテッド市原・千葉戦で、浦和レッズに加入してから初めて先発としてピッチに立った。トップ下の位置で57分までプレーすると、2-0の勝利に貢献した。
開口一番に「点を決めたかったですね」と語った安部裕葵は、「ここ数年間、練習をずっとやってきた中で、試合はやっぱり違うな、と。それをすごく感じました」と、噛み締めた。
「練習中はリスクを負ったプレーはあまりしないので、(試合では)成功確率が50パーセントでも突っかけていくみたいな、そういうタイミングは理解し始めないといけないな、と。もともと、(自分は)それを知っているので、やっていればすぐにわかるんですけどね。成功確率が低くても、どこかで突っかけにいくとか、パスを狙うとか、そういう(相手にとっての)事故を狙わないといけない」
千葉戦ではトップ下を主戦場に、相手の状況を見て判断すると、金子拓郎と石原広教が担う右サイドに流れて何度もボールに絡み、攻撃のテンポを作り出した。
47分には肥田野蓮治のポストプレーから左サイドを駆け上がり、華麗に相手DFを抜き去ると、相手陣内深くまで持ち運んだ。特長であるテクニックを生かしたそのプレーに、目を奪われた人は多かったはずだ。
しかし、本人は首を横に振る。
「あれは相手が後ろから来ていることもわかっていたので、やらざるを得ないプレーだったというか。本来はシンプルなプレーで、チームを前進させたかったんですよね」
試合中も、ロッカールームに戻ってからも、ハードワークを続けた足をアイシングしながら、スマートフォンで試合を眺めて自問自答を繰り返した。
「自由度は増えているので、もっと自分の色も出せたらなと。ウインガーではなく、中央でのプレーだったので、もっと拓さん(金子拓郎)や蓮治とかと、コミュニケーションを取りながらやれたら良かったなと思っていました」
安部は「練習はチームメートを喜ばせるプレー」を、「試合は相手を困らせるプレー」をと、プレー選択について明確に言語化する。先発で試合に出たからこそ感じた違いであり、思い出した感覚だった。
もう一つ、先発でピッチに立ったことで強く実感したのがチームの勝利だった。
昨季第34節の横浜F・マリノス戦で約4年5ヵ月ぶりに公式戦の舞台に戻ってくると、第38節の川崎フロンターレ戦(4-0)でも74分に途中出場して、埼玉スタジアムでの初勝利は経験していた。
ただ、練習と試合は違うように、途中出場と先発出場では勝利の喜びも、選手としての実感も違ってくる。
「僕は正直、内容が悪くても試合に勝てればいいと思っているタイプ。いろいろな価値観があるとは思いますけど、僕は試合に勝ちたい。いろいろな思いを持って、試合を見に来てくれる人がいるので、なおさら勝ちたい。そのうえで、次につながる試合内容だと発見も多い。もっと、こうしたほうがいいなとか。勝ったとしても負けたとしても、積み上げていくものなので、やっぱり、そうした有意義な時間にしたい」
それだけ彼にとって、千葉戦は今までとは異なる有意義な57分だったのだろう。久々に味わう発見の連続が全身を包み込む。
「日本に帰ってきて浦和レッズに加入してからは、今まで自分の色みたいなものは正直、考えたことがなかった。そうした色みたいなものを消しながらプレーする時間が続いていたので。遠い昔の記憶ですけど、当時、自分がプレーしていたスタイルや感覚を思い出しながらやっていければと思っています」
さらにもう一つ呼び起こした感覚がある。欲——自分自身への期待といえばいいだろうか。勝利の意味について語ってくれた過程だった。
「上位争いや優勝争いをするようなチームをはじめ、強いと言われるチームには、そのシーズンに2人か3人はめちゃくちゃ伸びたなと言われる選手が現れる。それは若手、中堅、ベテランに関係なく。そうした選手がなかなか最近の浦和レッズにはいなかった。それは決して選手が悪いとか、チームが悪いとかではなく、みんなでそういう環境を作っていけるかどうかだと思います。自分もプロになったばかりのとき、最初の3ヵ月くらいで一気に伸びた感覚があって、その後もずっと伸び続けている感じがありました。できなかったプレーができるようになっていったり、知らないプレーを先輩たちから学んで成長したりできた。そういう環境や気づきを与えたい」
成長の加速を実感した当時は、高校を卒業したばかりのルーキーだった。だが、自らその対象に「中堅、ベテラン」を加えたように、そこには今の自分も含まれている。
「だから、僕も試合に出続けたら、グンって伸びると思いますよ。今回、先発で試合に出て、『こうすればよかったな』『こうするべきだったな』ってめちゃめちゃ思うところがあった。それはロッカールームに戻ってからだけでなく、試合中にも何度も思っていた。それが瞬時にできなかったところはかなり反省しましたね。ホントに何回もありましたから……。それだけ今までは練習しかしていなかったということなんですよね。だから試合に出続けたらすぐにその感覚も戻ってくると思いますし、伸びると思っています」
思考は練習脳から試合脳へ変わった。喜びの単位も個人からチームになった。そのうえで、自分の成長に目を向けている。
千葉戦後の記者会見で、安部について問われた田中達也監督は、「裕葵はアイデアのある選手だと思っているので、そういうプレーヤーを11人の中に1人、常に置いておきたい」と、コメントを寄せた。
続く柏レイソル戦では、中島翔哉がトップ下に入り、58分に渡邊凌磨のゴールをアシストした。背番号10の次は、背番号7の番だ。自分の色を取り戻し、その色を濃くすることで、浦和レッズを勝利に導いていく。
(取材・文/原田大輔)
明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第14節のジェフユナイテッド市原・千葉戦で、浦和レッズに加入してから初めて先発としてピッチに立った。トップ下の位置で57分までプレーすると、2-0の勝利に貢献した。
開口一番に「点を決めたかったですね」と語った安部裕葵は、「ここ数年間、練習をずっとやってきた中で、試合はやっぱり違うな、と。それをすごく感じました」と、噛み締めた。
「練習中はリスクを負ったプレーはあまりしないので、(試合では)成功確率が50パーセントでも突っかけていくみたいな、そういうタイミングは理解し始めないといけないな、と。もともと、(自分は)それを知っているので、やっていればすぐにわかるんですけどね。成功確率が低くても、どこかで突っかけにいくとか、パスを狙うとか、そういう(相手にとっての)事故を狙わないといけない」
千葉戦ではトップ下を主戦場に、相手の状況を見て判断すると、金子拓郎と石原広教が担う右サイドに流れて何度もボールに絡み、攻撃のテンポを作り出した。
47分には肥田野蓮治のポストプレーから左サイドを駆け上がり、華麗に相手DFを抜き去ると、相手陣内深くまで持ち運んだ。特長であるテクニックを生かしたそのプレーに、目を奪われた人は多かったはずだ。
しかし、本人は首を横に振る。
「あれは相手が後ろから来ていることもわかっていたので、やらざるを得ないプレーだったというか。本来はシンプルなプレーで、チームを前進させたかったんですよね」
試合中も、ロッカールームに戻ってからも、ハードワークを続けた足をアイシングしながら、スマートフォンで試合を眺めて自問自答を繰り返した。
「自由度は増えているので、もっと自分の色も出せたらなと。ウインガーではなく、中央でのプレーだったので、もっと拓さん(金子拓郎)や蓮治とかと、コミュニケーションを取りながらやれたら良かったなと思っていました」
安部は「練習はチームメートを喜ばせるプレー」を、「試合は相手を困らせるプレー」をと、プレー選択について明確に言語化する。先発で試合に出たからこそ感じた違いであり、思い出した感覚だった。
もう一つ、先発でピッチに立ったことで強く実感したのがチームの勝利だった。
昨季第34節の横浜F・マリノス戦で約4年5ヵ月ぶりに公式戦の舞台に戻ってくると、第38節の川崎フロンターレ戦(4-0)でも74分に途中出場して、埼玉スタジアムでの初勝利は経験していた。
ただ、練習と試合は違うように、途中出場と先発出場では勝利の喜びも、選手としての実感も違ってくる。
「僕は正直、内容が悪くても試合に勝てればいいと思っているタイプ。いろいろな価値観があるとは思いますけど、僕は試合に勝ちたい。いろいろな思いを持って、試合を見に来てくれる人がいるので、なおさら勝ちたい。そのうえで、次につながる試合内容だと発見も多い。もっと、こうしたほうがいいなとか。勝ったとしても負けたとしても、積み上げていくものなので、やっぱり、そうした有意義な時間にしたい」
それだけ彼にとって、千葉戦は今までとは異なる有意義な57分だったのだろう。久々に味わう発見の連続が全身を包み込む。
「日本に帰ってきて浦和レッズに加入してからは、今まで自分の色みたいなものは正直、考えたことがなかった。そうした色みたいなものを消しながらプレーする時間が続いていたので。遠い昔の記憶ですけど、当時、自分がプレーしていたスタイルや感覚を思い出しながらやっていければと思っています」
さらにもう一つ呼び起こした感覚がある。欲——自分自身への期待といえばいいだろうか。勝利の意味について語ってくれた過程だった。
「上位争いや優勝争いをするようなチームをはじめ、強いと言われるチームには、そのシーズンに2人か3人はめちゃくちゃ伸びたなと言われる選手が現れる。それは若手、中堅、ベテランに関係なく。そうした選手がなかなか最近の浦和レッズにはいなかった。それは決して選手が悪いとか、チームが悪いとかではなく、みんなでそういう環境を作っていけるかどうかだと思います。自分もプロになったばかりのとき、最初の3ヵ月くらいで一気に伸びた感覚があって、その後もずっと伸び続けている感じがありました。できなかったプレーができるようになっていったり、知らないプレーを先輩たちから学んで成長したりできた。そういう環境や気づきを与えたい」
成長の加速を実感した当時は、高校を卒業したばかりのルーキーだった。だが、自らその対象に「中堅、ベテラン」を加えたように、そこには今の自分も含まれている。
「だから、僕も試合に出続けたら、グンって伸びると思いますよ。今回、先発で試合に出て、『こうすればよかったな』『こうするべきだったな』ってめちゃめちゃ思うところがあった。それはロッカールームに戻ってからだけでなく、試合中にも何度も思っていた。それが瞬時にできなかったところはかなり反省しましたね。ホントに何回もありましたから……。それだけ今までは練習しかしていなかったということなんですよね。だから試合に出続けたらすぐにその感覚も戻ってくると思いますし、伸びると思っています」
思考は練習脳から試合脳へ変わった。喜びの単位も個人からチームになった。そのうえで、自分の成長に目を向けている。
千葉戦後の記者会見で、安部について問われた田中達也監督は、「裕葵はアイデアのある選手だと思っているので、そういうプレーヤーを11人の中に1人、常に置いておきたい」と、コメントを寄せた。
続く柏レイソル戦では、中島翔哉がトップ下に入り、58分に渡邊凌磨のゴールをアシストした。背番号10の次は、背番号7の番だ。自分の色を取り戻し、その色を濃くすることで、浦和レッズを勝利に導いていく。
(取材・文/原田大輔)
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