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7/15準々決勝第1戦前日 フィンケ監督
フォルカー・フィンケ監督 ヤマザキナビスコカップ準々決勝第1戦 清水エスパルス戦 前日のコメント
「台所事情が厳しいということもありますので、8日間で3試合を行なうのは非常に難しいことだと思っています。しかしそれでも私たちはできる限りポジティブな形で、しっかりとした準備をしてこの試合に臨みたいと思います。私たちのチームに所属しているたくさんの選手にしてみれば、8日間で3試合を行なうのが厳しいというのは事実だと思います。現時点では明日のスタメンがどうなるかということは、一切決まっているわけではありません。
なぜかというと多くの選手のところにまだ『?マーク』があるからです。それでも、明日、私たちを応援してくださるファン・サポーターの皆さんに私から一つ伝えたいことがあります。それは、明日のスタメンがどのようになろうとも、ピッチに立つ選手が必ずすべてを出し切って、しっかりとしたいい結果を残すために努力をするということです。これは私の方から皆さんに対してもお約束できることです。
もちろん、第2戦もありますし、それも考えると明日、勝利を収めれば必ず準決勝に行けるというわけではありませんがホームの試合ですし、できる限りいい結果を残してセカンドレグに臨みたいと思います。しかし、ケガ人を出すような無茶なプレーは避けたいと思います。土曜日にもまた試合がありますし、どうしても監督の立場として土曜日の試合も少しは頭に入れておかなければいけないと思います。
そして、この国の夏の気候のことも考えなければいけないと思います。暑さが非常に厳しくなってきました。このような暑さが試合に影響を及ぼすことはあると思います。しかし、大切なのは90分間を通してしっかりと戦い、走ることができること。そして攻守の切り替えをしっかりこなすことができる選手だと思います。
そういう意味では私たちのチームに所属していて、非常に走ることと回復力の優れている坪井慶介や山田直輝が離脱しているのは大きな痛手だと思っています。このような夏の厳しい気候だからこそ、90分間を通してしっかり走って、攻守の切り替えのときにもしっかり走りなるべく早く切り替えができる、このような選手は非常に貴重な存在になるからです。
ナビスコカップは、Jリーグの中断期間で代表選手がおらず、通常とは別のメンバーで試合に臨んでいたわけですが3試合連続、私たちのスタジアムでいいプレーを見せることができたのではないかと思っています。私としては明日の試合でもできる限りいい試合を見せることができるよう努力をしたいと思います。
ただ、チーム全体を見渡した中でケガをしている選手などがいますので、ベストメンバーで臨む、ということは非常に難しいと思います。映像で清水エスパルスの試合を見ました。アウェイでのガンバ大阪戦です。彼らは非常に優れたプレーを見せていたと思いますし、強いチームだと思いました。特に2人のFWは機能していたと思いますし、岡崎とヨンセンというこの2人は現時点のJの中ではもっとも強力なツートップの一つではないかと思っています。だからこそ私たちもしっかりと準備をしなくてはいけません。彼らが強力な攻撃陣を持っているということはすでに証明されているからです。
今回の対戦相手は非常に勢いづいているチームだと思っています。私としてみればこのように力があって勢いのあるチームと対戦することについては喜びを感じます。なぜかというと非常に魅力的な試合になる可能性が高いからです」
(練習中に鈴木啓太がピッチから退いたが?)
「ゲーム形式の練習のときに空中戦があって、彼が着地したときに相手の選手と当たって、腰のところを打撲しました。明日、試合に出られるかどうかは分からない状況です。とても早く回復すれば明日の試合に出場ということも考えられますが、もし、明日痛みが残るようであれば残念ながら明日ではなく土曜日の試合に出場することになります」
(新しく練習に加わった選手については?)
「非常に若い選手なんですが、14日間にわたってここでの練習参加をする機会を彼に与えました。私はあの選手を見てみたいと思いました。ただ、あまり多くのことは語ることはできません。唯一ここでお話しできるのは、彼がアフリカ出身であるということ、そして彼が18歳であるということです。そして生まれ育った国はタンココーチと同じ国です。それ以上のことについてはここでお話しするつもりはありません。
なぜかというと彼の練習参加がどのような形になるかまだ私たちは分かりませんし、これが最終的にポジティブな形で結果を生むかそうでないかも分かりません。そういう状態でいろいろな報道がされてしまうと、ポジティブな形で物事が終わる可能性がどんどん低くなってしまいます。
ですから、これはサッカー業界の常識で皆さんにも理解をしていただきたいのですが、現時点では彼はまだ練習参加のみという状況ですから、詳細についてお話をすることは私の方からはありません。このことについてはご理解いただきたいと思います。
そしてもう一つ、細かいことですが、さまざまなネットワークを通してこの選手がどのような人間でどのような選手なのか、どんな経歴があるのかを調べて、もしそのことについて大きく報道されるようなことがあると、彼の母国でも大きく報道されることになってしまいます。私は長年にわたってアフリカの選手と仕事をしてきて、たくさんの経験を持っているわけですが、やはり練習参加している選手について大きく報道されると、アフリカの方で、裏でいろんな動きが出て、それによってその選手を獲得することができなくなる、そういうことがよくあります。ですからアフリカの状況、サッカー界の常識を考えて、皆さんが現時点ではこの選手についてあまり大きく報道しないでください。
それが私の方から皆さんにお伝えしたかったことです。皆さんがジャーナリストとして仕事をしなければいけないのはよく分かります。もし皆さんが少しでも浦和レッズのことを思っているのであれば、このことについて、例えば選手の名前を探ったり、選手としての今までの経歴の詳細について書いたりすることはしないでください。私の今までのこの業界での経験からお話ししますと、特にアフリカの選手の場合、母国で大きな報道がされてしまうと、それまで関わっていなかったいろいろな人間が、このビジネスに関与してこようとします。
そうして、この選手がいかに有能だったとしても、前もって報道されてしまったことによって、獲得することができなくなったことが今までにたくさんありました。
正式に獲得するかしないかが決まるまでは私の方から皆さんに詳細を伝えることはありませんので、あまり大きな報道も控えていただければと思います。
なぜかというと、一昔前のようにとても高くて有名な選手を買うような予算はこのクラブにはないのです。これが現状です。これはあくまで私の方からのお願いですし、皆さんに対してはっきり伝えたいことでした。世界中のサッカーを見渡しても、名門と言われるクラブ、例えばマンチェスターU、チェルシー、アーセナル、リバプール、バルセロナ、このような大きなクラブというのはアフリカ大陸を駆け回っています。そしていろんなところからいろんな情報を得て、アフリカの才能ある将来性にあふれた選手を発掘しようとしているわけです。
ですから少しでも報道がされてしまうと、すぐにそういう大きなクラブが来て、その選手を獲得しようとしてしまう。アフリカで本当の意味で有望な優れた選手を獲得するためにはしっかりとした個人的なネットワーク、公にされている情報ではなく業界の中で話されていること、そういうことがとても大切になってきます。あまり大きな報道がここでされてしまうと母国の方で必ず報道されてしまいます。
そうなると一切物事が進まなくなってしまいますし、世界的に有名な名門のクラブも来てしまいます。そうならないように、あまり大きく報道しないでください。
これが私の方からの一つのお願いです。私としてみれば、このお願いが守られるためにできることは一つしかないと思います。皆さんの中で誰かがこの選手の名前や経歴などを調べてきて公表した場合は、1年間、その記者の方とは話しません(笑)。もちろんこれが半分ジョークであることはお分かりかと思います、それ以上、私にはやることはありませんから(笑)。もし自分がジャーナリストなら、『こんな監督とは話さなくても勝手に書けばいいだろう』と思うかもしれません(笑)」
(8月にU-20日本代表の大会が韓国であるが、招集される選手もいると思うが?)
「もっとも大切なのは日本サッカー協会が何を求めているかだと思います。協会がどうしても韓国での大会でタイトルを取りたい、それがもっとも大切なことなのか。それとも選手の将来のことを考えて若い選手たちができる限り優れたプレーをJリーグで見せるために育成の助けをしたい、その一環として各カテゴリーの代表チームがあるのか。協会がそこについてどう思っているかで、このことについても決まるのではないかと思います。ただ、私は今後も直接このことについても各カテゴリーの監督とコミュニケーションをとっていきたいと思います。
今、私がお話しすることをカギ括弧つきで大きく報道することはないでしょうが、実際に私たちのメンバーを見てみてください。A代表の方にもたくさんの選手を送り出しています。こちらに3人~4人、そしてU-20に3人、U-18に1人となると合計8人の選手を出していることになります。これだけたくさん、試合に出ている選手を協会の方に出してしまうと、私たちの方もとても苦労するということは理解できると思います。
しかも、日程的にその3つの活動が重なっているところも何度かあるわけです。私としては協会が何を求めているかを理解してさまざまな判断をしていきたいと思います。ただ、このようなことについてはここであまり多くコメントしたくはありません。できる限り顔を見て、直接話し合いができるようにすることが大切だと思いますし、もちろんフレンドリーな形で話し合いをしますが、それでも協会の各カテゴリーの監督と直接話し合いをすることによって、お互いの状況を理解して選手のためになるような決断をしたいと思います」
(サンフレッチェ広島戦の前に日本代表の岡田武史監督と話をしていたが?)
「詳細についてはここでお話しすることはできません。ただ、基本的なこととしてクラブの監督と代表の監督が現時点の代表選手について話し合うことは当たり前のことだと思います。この間も、岡田監督が浦和レッズで仕事をしている代表選手をどう見ているのか、彼らの状況をどう判断しているのか。同じように私はクラブの監督としてクラブで仕事をしている代表選手をどう思っているのかということを代表監督に伝えています。お互いの情報交換というのは大切だと思いますし、このような形で直接話をすることによって、とても貴重な、両サイドにとってためになる情報を得ることができると思います。ですから今後も情報交換をしていきたいですし、現時点での代表選手、将来代表に入るかもしれない選手、そのようなことについてお互いに把握していくことはとても大切だと思います。
特に代表監督に関しては彼が英語を話すことができるというのはとても大きなことだと思います。なぜかというと、英語で話すことができるのでちょっとしたことがあればすぐに電話もできますし、大きなミーティングを企画したり、誰かが通訳をしなければいけない状況ではないので彼との話し合いに関しては、彼が英語ができるということは大きなメリットだと思います」
(練習生が参加することになった経緯は?)
「タンココーチも含めて私は長年アフリカで築き上げてきたアフリカでのネットワークというものがあると思います。そしてここ3回のアフリカネーションズカップはすべて現地で観戦しました。一つの小さなクラブで仕事をしていて、何億、何十億と移籍金を払うことができないクラブの場合は、できる限り他のクラブが行っていないような国に行って、そこで選手を発掘してくることが大切になります。ですから私は約15年間にかけて、チュニジア、ガーナ、マリ、ブルキナファソなどさまざまな国で選手を発掘してきました。
現地ではさまざまな関係者と知り合いになることはとても大切です。そして現地の関係者といつでも直接連絡を取れるようにすること、その際には英語やフランス語などさまざまな言葉を話すことができるのが大切なことです。
現地の関係者と親しくなってさまざまな情報を得るようになって、比較的安い金額で現地の選手を獲得する。そしてその選手が獲得後に実力を伸ばしていけば、場合によっては次に大きなクラブに売ることができるかもしれません。その選手を売ったことによって、とても大きなお金をクラブのために手に入れることができるかもしれません。
このようなやり方を築き上げる必要が私にはあったわけです。選手獲得のときには2つの道があると思います。一つは、世界的に見ても、どの国においてももっとも大きな、資金力があるクラブが行なっていることですが、各国を見て、どの選手がもっとも優れているのか、そしてもっとも優れた選手にもっとも多くの、何億、何十億というお金を払って選手を買ってくる、それが一つのやり方です。もう一つは比較的安い金額で、各選手の母国の国内リーグ、しかも大きなクラブではなく小さなクラブでプレーしている選手、その選手を獲得することです。ただ、そのためには現地の関係者と知り合いでなくてはいけませんし、さまざまな情報やヒントをもらうなどして初めてこの選手を獲得することができるわけです。
もちろんこのようにアフリカから来る非常に若い選手というのは、いろんな意味でまだまだ教育をしなければいけないところがあると思います。しかもアフリカでの生活というのは皆さんご存じだと思いますし、この国とはまったく違うものです。
ある意味、特別なところです。彼らが母国を離れて世界的に見ても進んでいる国、例えばこの日本に来るときには、それなりに生活などに関しても慣れなければいけないところも多いわけです。このような移籍をするにはたくさんの仕事をしなければいけません。ただ、このような仕事は非常に大きな喜びを与えてくれるものだと思っています。なぜかというと、一人の選手、一人の若い人間の教育に携わることができるからです。
そして場合によってはこの選手がとても大きなキャリアを積むことにもなりますし、そのスタートのときに私が助けになる、これも大きな喜びの一つだと思います。そして私をこのクラブに招いた方が最初にはっきり言っていたのは、このクラブは若い選手をもっと育成していきたい、今までのやり方を変えてもっと選手を積極的に育成していきたいということを直接、クラブの方からうかがいました。ですから私はこのクラブに最終的に来ることにしました。
社長は今、変わったわけですが、新しくクラブの社長に就任した橋本代表も私に対して、新しく進み始めた道を今後も進むべきだということを伝えてくれました」
(今後も継続的に練習生は参加していくのか?)
「若い選手であればアルゼンチンとかブラジルなど、それ以外の国からも来ることもあるでしょう。今後も若い選手がここに来て練習参加することは十分にあると思います。今からいつどこで誰がということはお約束することはできませんが、今後も他の国から若い選手が来ることもあると思います。一つ、忘れてはならないのは、私がフライブルグで約16年間、仕事をしていたこと、そしてとてもたくさんの若手選手をそこで育てていたこと。代理人なども『この監督は若手の選手と仕事ができる、外国から来たにもかかわらず若い選手が比較的短い期間で実力を発揮できるようになる、すごく早く成長する』ということを何度も証明されたので、私が自ら積極的に行かなくてもいろんなところから『若い選手を見てくれないか』『若い選手のヨーロッパでの最初の2年間をぜひ任せたい』という話があったわけです。
ですから一つの国に今から決めてしまうのではなくまったく違う国から若手の選手の話が来て、練習に参加して、場合によっては育っていくのを私のところで見ていこうということになるかもしれません。ただ、私にしてみればもっとも大切なのは今、このクラブに所属している選手です。この選手たちとしっかりとした仕事をしていきたいです。私は積極的に若手選手をあちこちで探しているわけではありません。しかし、私たちのチームをご覧になってみてください。
私たちのクラブには22歳から27歳の間の選手がほぼいません。28歳から33歳の選手はたくさんいます。27歳から22歳の選手はあいている。そして22歳から18歳の選手はまたたくさんいます。ということは22歳から27歳の選手がほぼいない、これはこのクラブで長い間、若手選手の獲得、もしくは若手選手が主力として活躍できるような形での育て方をしていなかった証拠ではないでしょうか。
ここに一つ、22歳から27歳の間があいてしまっている状態ですので、私としてはクラブの将来のことも考えて、若手選手のことも考えていきたいと思います。
先ほどの質問に対する追加のお答えですが、たくさんの若手選手がここに来ることはないと思います。この国のルールでは外国籍選手(A契約選手)は3人しか認められていないわけですし、アジア枠1名(AFC国籍を有する選手)があって、そして20歳未満で外国籍も大丈夫である育成枠(アマチュアか20歳未満のプロC契約選手)が最大で2人までしかないわけですから、たくさんの選手がここに来て育成されていくということはないと思います。この国はほかの国とはまったく状況が違うわけですから。
イングランドのアーセン・ベンゲル率いるアーセナルの場合は、よくあることですが、公式戦でも地元の国の選手は一人もおらず、外国人11人で戦っていることがあります。彼のようなやり方だと、毎年18歳以下のアフリカの若い選手を10人ほど連れてきて、そのうちもし2人が成功すれば大成功という形で語られるようになるわけです。アーセナルのことについてもそうですが、数年間にさまざまな選手を獲得して、その中で1回、アデバヨールという選手がいれば、これだけで大きなメリットではないでしょうか。なぜならあの選手はしっかりとしたプレーをしてとても市場価値を高めた、あのような選手を獲得することができればクラブにとっても大きな利益をもたらしてくれる、素晴らしいことなんですけど、それ以外にもたくさんの選手が獲得されていて、その中の一人であったということは忘れてはならない事実だと思います。しかしこの国ではそのような形、例えばほかの国から10人の外国人選手を連れて来て育成するようなことはできないようになっていますので、安心なさってください。私たちは日本人の選手をベースにしてしっかり戦っていきますので。現実的に、この国の規定を見ると外国籍選手枠、アジア枠、育成枠が存在しているわけですが、私たちの場合は、もし来ている選手を獲得したとすると残りの外国籍選手の枠が限られてしまいます。どんなに多くともあと3人増えるだけで、これ以上ということはありえないわけです。
アジア枠に関しては韓国の選手を獲得することが多いわけですが、私は現状に対して何か大きく語ろうとしているわけではありません。そうした現状の中で仕事をしていくわけですし、今後も日本人が土台となっていくと思います。あくまで私の一つの考えですが、日本はもっと外国に対してさらに窓をあけるべきだと思います。なぜかというと国際的な交流というのはさまざまな刺激を与えてくれます。それによって国のサッカーのレベルを全体的に上げることができるのではないかと思います。外国からさまざまな選手が入ってきて、刺激を受けることによってこの国の選手も自分たちのスキルを上げていくことができると思いますし、お互いに学べることがたくさんあると思います。長期的なレベルアップを考えれば、国際的な交流を活発にするということはとても大切だと思います」
(今回練習に参加するのは以前、クラブハウスの訪れた人とは別?)
「2週間ほど前に来ていた選手とは違う選手です。今だからお話しできますが、あのときに来ていたのは選手でした。若いときには大きなクラブに移籍をしてたくさんのお金を稼いでいて、それほど国際的には有名ではなかったのですが、とても才能のある選手でした。そして日本のU-20のチームと対戦したこともあります。獲得できるかどうかを検討したんですが、最終的にはポジティブな結果には至りませんでした。日本という国で仕事をしているときにはさまざまな、今までと違う条件というのもありますし現状を考えると外国の選手を連れてくるのはそう簡単なことではないと思います」
(練習生のストロングポイントは?)
「それはこれから発見したいと思います(笑)。基本的なことですが、西アフリカで生まれた選手、そして彼らが母国でサッカー選手になることができたのであれば、ヨーロッパ人よりも、日本人よりも優れた瞬発力を持っているのは間違いないと思います。これは生まれつきのものです。これは西アフリカの選手が持っている一つの特長です。これは彼の一つの強みではないでしょうか」
(若手選手を選ぶ基準は?)
「大切なポイントというのは私たちが逐一、教えなくても選手がピッチ上で起きていることをしっかり理解して、正しい判断と動きを見せることです。毎回毎回、説明するのではなくてすぐに状況を把握することができる。そして正しい決断を下すことができる。それが大切な要素だと思います。
サッカーにおいてはすべてを教えることはできません。選手からしてみても、サッカーで起きているすべてのことを学ぶことはできません。もちろん、学ぶことができる部分もありますが、残りの部分は才能なわけです。
このような才能を持っている選手を見つけるのが私たちの仕事だと思いますし、見つけた後で彼らにさまざまな刺激を与えることによってこの才能が伸びていくことを助ける、これが私たちの仕事です。
ただ、すべてを教え込む、その選手がすべてを学ぶということはサッカーの世界ではないことです。どんなに才能があったとしてもまったく努力をしない、まったく規律のない選手であれば成功はしないでしょう。しかし、どんなに努力をしても、どんなに素晴らしい規律を持っていても、まったく才能がなければサッカー選手として成功することは一切ありません。これがサッカーの厳しい現実です。サッカー選手は一つの工場で生産することができないものです」
「台所事情が厳しいということもありますので、8日間で3試合を行なうのは非常に難しいことだと思っています。しかしそれでも私たちはできる限りポジティブな形で、しっかりとした準備をしてこの試合に臨みたいと思います。私たちのチームに所属しているたくさんの選手にしてみれば、8日間で3試合を行なうのが厳しいというのは事実だと思います。現時点では明日のスタメンがどうなるかということは、一切決まっているわけではありません。
なぜかというと多くの選手のところにまだ『?マーク』があるからです。それでも、明日、私たちを応援してくださるファン・サポーターの皆さんに私から一つ伝えたいことがあります。それは、明日のスタメンがどのようになろうとも、ピッチに立つ選手が必ずすべてを出し切って、しっかりとしたいい結果を残すために努力をするということです。これは私の方から皆さんに対してもお約束できることです。
もちろん、第2戦もありますし、それも考えると明日、勝利を収めれば必ず準決勝に行けるというわけではありませんがホームの試合ですし、できる限りいい結果を残してセカンドレグに臨みたいと思います。しかし、ケガ人を出すような無茶なプレーは避けたいと思います。土曜日にもまた試合がありますし、どうしても監督の立場として土曜日の試合も少しは頭に入れておかなければいけないと思います。
そして、この国の夏の気候のことも考えなければいけないと思います。暑さが非常に厳しくなってきました。このような暑さが試合に影響を及ぼすことはあると思います。しかし、大切なのは90分間を通してしっかりと戦い、走ることができること。そして攻守の切り替えをしっかりこなすことができる選手だと思います。
そういう意味では私たちのチームに所属していて、非常に走ることと回復力の優れている坪井慶介や山田直輝が離脱しているのは大きな痛手だと思っています。このような夏の厳しい気候だからこそ、90分間を通してしっかり走って、攻守の切り替えのときにもしっかり走りなるべく早く切り替えができる、このような選手は非常に貴重な存在になるからです。
ナビスコカップは、Jリーグの中断期間で代表選手がおらず、通常とは別のメンバーで試合に臨んでいたわけですが3試合連続、私たちのスタジアムでいいプレーを見せることができたのではないかと思っています。私としては明日の試合でもできる限りいい試合を見せることができるよう努力をしたいと思います。
ただ、チーム全体を見渡した中でケガをしている選手などがいますので、ベストメンバーで臨む、ということは非常に難しいと思います。映像で清水エスパルスの試合を見ました。アウェイでのガンバ大阪戦です。彼らは非常に優れたプレーを見せていたと思いますし、強いチームだと思いました。特に2人のFWは機能していたと思いますし、岡崎とヨンセンというこの2人は現時点のJの中ではもっとも強力なツートップの一つではないかと思っています。だからこそ私たちもしっかりと準備をしなくてはいけません。彼らが強力な攻撃陣を持っているということはすでに証明されているからです。
今回の対戦相手は非常に勢いづいているチームだと思っています。私としてみればこのように力があって勢いのあるチームと対戦することについては喜びを感じます。なぜかというと非常に魅力的な試合になる可能性が高いからです」
(練習中に鈴木啓太がピッチから退いたが?)
「ゲーム形式の練習のときに空中戦があって、彼が着地したときに相手の選手と当たって、腰のところを打撲しました。明日、試合に出られるかどうかは分からない状況です。とても早く回復すれば明日の試合に出場ということも考えられますが、もし、明日痛みが残るようであれば残念ながら明日ではなく土曜日の試合に出場することになります」
(新しく練習に加わった選手については?)
「非常に若い選手なんですが、14日間にわたってここでの練習参加をする機会を彼に与えました。私はあの選手を見てみたいと思いました。ただ、あまり多くのことは語ることはできません。唯一ここでお話しできるのは、彼がアフリカ出身であるということ、そして彼が18歳であるということです。そして生まれ育った国はタンココーチと同じ国です。それ以上のことについてはここでお話しするつもりはありません。
なぜかというと彼の練習参加がどのような形になるかまだ私たちは分かりませんし、これが最終的にポジティブな形で結果を生むかそうでないかも分かりません。そういう状態でいろいろな報道がされてしまうと、ポジティブな形で物事が終わる可能性がどんどん低くなってしまいます。
ですから、これはサッカー業界の常識で皆さんにも理解をしていただきたいのですが、現時点では彼はまだ練習参加のみという状況ですから、詳細についてお話をすることは私の方からはありません。このことについてはご理解いただきたいと思います。
そしてもう一つ、細かいことですが、さまざまなネットワークを通してこの選手がどのような人間でどのような選手なのか、どんな経歴があるのかを調べて、もしそのことについて大きく報道されるようなことがあると、彼の母国でも大きく報道されることになってしまいます。私は長年にわたってアフリカの選手と仕事をしてきて、たくさんの経験を持っているわけですが、やはり練習参加している選手について大きく報道されると、アフリカの方で、裏でいろんな動きが出て、それによってその選手を獲得することができなくなる、そういうことがよくあります。ですからアフリカの状況、サッカー界の常識を考えて、皆さんが現時点ではこの選手についてあまり大きく報道しないでください。
それが私の方から皆さんにお伝えしたかったことです。皆さんがジャーナリストとして仕事をしなければいけないのはよく分かります。もし皆さんが少しでも浦和レッズのことを思っているのであれば、このことについて、例えば選手の名前を探ったり、選手としての今までの経歴の詳細について書いたりすることはしないでください。私の今までのこの業界での経験からお話ししますと、特にアフリカの選手の場合、母国で大きな報道がされてしまうと、それまで関わっていなかったいろいろな人間が、このビジネスに関与してこようとします。
そうして、この選手がいかに有能だったとしても、前もって報道されてしまったことによって、獲得することができなくなったことが今までにたくさんありました。
正式に獲得するかしないかが決まるまでは私の方から皆さんに詳細を伝えることはありませんので、あまり大きな報道も控えていただければと思います。
なぜかというと、一昔前のようにとても高くて有名な選手を買うような予算はこのクラブにはないのです。これが現状です。これはあくまで私の方からのお願いですし、皆さんに対してはっきり伝えたいことでした。世界中のサッカーを見渡しても、名門と言われるクラブ、例えばマンチェスターU、チェルシー、アーセナル、リバプール、バルセロナ、このような大きなクラブというのはアフリカ大陸を駆け回っています。そしていろんなところからいろんな情報を得て、アフリカの才能ある将来性にあふれた選手を発掘しようとしているわけです。
ですから少しでも報道がされてしまうと、すぐにそういう大きなクラブが来て、その選手を獲得しようとしてしまう。アフリカで本当の意味で有望な優れた選手を獲得するためにはしっかりとした個人的なネットワーク、公にされている情報ではなく業界の中で話されていること、そういうことがとても大切になってきます。あまり大きな報道がここでされてしまうと母国の方で必ず報道されてしまいます。
そうなると一切物事が進まなくなってしまいますし、世界的に有名な名門のクラブも来てしまいます。そうならないように、あまり大きく報道しないでください。
これが私の方からの一つのお願いです。私としてみれば、このお願いが守られるためにできることは一つしかないと思います。皆さんの中で誰かがこの選手の名前や経歴などを調べてきて公表した場合は、1年間、その記者の方とは話しません(笑)。もちろんこれが半分ジョークであることはお分かりかと思います、それ以上、私にはやることはありませんから(笑)。もし自分がジャーナリストなら、『こんな監督とは話さなくても勝手に書けばいいだろう』と思うかもしれません(笑)」
(8月にU-20日本代表の大会が韓国であるが、招集される選手もいると思うが?)
「もっとも大切なのは日本サッカー協会が何を求めているかだと思います。協会がどうしても韓国での大会でタイトルを取りたい、それがもっとも大切なことなのか。それとも選手の将来のことを考えて若い選手たちができる限り優れたプレーをJリーグで見せるために育成の助けをしたい、その一環として各カテゴリーの代表チームがあるのか。協会がそこについてどう思っているかで、このことについても決まるのではないかと思います。ただ、私は今後も直接このことについても各カテゴリーの監督とコミュニケーションをとっていきたいと思います。
今、私がお話しすることをカギ括弧つきで大きく報道することはないでしょうが、実際に私たちのメンバーを見てみてください。A代表の方にもたくさんの選手を送り出しています。こちらに3人~4人、そしてU-20に3人、U-18に1人となると合計8人の選手を出していることになります。これだけたくさん、試合に出ている選手を協会の方に出してしまうと、私たちの方もとても苦労するということは理解できると思います。
しかも、日程的にその3つの活動が重なっているところも何度かあるわけです。私としては協会が何を求めているかを理解してさまざまな判断をしていきたいと思います。ただ、このようなことについてはここであまり多くコメントしたくはありません。できる限り顔を見て、直接話し合いができるようにすることが大切だと思いますし、もちろんフレンドリーな形で話し合いをしますが、それでも協会の各カテゴリーの監督と直接話し合いをすることによって、お互いの状況を理解して選手のためになるような決断をしたいと思います」
(サンフレッチェ広島戦の前に日本代表の岡田武史監督と話をしていたが?)
「詳細についてはここでお話しすることはできません。ただ、基本的なこととしてクラブの監督と代表の監督が現時点の代表選手について話し合うことは当たり前のことだと思います。この間も、岡田監督が浦和レッズで仕事をしている代表選手をどう見ているのか、彼らの状況をどう判断しているのか。同じように私はクラブの監督としてクラブで仕事をしている代表選手をどう思っているのかということを代表監督に伝えています。お互いの情報交換というのは大切だと思いますし、このような形で直接話をすることによって、とても貴重な、両サイドにとってためになる情報を得ることができると思います。ですから今後も情報交換をしていきたいですし、現時点での代表選手、将来代表に入るかもしれない選手、そのようなことについてお互いに把握していくことはとても大切だと思います。
特に代表監督に関しては彼が英語を話すことができるというのはとても大きなことだと思います。なぜかというと、英語で話すことができるのでちょっとしたことがあればすぐに電話もできますし、大きなミーティングを企画したり、誰かが通訳をしなければいけない状況ではないので彼との話し合いに関しては、彼が英語ができるということは大きなメリットだと思います」
(練習生が参加することになった経緯は?)
「タンココーチも含めて私は長年アフリカで築き上げてきたアフリカでのネットワークというものがあると思います。そしてここ3回のアフリカネーションズカップはすべて現地で観戦しました。一つの小さなクラブで仕事をしていて、何億、何十億と移籍金を払うことができないクラブの場合は、できる限り他のクラブが行っていないような国に行って、そこで選手を発掘してくることが大切になります。ですから私は約15年間にかけて、チュニジア、ガーナ、マリ、ブルキナファソなどさまざまな国で選手を発掘してきました。
現地ではさまざまな関係者と知り合いになることはとても大切です。そして現地の関係者といつでも直接連絡を取れるようにすること、その際には英語やフランス語などさまざまな言葉を話すことができるのが大切なことです。
現地の関係者と親しくなってさまざまな情報を得るようになって、比較的安い金額で現地の選手を獲得する。そしてその選手が獲得後に実力を伸ばしていけば、場合によっては次に大きなクラブに売ることができるかもしれません。その選手を売ったことによって、とても大きなお金をクラブのために手に入れることができるかもしれません。
このようなやり方を築き上げる必要が私にはあったわけです。選手獲得のときには2つの道があると思います。一つは、世界的に見ても、どの国においてももっとも大きな、資金力があるクラブが行なっていることですが、各国を見て、どの選手がもっとも優れているのか、そしてもっとも優れた選手にもっとも多くの、何億、何十億というお金を払って選手を買ってくる、それが一つのやり方です。もう一つは比較的安い金額で、各選手の母国の国内リーグ、しかも大きなクラブではなく小さなクラブでプレーしている選手、その選手を獲得することです。ただ、そのためには現地の関係者と知り合いでなくてはいけませんし、さまざまな情報やヒントをもらうなどして初めてこの選手を獲得することができるわけです。
もちろんこのようにアフリカから来る非常に若い選手というのは、いろんな意味でまだまだ教育をしなければいけないところがあると思います。しかもアフリカでの生活というのは皆さんご存じだと思いますし、この国とはまったく違うものです。
ある意味、特別なところです。彼らが母国を離れて世界的に見ても進んでいる国、例えばこの日本に来るときには、それなりに生活などに関しても慣れなければいけないところも多いわけです。このような移籍をするにはたくさんの仕事をしなければいけません。ただ、このような仕事は非常に大きな喜びを与えてくれるものだと思っています。なぜかというと、一人の選手、一人の若い人間の教育に携わることができるからです。
そして場合によってはこの選手がとても大きなキャリアを積むことにもなりますし、そのスタートのときに私が助けになる、これも大きな喜びの一つだと思います。そして私をこのクラブに招いた方が最初にはっきり言っていたのは、このクラブは若い選手をもっと育成していきたい、今までのやり方を変えてもっと選手を積極的に育成していきたいということを直接、クラブの方からうかがいました。ですから私はこのクラブに最終的に来ることにしました。
社長は今、変わったわけですが、新しくクラブの社長に就任した橋本代表も私に対して、新しく進み始めた道を今後も進むべきだということを伝えてくれました」
(今後も継続的に練習生は参加していくのか?)
「若い選手であればアルゼンチンとかブラジルなど、それ以外の国からも来ることもあるでしょう。今後も若い選手がここに来て練習参加することは十分にあると思います。今からいつどこで誰がということはお約束することはできませんが、今後も他の国から若い選手が来ることもあると思います。一つ、忘れてはならないのは、私がフライブルグで約16年間、仕事をしていたこと、そしてとてもたくさんの若手選手をそこで育てていたこと。代理人なども『この監督は若手の選手と仕事ができる、外国から来たにもかかわらず若い選手が比較的短い期間で実力を発揮できるようになる、すごく早く成長する』ということを何度も証明されたので、私が自ら積極的に行かなくてもいろんなところから『若い選手を見てくれないか』『若い選手のヨーロッパでの最初の2年間をぜひ任せたい』という話があったわけです。
ですから一つの国に今から決めてしまうのではなくまったく違う国から若手の選手の話が来て、練習に参加して、場合によっては育っていくのを私のところで見ていこうということになるかもしれません。ただ、私にしてみればもっとも大切なのは今、このクラブに所属している選手です。この選手たちとしっかりとした仕事をしていきたいです。私は積極的に若手選手をあちこちで探しているわけではありません。しかし、私たちのチームをご覧になってみてください。
私たちのクラブには22歳から27歳の間の選手がほぼいません。28歳から33歳の選手はたくさんいます。27歳から22歳の選手はあいている。そして22歳から18歳の選手はまたたくさんいます。ということは22歳から27歳の選手がほぼいない、これはこのクラブで長い間、若手選手の獲得、もしくは若手選手が主力として活躍できるような形での育て方をしていなかった証拠ではないでしょうか。
ここに一つ、22歳から27歳の間があいてしまっている状態ですので、私としてはクラブの将来のことも考えて、若手選手のことも考えていきたいと思います。
先ほどの質問に対する追加のお答えですが、たくさんの若手選手がここに来ることはないと思います。この国のルールでは外国籍選手(A契約選手)は3人しか認められていないわけですし、アジア枠1名(AFC国籍を有する選手)があって、そして20歳未満で外国籍も大丈夫である育成枠(アマチュアか20歳未満のプロC契約選手)が最大で2人までしかないわけですから、たくさんの選手がここに来て育成されていくということはないと思います。この国はほかの国とはまったく状況が違うわけですから。
イングランドのアーセン・ベンゲル率いるアーセナルの場合は、よくあることですが、公式戦でも地元の国の選手は一人もおらず、外国人11人で戦っていることがあります。彼のようなやり方だと、毎年18歳以下のアフリカの若い選手を10人ほど連れてきて、そのうちもし2人が成功すれば大成功という形で語られるようになるわけです。アーセナルのことについてもそうですが、数年間にさまざまな選手を獲得して、その中で1回、アデバヨールという選手がいれば、これだけで大きなメリットではないでしょうか。なぜならあの選手はしっかりとしたプレーをしてとても市場価値を高めた、あのような選手を獲得することができればクラブにとっても大きな利益をもたらしてくれる、素晴らしいことなんですけど、それ以外にもたくさんの選手が獲得されていて、その中の一人であったということは忘れてはならない事実だと思います。しかしこの国ではそのような形、例えばほかの国から10人の外国人選手を連れて来て育成するようなことはできないようになっていますので、安心なさってください。私たちは日本人の選手をベースにしてしっかり戦っていきますので。現実的に、この国の規定を見ると外国籍選手枠、アジア枠、育成枠が存在しているわけですが、私たちの場合は、もし来ている選手を獲得したとすると残りの外国籍選手の枠が限られてしまいます。どんなに多くともあと3人増えるだけで、これ以上ということはありえないわけです。
アジア枠に関しては韓国の選手を獲得することが多いわけですが、私は現状に対して何か大きく語ろうとしているわけではありません。そうした現状の中で仕事をしていくわけですし、今後も日本人が土台となっていくと思います。あくまで私の一つの考えですが、日本はもっと外国に対してさらに窓をあけるべきだと思います。なぜかというと国際的な交流というのはさまざまな刺激を与えてくれます。それによって国のサッカーのレベルを全体的に上げることができるのではないかと思います。外国からさまざまな選手が入ってきて、刺激を受けることによってこの国の選手も自分たちのスキルを上げていくことができると思いますし、お互いに学べることがたくさんあると思います。長期的なレベルアップを考えれば、国際的な交流を活発にするということはとても大切だと思います」
(今回練習に参加するのは以前、クラブハウスの訪れた人とは別?)
「2週間ほど前に来ていた選手とは違う選手です。今だからお話しできますが、あのときに来ていたのは選手でした。若いときには大きなクラブに移籍をしてたくさんのお金を稼いでいて、それほど国際的には有名ではなかったのですが、とても才能のある選手でした。そして日本のU-20のチームと対戦したこともあります。獲得できるかどうかを検討したんですが、最終的にはポジティブな結果には至りませんでした。日本という国で仕事をしているときにはさまざまな、今までと違う条件というのもありますし現状を考えると外国の選手を連れてくるのはそう簡単なことではないと思います」
(練習生のストロングポイントは?)
「それはこれから発見したいと思います(笑)。基本的なことですが、西アフリカで生まれた選手、そして彼らが母国でサッカー選手になることができたのであれば、ヨーロッパ人よりも、日本人よりも優れた瞬発力を持っているのは間違いないと思います。これは生まれつきのものです。これは西アフリカの選手が持っている一つの特長です。これは彼の一つの強みではないでしょうか」
(若手選手を選ぶ基準は?)
「大切なポイントというのは私たちが逐一、教えなくても選手がピッチ上で起きていることをしっかり理解して、正しい判断と動きを見せることです。毎回毎回、説明するのではなくてすぐに状況を把握することができる。そして正しい決断を下すことができる。それが大切な要素だと思います。
サッカーにおいてはすべてを教えることはできません。選手からしてみても、サッカーで起きているすべてのことを学ぶことはできません。もちろん、学ぶことができる部分もありますが、残りの部分は才能なわけです。
このような才能を持っている選手を見つけるのが私たちの仕事だと思いますし、見つけた後で彼らにさまざまな刺激を与えることによってこの才能が伸びていくことを助ける、これが私たちの仕事です。
ただ、すべてを教え込む、その選手がすべてを学ぶということはサッカーの世界ではないことです。どんなに才能があったとしてもまったく努力をしない、まったく規律のない選手であれば成功はしないでしょう。しかし、どんなに努力をしても、どんなに素晴らしい規律を持っていても、まったく才能がなければサッカー選手として成功することは一切ありません。これがサッカーの厳しい現実です。サッカー選手は一つの工場で生産することができないものです」