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PICK UP PLAYER|水沼宏太

2026/27明治安田J1リーグ 第3節。
同点ゴールの瞬間には、ウォーミングアップエリアから真っ先に駆け出した。
1試合で3回・計5人目の交代枠が使い切られてからも、脳震盪による『特例交代』に備えて身体を動かしていた。

だが、そのFC町田ゼルビアとのゲームはリードを許したまま終了の笛を聴くこととなる。
その瞬間には、ガックリと両膝を折った。

「リーグ3戦、逆転されたり突き放されたりという展開になってしまっていますけど、そこからまた盛り返せるチームになりたいし、僕自身そういう存在になりたいとも思っています。そういう感情が今の自分を突き動かしているように思います」

試合後のファン・サポーターへのあいさつでは、水沼は最後尾を歩いていた。隊列から遅れがちになる選手の背中を文字通り「押して」回っていたからだ。

「ブーイングされるのも当たり前だと僕は思っていました。みんなに言ったのは、『とにかく顔を上げて、しっかりファン・サポーターたちの顔を見ろ』ってこと。やっぱり、下を向いて受け止めているような気持ちじゃ絶対ダメだし、自分たちがどんな人たちと一緒に闘っているのか、どんな人たちが仲間なのかっていうことをしっかり目に焼き付けて、それをパワーにしていかないといけないと思ったので」

冷静な口調で語る水沼だったが、語る内容にはまごうことなき情熱が込められていた。

「僕もまだファン・サポーターのみなさんと顔を合わせる機会は多くないんですけど、とにかく自分はみなさんの顔を見ているつもりだし、あの人たちが自分たちと一緒に闘うことで引き起こせるパワーっていうのは間違いなくすごいものがあるので、もう一度自分たちにはどんな人たちがついているのか、どんな人たちと一緒に闘っているのかっていうことを意識してやっていくことが大切だと思っています」

フィールドプレーヤーとしてはチーム最年長の36歳。
プロ19年目だが、『成長』への貪欲さは非常に強いものがある。

「また新しいことにチャレンジしたり、いろんな選手とプレーすることで、自分が吸収できるものというのはたくさんあります。それをピッチで表現できる時間っていうのが、とにかく今は欲しい。ただただ声を出して、経験があるからみんなを引っ張っていく、そんな存在だけでいたくはないんです」

そう語る彼が抱える、試合のピッチへの飢えは相当なものだ。

「自分はいつでも準備できているつもりではあります。でもピッチに立つ時間が短いということは何かがまだ足りないということなので、そこをもう一回自分の中で見つめ直しながら、何ができるか、どんなパワーをチームにもたらすことができるかっていうところを考えて、自分にしかできないことっていうものを探してやっていきたいと思います」

その水沼は、8月26日の天皇杯2回戦で移籍後初先発。
64分までプレーし、チームは3-0で勝利を挙げた。

「個人的にはゴール、アシストという数字として残るものがなかったので、そこの悔しさに尽きるとは思いますけど、勝ったことで、まずチームを前向きにさせるというところはできたんじゃないかなと思います」

試合後のロッカールームには、ファン・サポーターたちの歌声も届いていたそうだ。

「みんなで歌える機会をもっと増やしたい。今日の勝ちを、次につなげたい」

彼は、そう熱望している。

次節の対戦相手は横浜F・マリノス。
彼にとって縁の深い相手であることは、いまさら多くを語る必要もないだろう。
「経験豊富」、「ベテラン」といった形容だけでは表現しきれない魅力をもつ漢・水沼宏太。
ホーム埼玉スタジアムで、ファン・サポーターからパワーを引き出した彼が躍動する――。
そして、共に勝利の喜びを分かち合う。
そんな場面が見たいと、強く願う。
 
(取材・文/小齋秀樹)

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