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PICK UP PLAYER|渡邊凌磨
常に渇きを覚えるのは、満たされることがないからだろう。数値に残ろうが、数字が付こうが、渡邊凌磨が描く自分は、遙か先にある——。
アウェイで闘ったガンバ大阪とのJ1リーグ開幕戦。22分に退場者を出す苦しい展開ながら、一時はスコアをひっくり返したチームの姿勢に前を見据える。
「70分近くを、イレギュラーな状況で戦うことになりましたけど、ピッチにいる人数に関係なく、自分たちがやろうとしていることができたとは思います。11人だったら勝てたという言い訳をするつもりは全くないですが、11人だろうが、10人だろうがチームとしてやるべきことをやる第一歩は示せたかなと思います。何よりも、これを続けることが、チームとしては大事だと思うので、やり続けたい」
4-1-2-3の2列目で先発出場した背番号13は、1-2で追いかける後半になってチームが3バックにシフトチェンジすると、トップ下を一人で担った。右へ左へと顔を出し、ポケットを取りに走ると、78分には活路を切り拓く。中央から右サイドに走り、ダニーロ ボザから縦パスを引き出す。冷静に中を見て金子拓郎がゴール前に走り込むのを確認すると、右足でクロスを上げてダイビングヘッドによるゴールをアシストした。
その3分後の80分、今度は左サイドからチャンスメークした。途中出場していた長沼洋一から斜めのパスを受けると、前を向いてやはり相手のポケットを取りに走った。ドリブルでゴールライン際まで深くえぐると、ニアで待ち構えていた南野遥海に右足アウトでラストパスを送った。
2アシストという結果だけでなく、そのプレーで、その運動量で、今季のチームが目指すサッカーを体現し続けた。総走行距離は両チーム合わせて最高の12.4kmをマーク、総スプリント回数もチーム内では宮本優太の18回に次ぐ17回だった。多くの時間を10人で戦ったチームを文字どおり走力で補い、最後まで勝ちにいく姿勢を見せた。
しかし、結果的に84分、86分と失点して浦和レッズは3-4で開幕戦を落とした。チームを勝たせられなかったという思いが強いのだろう。自身のプレーについて問いかければ、厳しかった。
「もっと、もっと攻撃のチャンスを増やせるし、増やさなければいけないシーンがたくさんあったなかで、2アシストだけに終わってしまった。多分、あの日(G大阪戦)は、どんなに自分のプレーが悪くても2アシストはできていたと思うので、それを考えると、最低限の評価(出来)だったと自分では思っています。だからこそ、練習からもっと突き詰めていかなければいけないし、やり続けなければいけないと思っています」
自分に対する評価が厳しいのは以前からだが、悔しさに包まれていたのは、前半終盤のシュートや71分に金子からのクロスを頭で合わせた場面で、決め切れなかった自戒が強いからだ。
「プレーを振り返れば、ゴールを決めたかったという思いのほうが強いし、チャンスクリエイトの部分でもやっぱり、もっと、もっとできたと思うから、自分のプレーは物足りなかったなと思っています」
G大阪戦を終えて練習が再開されたその日、チームの全体練習を終えると、攻撃陣は居残りでシュート練習を行っていた。南野が豪快なシュートを決めると、大きな声で「はるみ!」と名前を呼び、チームメートを讃える姿は、J1百年構想リーグ期間でキャプテンマークを巻き、今季もキャプテングループの一人としてチームをけん引していこうとするリーダーそのものだった。
一方で、自分がフィニッシュする場面では、1本、1回にこだわり、ゴールを決めれば試合さながらに拳を握りしめて喜び、シュートを外せば心の底から悔しがる姿に、今季に懸ける思いはひしひしと伝わってきた。
子どものころから憧れてきた浦和レッズでキャプテンマークを巻き闘った特別なシーズンを終えようとしていたとき、「キャプテンをしたことで見えたことがたくさんある」と成長を実感した彼は、こうも語っていた。
「だからといって、選手として丸くなったと思われたくはない」
チーム全体を俯瞰できるようになったからといって、棘や凹凸である個を失いたくない。だから——。
「試合中にたとえ消えている時間があったとしても結果を残すというところは、自分で意識し続けていかなければいけないと思っています。小さいチャンスを大きなチャンスに変えるじゃないけど、それくらいどんどんやり続けたいし、決め切りたいと思います」
キャプテンマークを巻いた経験は、チームという単位で物事を考えるようになっただけでなく、クラブという範囲にまで視野を広げた。試合後、ファン・サポーターの表情を目に、心に焼きつけているように、G大阪戦で試合に敗れながらも拍手を送ってもらえた光景に思うこと、感じることは多かった。
「勝ち負けは大事ですよ。そのうえで、今まで負けた試合で拍手をしてもらったことはほとんどなかったように思うので、自分たちの闘う姿勢や勝ちたいという思いを少しでも感じてもらえたのかなと思います。アウェイにあれだけ多くの人たちが来てくれて、だからこそ、次はしっかりと結果で示せるようにしたいと思います」
ホーム開幕となるサンフレッチェ広島戦で、彼が目指すのは、棘である個の力だ。
よりゴールに近いポジションでプレーする今季、その1本に、1回にこだわり、自分を示す。満たされることのないその先を追い求めて。
(取材・文/原田大輔)
アウェイで闘ったガンバ大阪とのJ1リーグ開幕戦。22分に退場者を出す苦しい展開ながら、一時はスコアをひっくり返したチームの姿勢に前を見据える。
「70分近くを、イレギュラーな状況で戦うことになりましたけど、ピッチにいる人数に関係なく、自分たちがやろうとしていることができたとは思います。11人だったら勝てたという言い訳をするつもりは全くないですが、11人だろうが、10人だろうがチームとしてやるべきことをやる第一歩は示せたかなと思います。何よりも、これを続けることが、チームとしては大事だと思うので、やり続けたい」
4-1-2-3の2列目で先発出場した背番号13は、1-2で追いかける後半になってチームが3バックにシフトチェンジすると、トップ下を一人で担った。右へ左へと顔を出し、ポケットを取りに走ると、78分には活路を切り拓く。中央から右サイドに走り、ダニーロ ボザから縦パスを引き出す。冷静に中を見て金子拓郎がゴール前に走り込むのを確認すると、右足でクロスを上げてダイビングヘッドによるゴールをアシストした。
その3分後の80分、今度は左サイドからチャンスメークした。途中出場していた長沼洋一から斜めのパスを受けると、前を向いてやはり相手のポケットを取りに走った。ドリブルでゴールライン際まで深くえぐると、ニアで待ち構えていた南野遥海に右足アウトでラストパスを送った。
2アシストという結果だけでなく、そのプレーで、その運動量で、今季のチームが目指すサッカーを体現し続けた。総走行距離は両チーム合わせて最高の12.4kmをマーク、総スプリント回数もチーム内では宮本優太の18回に次ぐ17回だった。多くの時間を10人で戦ったチームを文字どおり走力で補い、最後まで勝ちにいく姿勢を見せた。
しかし、結果的に84分、86分と失点して浦和レッズは3-4で開幕戦を落とした。チームを勝たせられなかったという思いが強いのだろう。自身のプレーについて問いかければ、厳しかった。
「もっと、もっと攻撃のチャンスを増やせるし、増やさなければいけないシーンがたくさんあったなかで、2アシストだけに終わってしまった。多分、あの日(G大阪戦)は、どんなに自分のプレーが悪くても2アシストはできていたと思うので、それを考えると、最低限の評価(出来)だったと自分では思っています。だからこそ、練習からもっと突き詰めていかなければいけないし、やり続けなければいけないと思っています」
自分に対する評価が厳しいのは以前からだが、悔しさに包まれていたのは、前半終盤のシュートや71分に金子からのクロスを頭で合わせた場面で、決め切れなかった自戒が強いからだ。
「プレーを振り返れば、ゴールを決めたかったという思いのほうが強いし、チャンスクリエイトの部分でもやっぱり、もっと、もっとできたと思うから、自分のプレーは物足りなかったなと思っています」
G大阪戦を終えて練習が再開されたその日、チームの全体練習を終えると、攻撃陣は居残りでシュート練習を行っていた。南野が豪快なシュートを決めると、大きな声で「はるみ!」と名前を呼び、チームメートを讃える姿は、J1百年構想リーグ期間でキャプテンマークを巻き、今季もキャプテングループの一人としてチームをけん引していこうとするリーダーそのものだった。
一方で、自分がフィニッシュする場面では、1本、1回にこだわり、ゴールを決めれば試合さながらに拳を握りしめて喜び、シュートを外せば心の底から悔しがる姿に、今季に懸ける思いはひしひしと伝わってきた。
子どものころから憧れてきた浦和レッズでキャプテンマークを巻き闘った特別なシーズンを終えようとしていたとき、「キャプテンをしたことで見えたことがたくさんある」と成長を実感した彼は、こうも語っていた。
「だからといって、選手として丸くなったと思われたくはない」
チーム全体を俯瞰できるようになったからといって、棘や凹凸である個を失いたくない。だから——。
「試合中にたとえ消えている時間があったとしても結果を残すというところは、自分で意識し続けていかなければいけないと思っています。小さいチャンスを大きなチャンスに変えるじゃないけど、それくらいどんどんやり続けたいし、決め切りたいと思います」
キャプテンマークを巻いた経験は、チームという単位で物事を考えるようになっただけでなく、クラブという範囲にまで視野を広げた。試合後、ファン・サポーターの表情を目に、心に焼きつけているように、G大阪戦で試合に敗れながらも拍手を送ってもらえた光景に思うこと、感じることは多かった。
「勝ち負けは大事ですよ。そのうえで、今まで負けた試合で拍手をしてもらったことはほとんどなかったように思うので、自分たちの闘う姿勢や勝ちたいという思いを少しでも感じてもらえたのかなと思います。アウェイにあれだけ多くの人たちが来てくれて、だからこそ、次はしっかりと結果で示せるようにしたいと思います」
ホーム開幕となるサンフレッチェ広島戦で、彼が目指すのは、棘である個の力だ。
よりゴールに近いポジションでプレーする今季、その1本に、1回にこだわり、自分を示す。満たされることのないその先を追い求めて。
(取材・文/原田大輔)
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