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トップチーム指導体制記者会見
10日、大原サッカー場クラブハウスにて2009シーズン・トップチーム指導体制発表の記者会見が行なわれました。
冒頭、藤口光紀代表が、フィンケ監督と6名のコーチの名前を発表した後、同席した、新任のカルステン・ナイチェルコーチ、イブラヒム・タンココーチ、モラス雅輝コーチが挨拶しました。
藤口光紀代表
「Jリーグが1993年にスタートして今年で17シーズン目を迎えます。浦和レッズは最初から新しいスポーツ文化の構築のために参加し、これまで活動を続けてきまして、それなりの市民権は得てきたと思っています。最初の10年はチーム作りに苦労してなかなか勝てない時代がありました。10年に一度くらいはタイトルを取りたいという話もしていたことを思い出します。ただ2003年にナビスコカップで初めて勝って、その後の5年間ではカップ戦、リーグ戦、そしてアジアでもナンバーワンに上り詰めました。
しかし、昨シーズンはタイトルを取れず、やはりこれまでしゃにむにタイトルを取りたいとやってきましたが、もっと長い目で見て、レッズのサッカーとは何か、しっかりしたレッズのスタイルを構築することが大事だと、同じ目標に向かって、クラブもチームもファン・サポーターも向かっていくことが大切だと考えました。タイトルを取りたいという焦りもあったのかもしれませんが、ここで腰を落ち着けてしっかりとしたチーム作りをすることが大事であり、レッズスタイルの構築に向けて、2009年は変革の年、新たな挑戦の年と位置づけています。
そういう意味で、我々の変革に一緒に取り組んでくれるトップチームの監督というポストが非常に大事だということで、監督の選考を進めていた中でフィンケ監督に巡り会いました。
レッズの変革のために、共同作業に一緒に挑戦しようとおっしゃっていただき、監督に就任していただきました。12日から新シーズンに向けて始動しますが、その2日前にこうしてコーチングスタッフを含めて発表できることをうれしく思います。フィンケ監督は昨日、来日し、コーチングスタッフの2人は今日、来日しました。明後日から練習がスタートするにあたり、新しい指導体制を発表させていただきます」
フォルカー・フィンケ監督
「皆さんには2度目の挨拶になります。私が今シーズンから浦和レッズの監督をすることになりました。先程藤口代表からも話がありましたが、今年は改革の年でもあります。もちろん様々なトライもしていかないといけませんが、私にとっては非常に興味深い仕事ができると思っています。様々な仕事の話がこれまでにありましたが、浦和レッズの監督をすることに魅力を感じて、来日することになりました」
カルステン・ナイチェルコーチ
「浦和レッズのコーチができることを大きな誇りに思います。これからも浦和レッズのコーチ陣と一緒に仕事をしていくことで、もちろん、私も浦和レッズに様々なことをもたらすことができると思いますし、私自身もアジアの文化やアジアのサッカーなどを学べるということで、お互いにとってメリットのある仕事ができればと思います。これから浦和レッズで仕事ができることに大きな喜びを感じていますし、仕事を楽しみにしています」
イブラヒム・タンココーチ
「浦和レッズは非常に有名なクラブで、私の認識では、アジアでも最も大きなクラブの一つだと思っています。そして2年前にはAFCチャンピオンズリーグでも優勝したことがありますし、昨年については残念でしたが、国際舞台でも結果を残したクラブであることもよく存じています。このようなクラブで、質の高いコーチ陣、しかも若くてモチベーションも高いコーチ陣と一緒に仕事ができることをうれしく思います。浦和レッズでのチャレンジは非常に楽しいことになると思いますし、1年後にまた素晴らしい結果を残せたと言えるような質の高い仕事ができればいいと思っています」
モラス雅輝コーチ
「私自身は昨年の11月からチームに合流していましたが、もともとヨーロッパにいたころは日本に帰ってくることはないと思っていました。しかし、この2ヵ月間で、残念ながらメディアには出ないような、素晴らしい裏方のスタッフの方と知り合うことができ、それがクラブに残ろうと思ったもっとも大きな理由です。
それが、マテリアルのスタッフであり、メディカルのスタッフであり、残念ながら一般の方はあまりそうしたスタッフと接することはないと思いますし報道もなかなかされませんが、彼らの浦和レッズを愛している、素晴らしい仕事、1日24時間このクラブのために仕事をするプロフェッショナルな姿勢を見て、こういった仕事であるならばと、15年ぶりに日本に帰ってくることを決めました。もちろん、こうした素晴らしい指導者と仕事ができるのは楽しいことですし、同時にそうした裏方のスタッフの方々と質の高い仕事ができるというのは非常に楽しみなことだと思っています」
※フォルカー・フィンケ監督から新コーチについて
「私は監督として、トップチームのコーチ陣の構成について責任を持っていますので、3人の新コーチについてコメントをしたいと思います。ナイチェルコーチとはFCフライブルグで合計11年間、一緒に仕事をしていました。その前の3年間は私のもとで、選手としてプレーしていて、当時、私のチームはブンデスリーガに所属していました。ご存じのように、当時の東ドイツは育成部門で素晴らしい結果を残していました。ヨーロッパ選手権やワールドカップ、各カテゴリーの大会がありますが、ナイチェルコーチは東ドイツ代表として様々な大会に出場していました。東ドイツ代表としてヨーロッパ選手権でも優勝をしています。ナイチェルはセンターバックでしたが、ドイツのセンターバックとしては小さな体でした。それでも素晴らしいプレーをいつも見せていましたし、先程お話ししたヨーロッパ選手権で優勝したときのキャプテンを務めていました。ドイツのサッカー界では伝説の試合となっている、1994年に2部から上がったばかりのフライブルグが、ドイツナンバーワンのバイエルン・ミュンヘンにホームで5-1で破った試合では、フライブルグの中心選手で、センターバックとしてフル出場も果たしています。
タンココーチについて、彼は15歳のときに母国・ガーナを離れてドイツに移住しました。そしてボルシア・ドルトムントというクラブに所属し、U-19チームではドイツ選手権で2回、優勝しています。現役のときは17歳でブンデスリーガにデビューしました。それは今でも素晴らしい記録ですし、それほど若い時期にデビューする選手はなかなかいません。そしてトップチームのメンバーとしてもブンデスリーガで2回、優勝もしています。そしてUEFAチャンピオンズリーグでは、ボルシアドルトムント時代の1997年に選手の一員として優勝を果たしています。ドルトムントには2000年まで所属し、彼の素晴らしいプレーをブンデスリーガでも見ていましたので、私たちは契約が切れることが分かっていたので前もってオファーを出していました。そしてFCフライブルグに移籍することができました。フライブルグでは、ヨーロッパカップの舞台でもいいプレーを見せることができました。特に印象に残っているのが、UEFAカップの3回戦に進出したときです。当時、皆さんご存じの小野伸二選手の所属していたフェイエノールトとも対戦しました。そのときはアンラッキーな形で我々がフェイエノールトに敗れてしまいましたが、当時はフェイエノールトの一員として小野選手が試合に出場しており、こちらのクラブには選手としてタンココーチがいて、試合に出場していました。
そしてモラス雅輝コーチについて。モラスコーチはヨーロッパでずっと仕事をしていて、指導者としてしっかりとした実績を残してきました。そして、最後はオーストリアサッカー協会に所属してU-19のヘッドコーチをしていたわけですが、これほど実績を残しているコーチを浦和レッズのコーチとして招くことができたことを非常にうれしく思っています。実際には彼はオーストリアサッカー協会との契約も残っており、協会との契約について交渉が必要でしたが私自身、彼がここでコーチをすることを強く望み、協会との交渉がうまくいったことを非常にうれしく思っています。もちろん、選手とのコミュニケーション、クラブ内の交渉、特にコーチングスタッフの話し合いのときに通訳を頼むこともありますが、根本的には選手たちに様々な指導ができるコーチングスタッフの一人として、彼のことを考えています。
そしてもう一つ。皆さんには、あることをお話しさせていただきます。非常に大切なことなので真剣にお伝えしたいと思います。タンココーチの現役時代のある出来事で、過去のことが盛り返され、インターネットのいくつかのサイトなどで書かれていることがあります。ここでは正しい情報をしっかりと皆さんにお出ししたいと思います。今から9年ほど前のことですが、タンココーチが現役のころ、オランダでの友人のパーティーで差し出されたたばこに、マリファナが含まれていることをまったく知らずに、それを一度だけ吸ってしまったことで、数日後、無知によるドーピングの違反ということで、処分を受けたことが一度だけ、ありました。ドイツでもいろいろな調査がありましたが、これは完全な偶然で、意図的なことではなかったことは100%証明されています。先程も話をしましたが、彼がドルトムントでプレーしているときに、私が彼を獲得しました。獲得しようとしたそのときに事件は起きて、メディアでもドーピングで引っかかったという報道がありました。そこで、様々なチェックをしましたが、問題ないことが証明されました。ですから私も監督として、当時のタンコ選手を獲得したときにはこのことについては何も問題にしませんでした。なぜかというと無罪ということがはっきりと証明されていたからです。今回、こちらで仕事をすることになったときにも彼が優れた指導者だということは分かっていましたし、彼と一緒に日本で仕事がしたいと思っていました。ですから、今から9年前のことは私自身もまったく問題がないと思っていますし、ここで一緒に仕事ができることを楽しみに思っています。
当時、私は監督としてタンコ選手の獲得に動いていたところなので、私自身もショックを受けましたし、どこまで本当のことなのか、当時は分からないこともありましたので、私たち自身が、別ルートで彼の生活環境などのことも調べました。そして問題が発生したときに、専門家や弁護士なども含めて検証をして、その結果、彼が素晴らしい家族、生活環境で生活をしており、優れた学歴を持ち、周辺の人々からも、彼がクリーンに生活していることがはっきりと証明されました。ですから私たちとしても彼を獲得することに何の問題もありませんでした。
もちろん、ドーピングで引っかかったということがありますので、ドイツのスポーツ法廷から数ヵ月間の出場停止の処分を受けましたが、それ以外のことに関しては何も問題は起きていません。そしてその1年後には問題なく彼はガーナを離れ、ドイツの国籍を取得しました。ご存じの通り、ドイツの国籍を取ることは非常に難しいことです。にも関わらず、様々な調査を受けた上でまったく問題なく国籍を取得しました。彼は模範的なドイツ人であり、素晴らしい指導者として生活をしています。彼は素晴らしい人間であり、麻薬などとまったく関係ないということを私自身が、ここで証明します。
私たちは、何も隠すことはないと思っていますし、彼が潔白だということはドイツでも証明されています。ですから、このことで私としてはこれ以上、話すことはありません。ただ、間違った情報が流れることであったり、間違った情報を意図的に流すこと、噂がたつことに関しては非常に残念に思っています。ですから、メディアの皆様にもいま一度、このことについてここでお話しして、今後は彼の過去のことではなく、浦和レッズでいかに素晴らしい仕事をしているかということについてお話をしたいと思います。そしてこの浦和レッズというクラブが、私がタンココーチを日本に連れてきたいと話をしたときに、過去のことばかりを話すのではなく、このことについて建設的に話をしてくれました。そして最終的に何の問題もなく、日本で新しい仕事をコーチ陣の一員としてスタートできる手配をしてくれた浦和レッズに感謝をしています。
ご存じのように、薬物の乱用防止については世界で様々なキャンペーンがあります。これまで、タンココーチも私もそういったことに参加をし社会貢献もしてきました。ぜひ日本でも機会があればそうしたキャンペーンに積極的に参加して、社会的にも貢献できればいいと思っています。そのことは藤口代表にもお話して、『まったく問題ない、ウエルカムだ』と言っていただきました。彼の潔白は証明されていますし、積極的に社会のためになる活動も今後、していきたいと思います。この浦和で仕事ができることを楽しみにしています。なぜなら、質の高いコーチが集まったと思っているからです。昨シーズン、所属していた3人の日本人のコーチもいます。私は3人のコーチともいろいろな話をしました。今シーズンは日本人、ドイツ人の、質の高いコーチがそろいました。この新しいコーチングスタッフと、指導者の一つのチームとしてしっかりと仕事をして浦和レッズに貢献できればいいと思っています」
<質疑応答>
■コーチ陣の役割分担は?
フィンケ監督「先程もお話ししたように私たちは指導にあたってのチームを作り上げました。一人一人のコーチについて、はっきりとした役割分担という言葉は、ここでは使いたくないと思います。なぜなら、チームワークが必要だからです。
例えば、我々は、技術系トレーニングの専門家や、瞬発系トレーニングの専門家といった人たちで今回コーチングのチームを作り上げたわけではありません。それぞれのトレーニングに重点はありますが、一人のコーチが練習に参加できなくなったとき、専門のコーチがいないからといって他のコーチが仕事ができないということにならないようにしたいと思います。ですからすべてのプログラムの内容、重点について一人でなく二人で担当したいと思います。よりよいコミュニケーションはもちろん大切ですし、それぞれの重点を持っていることは確かです。ただ、はっきりとした役割分担というのは間違った言い方だと思います。根本的に私たちはすべての練習を公開しますので、いつでもいらしてください。そこで誰が何をやっているか、ご覧いただけると思います。
ただ、GKコーチに関しては専門的な部分があります。GKコーチがいないからといって通常のコーチがGKトレーニングをやることはありません。GKコーチはGKを育てるというはっきりとした仕事があります。それ以外で、例えばナイチェルコーチは現役時代、守備のスペシャリストでありました。福田コーチやタンココーチは攻撃のスペシャリストでした。モラスコーチや大槻コーチは指導者として実績を残し分析にも優れたコーチです。私自身も、ブンデスリーガで400試合、2部でも200試合、合計で600試合の経験があります。しっかりとしたノウハウと経験も持っています。このような質の高いコーチングスタッフがそろったことでいい仕事ができるのではないかと思います」
■ドイツでの信藤健仁チームダイレクター(TD)との話し合いについては?
フィンケ監督「以前、来日した際に信藤TDと話をしました。ただ、ヨーロッパで会ったことは一度もありません。もちろん、信藤TDがヨーロッパに来ていて、ドルトムントやフライブルグの試合を見ているのは知っていますが、私自身がヨーロッパで彼と話をしたというのは事実ではありません」
■指導する上でのモットーは?
フィンケ監督「まず、楽しむことが重要ではないでしょうか。それから、英語になりますが『NO PAIN,NO GAIN』です。選手たちが一番の喜びを感じるはずである試合に出るためには、厳しいトレーニングをしてしっかりとした準備をして場合によっては痛みを伴うようなこともやらなくてはいけません。ですから、まずは仕事があって、最終的に努力をすれば楽しみを得ることもできるでしょう。
フライブルグで一緒に仕事をしていたコーチ陣は私のモットーをよく知っていると思います。目標に向かって進む道というのがもっとも大切だと思っています。朝起きた時、目標は何なのか、そしてそこに辿り着くまでに今日は何をすべきかを考える。これを自ら理解してステップを踏むことが大切です。次の日も、その次の日も、朝起きたら、自分の目標は何なのかをしっかりと考えて、そこに向かって進むべき道をはっきりさせ、確実に進んでいくことが大切です。それと試合の後は、試合の前なのです。日曜日に試合があるとすれば、木曜日になってから『そろそろ試合がある、しっかり準備をしていこう』、こういう考えはプロではありません。重要なのは、試合が終わったらすぐに次の試合の準備を始めることです。ですから、試合の後は、すぐに試合の前なのです」
ナイチェルコーチ「私の考えとしては、プロはどんな状況でもしっかり集中して次にやるべきことをやることが大切だと思います。もちろん、サッカーの世界ですから、うまくいくときもうまくいかないときもあります。うまくいかない時間が非常に長くなる可能性もあります。それは、このクラブの指導者としては、望むことではありません。ただ、うまくいっていてもそうでなくても、自分たちの目標がどこにあるのか、それに向けてしっかりと集中して、物事を進めていくことが大切です。もちろん、様々なことについて批判もあるでしょう。ただし、そのときに私たちは建設的な批判をするべきです。そして指導者チームの中でも、選手たちの関係もそうですが、お互いにリスペクトをして仕事をやるべきです。様々なことがうまく進んでいない時期にはリスペクトを持ってはっきりといろいろなことについて話すことが難しくなることもあります。感情的にもなってしまうからです。しかし、大人の人間関係としてしっかりリスペクトを持って仲間と接することが大事なのではないかと思います。そうすれば仕事への喜びというものも感じることができるでしょう」
タンココーチ「私の一つのモットーは、99%の努力では足りないということです。いかなる状況でも100%の努力をしないといけない、99%の努力では中途半端に終わることが多いわけです。ですから、いかなる状況でも100%の集中力、100%の努力をして、目標を達成するためにステップを進んでいくことが大切だと思っています」
モラスコーチ「しっかりとコミュニケーションをとって一緒に仕事をすれば、1+1が2とか3ではなく、サッカーの世界では1+1が11になる事もあると思っています。1+1は11、それだけの結果を残すことができると思いますし、それが本当のチームプレーだと思っています」
■現在の戦力と補強については?
フィンケ監督「浦和レッズは、昨シーズンの7位という結果よりもさらに上を狙う力が備わっていると思います。そして大切なのは質の高い仕事をここですること、同時に選手たちの実力を見極めたいと思っています。まずは今、このチームに所属している選手のみでチームをスタートさせようと思っています。もちろん場合によっては、プラスアルファで選手を獲得することがあるかもしれませんが、まず、最初の考えとしては、今このクラブに所属している選手でシーズンを始めたいと思っています。そして以前もお話しした通り、もし彼らのパフォーマンスがよければ、できるだけ若手選手にもチャンスを与え、チームに刺激を与えることができればいいと思っています」
■監督の契約期間について、また、阿部勇樹選手の代表合流が遅れていることについての判断は?
フィンケ監督「1年プラス1年の2年契約ということで、ここで仕事をしたいと思っています。ただ、サッカーの世界では何が起こるか分からないですし、内容次第では長くなる可能性もあります。阿部が体調を崩したのは残念ですが、代表に行く3人とは様々な話をしました。阿部とは今日も会って話をしました。まだ100%ではないということですし、今すぐに代表に行くことはないと思いますが、数日以内に、仁賀ドクターと指導者と阿部と話し合いをして決めたいと思います。今、ここでいつ代表に行くかということについて、はっきりとお知らせすることはできません」
■クラブとして、タンココーチの過去のことについて調査は?
藤口代表「我々としても薬物は絶対に駄目だということは貫き通しています。日本でも薬物に関しては話題になりかなり敏感になっていることも確かです。最初にこの件を聞いたときに言葉だけをとらえれば非常に敏感になりました。フィンケ監督にいろいろ質問したり、我々の方でもいろいろな情報を入手しました。先程、フィンケ監督も話したように、一生に一度の過ちがあって、それがドーピング検査で引っ掛かった。そして日頃からそういったことをやっている人間ではないということはスポーツ法廷でも明確になりました。そういったいろいろな情報を入手しまして、彼が信頼できる人物であると、クラブが評価させていただきました。この件については、ドイツでも厳しくなっているという話も聞いています。日本ではそれ以上に厳しいので、我々としても慎重に情報を入手して検討致しました」
■タイトルについての思いは? それを受けて監督の目指すものは?
藤口代表「2008年は勝負の厳しさを痛切に感じた年でした。今シーズンは新たな気持ちでスタートしよう、そういう意味ではタイトルをずっと取れずにきた時期もありましたが、原点に返るためにまた新しいスタートを切るという気持ちが大きいということです。新しい指導体制で、これから質の高いサッカーをしていこうということで、それが積み重なっていけばタイトルも結果として手に入れることができると思います。
もちろん、浦和レッズは勝利が求められるチームであることは監督も分かっていると思います。我々は一つ一つを積み重ねていって結果として、そうした優勝ということにつながればいいと思っています。最初からタイトル、タイトルと言って足元をおろそかにすることなく、ステップバイステップで積み重ねてやっていくということをご理解いただければと思います」
フィンケ監督「もちろんできる限りたくさん勝利をしたいし、すべての試合に勝ちたいですが、世界のどこでもすべての試合に勝つことは不可能です。ただし、試合の前には必ず勝つという強い意志を持ってすべての試合に臨みます。今までの経験から言うと、あまりタイトルについて話をしないで準備をして、少しずつ結果を残していったほうが、タイトルに結びつきやすいということがあります。ですからここで、シーズンが始まるときに、タイトルについてあまりお話はしたくないです」
■正式な契約は?
藤口代表「監督はそういうところにあまり執着しない人なんです。固い握手をしたのでそれでいいという人だと思います。もちろん、契約についてはドイツと日本では形式が違ったりするので、最終的に弁護士などを通じて詰めているところです。ただ、それで問題が起きるということではありません。書面上のことを整えているだけです。ただ、固い握手をしたので問題はないと思っていますが、監督はいかがでしょう?」
フィンケ監督「私は2回、日本に来ました。1回目には、クラブ関係者といろんな話をしました。2回目には、さらに細かいことを詰めることができました。2回、来日して感じたのは、浦和レッズのスタッフは握手の価値を分かっている人だということです。ドイツと日本では法律的な違いもありますので、細かいところは弁護士などに頼んでやっていますが、それでも私は約束を守る人間です。そして私は正直、握手の価値を分かっていないクラブの人とは一緒に仕事をしたくないと思っています。このクラブにもし万が一、握手を交わすことについて理解していない人がいたらここでサインしようとは思いませんでした。しかし、私が2回の来日で分かったことは、このクラブには本当の意味で信用できるスタッフがいるということです。ですから私はここで監督をしようと思いました」
■監督の練習後の取材対応について。キャンプの予定については?
フィンケ監督「メディアの皆様が大切な仕事をしていて、責任感を持って仕事をしているのは理解しているつもりです。そしてこれからも、いい協力関係が作れればいいと思っています。根本的には私もコミュニケーションを大切にする人間です。もしお話しすることがあれば、毎日、お話をしたいです。ただ、練習が終わってクラブハウスを出てきてから、駐車場で車に乗る直前に、ジャーナリストの方々に囲まれるというのは質の高い仕事ではありません。クラブハウスの中で、場を設けて、1週間に2回、3回と、しっかり席に座ってサッカーについて話しながら、いろんなことにお答えできればいいと思います。クラブには優秀な広報のスタッフもいますので、何かお願いがあれば、広報の方に直接話してもらえればいいと思います。
合宿については宮崎、発音が難しいですが、最初は宮崎で決定です。2回目の合宿先についてはまだ情報は出ていません。2回目は海外で、戦術的な練習が増えることになると思いますが、どこでやるかはそれぞれの現場の指導者と話をして意見を聞いて、最終的にどこに行くかを決めたいと思います。この件は、この数日間で指導者と話をするので、あと何日かすればどこで合宿をするか、お伝えできると思います」
タンココーチ
「最後に、私の方からきちんと言わせていただきたいと思います。先程、私の過去についての話がありました。不幸な偶然の出来事ではあったのですが、事件に関しては責任を持たないといけないと思っています。当時、このような過ちを犯したことは確かです。このことに関して、私はこれからも責任を持って生きていきたいと思っています。あの事件から9年が経っていますが、それだけの年数が経っていてもこのことについて何度も何度も聞かれてきました。そして私の人生の中ではこれからも何度も何度も聞かれていくと思います。ですから今後も、当時の事件についてはしっかりと責任を持っていきたい。先程あった、薬物防止のキャンペーンなどにも積極的に参加したいと思います。フライブルグ時代にもさまざまな社会貢献をしてきましたし、浦和だけでなく、日本のどこかで、もしタイミングが合って、キャンペーンや薬物防止の活動などがあれば、喜んで参加したいです。特に若い人たちに対しては、薬物はいかによくないことであるか、そして将来的に人生を変えてしまうかもしれないということについてもいろいろと話をしたいし、指導もしていきたいと思っています。今後も真面目な人生を送っていきたいと思います」
冒頭、藤口光紀代表が、フィンケ監督と6名のコーチの名前を発表した後、同席した、新任のカルステン・ナイチェルコーチ、イブラヒム・タンココーチ、モラス雅輝コーチが挨拶しました。
藤口光紀代表
「Jリーグが1993年にスタートして今年で17シーズン目を迎えます。浦和レッズは最初から新しいスポーツ文化の構築のために参加し、これまで活動を続けてきまして、それなりの市民権は得てきたと思っています。最初の10年はチーム作りに苦労してなかなか勝てない時代がありました。10年に一度くらいはタイトルを取りたいという話もしていたことを思い出します。ただ2003年にナビスコカップで初めて勝って、その後の5年間ではカップ戦、リーグ戦、そしてアジアでもナンバーワンに上り詰めました。
しかし、昨シーズンはタイトルを取れず、やはりこれまでしゃにむにタイトルを取りたいとやってきましたが、もっと長い目で見て、レッズのサッカーとは何か、しっかりしたレッズのスタイルを構築することが大事だと、同じ目標に向かって、クラブもチームもファン・サポーターも向かっていくことが大切だと考えました。タイトルを取りたいという焦りもあったのかもしれませんが、ここで腰を落ち着けてしっかりとしたチーム作りをすることが大事であり、レッズスタイルの構築に向けて、2009年は変革の年、新たな挑戦の年と位置づけています。
そういう意味で、我々の変革に一緒に取り組んでくれるトップチームの監督というポストが非常に大事だということで、監督の選考を進めていた中でフィンケ監督に巡り会いました。
レッズの変革のために、共同作業に一緒に挑戦しようとおっしゃっていただき、監督に就任していただきました。12日から新シーズンに向けて始動しますが、その2日前にこうしてコーチングスタッフを含めて発表できることをうれしく思います。フィンケ監督は昨日、来日し、コーチングスタッフの2人は今日、来日しました。明後日から練習がスタートするにあたり、新しい指導体制を発表させていただきます」
フォルカー・フィンケ監督
「皆さんには2度目の挨拶になります。私が今シーズンから浦和レッズの監督をすることになりました。先程藤口代表からも話がありましたが、今年は改革の年でもあります。もちろん様々なトライもしていかないといけませんが、私にとっては非常に興味深い仕事ができると思っています。様々な仕事の話がこれまでにありましたが、浦和レッズの監督をすることに魅力を感じて、来日することになりました」
カルステン・ナイチェルコーチ
「浦和レッズのコーチができることを大きな誇りに思います。これからも浦和レッズのコーチ陣と一緒に仕事をしていくことで、もちろん、私も浦和レッズに様々なことをもたらすことができると思いますし、私自身もアジアの文化やアジアのサッカーなどを学べるということで、お互いにとってメリットのある仕事ができればと思います。これから浦和レッズで仕事ができることに大きな喜びを感じていますし、仕事を楽しみにしています」
イブラヒム・タンココーチ
「浦和レッズは非常に有名なクラブで、私の認識では、アジアでも最も大きなクラブの一つだと思っています。そして2年前にはAFCチャンピオンズリーグでも優勝したことがありますし、昨年については残念でしたが、国際舞台でも結果を残したクラブであることもよく存じています。このようなクラブで、質の高いコーチ陣、しかも若くてモチベーションも高いコーチ陣と一緒に仕事ができることをうれしく思います。浦和レッズでのチャレンジは非常に楽しいことになると思いますし、1年後にまた素晴らしい結果を残せたと言えるような質の高い仕事ができればいいと思っています」
モラス雅輝コーチ
「私自身は昨年の11月からチームに合流していましたが、もともとヨーロッパにいたころは日本に帰ってくることはないと思っていました。しかし、この2ヵ月間で、残念ながらメディアには出ないような、素晴らしい裏方のスタッフの方と知り合うことができ、それがクラブに残ろうと思ったもっとも大きな理由です。
それが、マテリアルのスタッフであり、メディカルのスタッフであり、残念ながら一般の方はあまりそうしたスタッフと接することはないと思いますし報道もなかなかされませんが、彼らの浦和レッズを愛している、素晴らしい仕事、1日24時間このクラブのために仕事をするプロフェッショナルな姿勢を見て、こういった仕事であるならばと、15年ぶりに日本に帰ってくることを決めました。もちろん、こうした素晴らしい指導者と仕事ができるのは楽しいことですし、同時にそうした裏方のスタッフの方々と質の高い仕事ができるというのは非常に楽しみなことだと思っています」
※フォルカー・フィンケ監督から新コーチについて
「私は監督として、トップチームのコーチ陣の構成について責任を持っていますので、3人の新コーチについてコメントをしたいと思います。ナイチェルコーチとはFCフライブルグで合計11年間、一緒に仕事をしていました。その前の3年間は私のもとで、選手としてプレーしていて、当時、私のチームはブンデスリーガに所属していました。ご存じのように、当時の東ドイツは育成部門で素晴らしい結果を残していました。ヨーロッパ選手権やワールドカップ、各カテゴリーの大会がありますが、ナイチェルコーチは東ドイツ代表として様々な大会に出場していました。東ドイツ代表としてヨーロッパ選手権でも優勝をしています。ナイチェルはセンターバックでしたが、ドイツのセンターバックとしては小さな体でした。それでも素晴らしいプレーをいつも見せていましたし、先程お話ししたヨーロッパ選手権で優勝したときのキャプテンを務めていました。ドイツのサッカー界では伝説の試合となっている、1994年に2部から上がったばかりのフライブルグが、ドイツナンバーワンのバイエルン・ミュンヘンにホームで5-1で破った試合では、フライブルグの中心選手で、センターバックとしてフル出場も果たしています。
タンココーチについて、彼は15歳のときに母国・ガーナを離れてドイツに移住しました。そしてボルシア・ドルトムントというクラブに所属し、U-19チームではドイツ選手権で2回、優勝しています。現役のときは17歳でブンデスリーガにデビューしました。それは今でも素晴らしい記録ですし、それほど若い時期にデビューする選手はなかなかいません。そしてトップチームのメンバーとしてもブンデスリーガで2回、優勝もしています。そしてUEFAチャンピオンズリーグでは、ボルシアドルトムント時代の1997年に選手の一員として優勝を果たしています。ドルトムントには2000年まで所属し、彼の素晴らしいプレーをブンデスリーガでも見ていましたので、私たちは契約が切れることが分かっていたので前もってオファーを出していました。そしてFCフライブルグに移籍することができました。フライブルグでは、ヨーロッパカップの舞台でもいいプレーを見せることができました。特に印象に残っているのが、UEFAカップの3回戦に進出したときです。当時、皆さんご存じの小野伸二選手の所属していたフェイエノールトとも対戦しました。そのときはアンラッキーな形で我々がフェイエノールトに敗れてしまいましたが、当時はフェイエノールトの一員として小野選手が試合に出場しており、こちらのクラブには選手としてタンココーチがいて、試合に出場していました。
そしてモラス雅輝コーチについて。モラスコーチはヨーロッパでずっと仕事をしていて、指導者としてしっかりとした実績を残してきました。そして、最後はオーストリアサッカー協会に所属してU-19のヘッドコーチをしていたわけですが、これほど実績を残しているコーチを浦和レッズのコーチとして招くことができたことを非常にうれしく思っています。実際には彼はオーストリアサッカー協会との契約も残っており、協会との契約について交渉が必要でしたが私自身、彼がここでコーチをすることを強く望み、協会との交渉がうまくいったことを非常にうれしく思っています。もちろん、選手とのコミュニケーション、クラブ内の交渉、特にコーチングスタッフの話し合いのときに通訳を頼むこともありますが、根本的には選手たちに様々な指導ができるコーチングスタッフの一人として、彼のことを考えています。
そしてもう一つ。皆さんには、あることをお話しさせていただきます。非常に大切なことなので真剣にお伝えしたいと思います。タンココーチの現役時代のある出来事で、過去のことが盛り返され、インターネットのいくつかのサイトなどで書かれていることがあります。ここでは正しい情報をしっかりと皆さんにお出ししたいと思います。今から9年ほど前のことですが、タンココーチが現役のころ、オランダでの友人のパーティーで差し出されたたばこに、マリファナが含まれていることをまったく知らずに、それを一度だけ吸ってしまったことで、数日後、無知によるドーピングの違反ということで、処分を受けたことが一度だけ、ありました。ドイツでもいろいろな調査がありましたが、これは完全な偶然で、意図的なことではなかったことは100%証明されています。先程も話をしましたが、彼がドルトムントでプレーしているときに、私が彼を獲得しました。獲得しようとしたそのときに事件は起きて、メディアでもドーピングで引っかかったという報道がありました。そこで、様々なチェックをしましたが、問題ないことが証明されました。ですから私も監督として、当時のタンコ選手を獲得したときにはこのことについては何も問題にしませんでした。なぜかというと無罪ということがはっきりと証明されていたからです。今回、こちらで仕事をすることになったときにも彼が優れた指導者だということは分かっていましたし、彼と一緒に日本で仕事がしたいと思っていました。ですから、今から9年前のことは私自身もまったく問題がないと思っていますし、ここで一緒に仕事ができることを楽しみに思っています。
当時、私は監督としてタンコ選手の獲得に動いていたところなので、私自身もショックを受けましたし、どこまで本当のことなのか、当時は分からないこともありましたので、私たち自身が、別ルートで彼の生活環境などのことも調べました。そして問題が発生したときに、専門家や弁護士なども含めて検証をして、その結果、彼が素晴らしい家族、生活環境で生活をしており、優れた学歴を持ち、周辺の人々からも、彼がクリーンに生活していることがはっきりと証明されました。ですから私たちとしても彼を獲得することに何の問題もありませんでした。
もちろん、ドーピングで引っかかったということがありますので、ドイツのスポーツ法廷から数ヵ月間の出場停止の処分を受けましたが、それ以外のことに関しては何も問題は起きていません。そしてその1年後には問題なく彼はガーナを離れ、ドイツの国籍を取得しました。ご存じの通り、ドイツの国籍を取ることは非常に難しいことです。にも関わらず、様々な調査を受けた上でまったく問題なく国籍を取得しました。彼は模範的なドイツ人であり、素晴らしい指導者として生活をしています。彼は素晴らしい人間であり、麻薬などとまったく関係ないということを私自身が、ここで証明します。
私たちは、何も隠すことはないと思っていますし、彼が潔白だということはドイツでも証明されています。ですから、このことで私としてはこれ以上、話すことはありません。ただ、間違った情報が流れることであったり、間違った情報を意図的に流すこと、噂がたつことに関しては非常に残念に思っています。ですから、メディアの皆様にもいま一度、このことについてここでお話しして、今後は彼の過去のことではなく、浦和レッズでいかに素晴らしい仕事をしているかということについてお話をしたいと思います。そしてこの浦和レッズというクラブが、私がタンココーチを日本に連れてきたいと話をしたときに、過去のことばかりを話すのではなく、このことについて建設的に話をしてくれました。そして最終的に何の問題もなく、日本で新しい仕事をコーチ陣の一員としてスタートできる手配をしてくれた浦和レッズに感謝をしています。
ご存じのように、薬物の乱用防止については世界で様々なキャンペーンがあります。これまで、タンココーチも私もそういったことに参加をし社会貢献もしてきました。ぜひ日本でも機会があればそうしたキャンペーンに積極的に参加して、社会的にも貢献できればいいと思っています。そのことは藤口代表にもお話して、『まったく問題ない、ウエルカムだ』と言っていただきました。彼の潔白は証明されていますし、積極的に社会のためになる活動も今後、していきたいと思います。この浦和で仕事ができることを楽しみにしています。なぜなら、質の高いコーチが集まったと思っているからです。昨シーズン、所属していた3人の日本人のコーチもいます。私は3人のコーチともいろいろな話をしました。今シーズンは日本人、ドイツ人の、質の高いコーチがそろいました。この新しいコーチングスタッフと、指導者の一つのチームとしてしっかりと仕事をして浦和レッズに貢献できればいいと思っています」
<質疑応答>
■コーチ陣の役割分担は?
フィンケ監督「先程もお話ししたように私たちは指導にあたってのチームを作り上げました。一人一人のコーチについて、はっきりとした役割分担という言葉は、ここでは使いたくないと思います。なぜなら、チームワークが必要だからです。
例えば、我々は、技術系トレーニングの専門家や、瞬発系トレーニングの専門家といった人たちで今回コーチングのチームを作り上げたわけではありません。それぞれのトレーニングに重点はありますが、一人のコーチが練習に参加できなくなったとき、専門のコーチがいないからといって他のコーチが仕事ができないということにならないようにしたいと思います。ですからすべてのプログラムの内容、重点について一人でなく二人で担当したいと思います。よりよいコミュニケーションはもちろん大切ですし、それぞれの重点を持っていることは確かです。ただ、はっきりとした役割分担というのは間違った言い方だと思います。根本的に私たちはすべての練習を公開しますので、いつでもいらしてください。そこで誰が何をやっているか、ご覧いただけると思います。
ただ、GKコーチに関しては専門的な部分があります。GKコーチがいないからといって通常のコーチがGKトレーニングをやることはありません。GKコーチはGKを育てるというはっきりとした仕事があります。それ以外で、例えばナイチェルコーチは現役時代、守備のスペシャリストでありました。福田コーチやタンココーチは攻撃のスペシャリストでした。モラスコーチや大槻コーチは指導者として実績を残し分析にも優れたコーチです。私自身も、ブンデスリーガで400試合、2部でも200試合、合計で600試合の経験があります。しっかりとしたノウハウと経験も持っています。このような質の高いコーチングスタッフがそろったことでいい仕事ができるのではないかと思います」
■ドイツでの信藤健仁チームダイレクター(TD)との話し合いについては?
フィンケ監督「以前、来日した際に信藤TDと話をしました。ただ、ヨーロッパで会ったことは一度もありません。もちろん、信藤TDがヨーロッパに来ていて、ドルトムントやフライブルグの試合を見ているのは知っていますが、私自身がヨーロッパで彼と話をしたというのは事実ではありません」
■指導する上でのモットーは?
フィンケ監督「まず、楽しむことが重要ではないでしょうか。それから、英語になりますが『NO PAIN,NO GAIN』です。選手たちが一番の喜びを感じるはずである試合に出るためには、厳しいトレーニングをしてしっかりとした準備をして場合によっては痛みを伴うようなこともやらなくてはいけません。ですから、まずは仕事があって、最終的に努力をすれば楽しみを得ることもできるでしょう。
フライブルグで一緒に仕事をしていたコーチ陣は私のモットーをよく知っていると思います。目標に向かって進む道というのがもっとも大切だと思っています。朝起きた時、目標は何なのか、そしてそこに辿り着くまでに今日は何をすべきかを考える。これを自ら理解してステップを踏むことが大切です。次の日も、その次の日も、朝起きたら、自分の目標は何なのかをしっかりと考えて、そこに向かって進むべき道をはっきりさせ、確実に進んでいくことが大切です。それと試合の後は、試合の前なのです。日曜日に試合があるとすれば、木曜日になってから『そろそろ試合がある、しっかり準備をしていこう』、こういう考えはプロではありません。重要なのは、試合が終わったらすぐに次の試合の準備を始めることです。ですから、試合の後は、すぐに試合の前なのです」
ナイチェルコーチ「私の考えとしては、プロはどんな状況でもしっかり集中して次にやるべきことをやることが大切だと思います。もちろん、サッカーの世界ですから、うまくいくときもうまくいかないときもあります。うまくいかない時間が非常に長くなる可能性もあります。それは、このクラブの指導者としては、望むことではありません。ただ、うまくいっていてもそうでなくても、自分たちの目標がどこにあるのか、それに向けてしっかりと集中して、物事を進めていくことが大切です。もちろん、様々なことについて批判もあるでしょう。ただし、そのときに私たちは建設的な批判をするべきです。そして指導者チームの中でも、選手たちの関係もそうですが、お互いにリスペクトをして仕事をやるべきです。様々なことがうまく進んでいない時期にはリスペクトを持ってはっきりといろいろなことについて話すことが難しくなることもあります。感情的にもなってしまうからです。しかし、大人の人間関係としてしっかりリスペクトを持って仲間と接することが大事なのではないかと思います。そうすれば仕事への喜びというものも感じることができるでしょう」
タンココーチ「私の一つのモットーは、99%の努力では足りないということです。いかなる状況でも100%の努力をしないといけない、99%の努力では中途半端に終わることが多いわけです。ですから、いかなる状況でも100%の集中力、100%の努力をして、目標を達成するためにステップを進んでいくことが大切だと思っています」
モラスコーチ「しっかりとコミュニケーションをとって一緒に仕事をすれば、1+1が2とか3ではなく、サッカーの世界では1+1が11になる事もあると思っています。1+1は11、それだけの結果を残すことができると思いますし、それが本当のチームプレーだと思っています」
■現在の戦力と補強については?
フィンケ監督「浦和レッズは、昨シーズンの7位という結果よりもさらに上を狙う力が備わっていると思います。そして大切なのは質の高い仕事をここですること、同時に選手たちの実力を見極めたいと思っています。まずは今、このチームに所属している選手のみでチームをスタートさせようと思っています。もちろん場合によっては、プラスアルファで選手を獲得することがあるかもしれませんが、まず、最初の考えとしては、今このクラブに所属している選手でシーズンを始めたいと思っています。そして以前もお話しした通り、もし彼らのパフォーマンスがよければ、できるだけ若手選手にもチャンスを与え、チームに刺激を与えることができればいいと思っています」
■監督の契約期間について、また、阿部勇樹選手の代表合流が遅れていることについての判断は?
フィンケ監督「1年プラス1年の2年契約ということで、ここで仕事をしたいと思っています。ただ、サッカーの世界では何が起こるか分からないですし、内容次第では長くなる可能性もあります。阿部が体調を崩したのは残念ですが、代表に行く3人とは様々な話をしました。阿部とは今日も会って話をしました。まだ100%ではないということですし、今すぐに代表に行くことはないと思いますが、数日以内に、仁賀ドクターと指導者と阿部と話し合いをして決めたいと思います。今、ここでいつ代表に行くかということについて、はっきりとお知らせすることはできません」
■クラブとして、タンココーチの過去のことについて調査は?
藤口代表「我々としても薬物は絶対に駄目だということは貫き通しています。日本でも薬物に関しては話題になりかなり敏感になっていることも確かです。最初にこの件を聞いたときに言葉だけをとらえれば非常に敏感になりました。フィンケ監督にいろいろ質問したり、我々の方でもいろいろな情報を入手しました。先程、フィンケ監督も話したように、一生に一度の過ちがあって、それがドーピング検査で引っ掛かった。そして日頃からそういったことをやっている人間ではないということはスポーツ法廷でも明確になりました。そういったいろいろな情報を入手しまして、彼が信頼できる人物であると、クラブが評価させていただきました。この件については、ドイツでも厳しくなっているという話も聞いています。日本ではそれ以上に厳しいので、我々としても慎重に情報を入手して検討致しました」
■タイトルについての思いは? それを受けて監督の目指すものは?
藤口代表「2008年は勝負の厳しさを痛切に感じた年でした。今シーズンは新たな気持ちでスタートしよう、そういう意味ではタイトルをずっと取れずにきた時期もありましたが、原点に返るためにまた新しいスタートを切るという気持ちが大きいということです。新しい指導体制で、これから質の高いサッカーをしていこうということで、それが積み重なっていけばタイトルも結果として手に入れることができると思います。
もちろん、浦和レッズは勝利が求められるチームであることは監督も分かっていると思います。我々は一つ一つを積み重ねていって結果として、そうした優勝ということにつながればいいと思っています。最初からタイトル、タイトルと言って足元をおろそかにすることなく、ステップバイステップで積み重ねてやっていくということをご理解いただければと思います」
フィンケ監督「もちろんできる限りたくさん勝利をしたいし、すべての試合に勝ちたいですが、世界のどこでもすべての試合に勝つことは不可能です。ただし、試合の前には必ず勝つという強い意志を持ってすべての試合に臨みます。今までの経験から言うと、あまりタイトルについて話をしないで準備をして、少しずつ結果を残していったほうが、タイトルに結びつきやすいということがあります。ですからここで、シーズンが始まるときに、タイトルについてあまりお話はしたくないです」
■正式な契約は?
藤口代表「監督はそういうところにあまり執着しない人なんです。固い握手をしたのでそれでいいという人だと思います。もちろん、契約についてはドイツと日本では形式が違ったりするので、最終的に弁護士などを通じて詰めているところです。ただ、それで問題が起きるということではありません。書面上のことを整えているだけです。ただ、固い握手をしたので問題はないと思っていますが、監督はいかがでしょう?」
フィンケ監督「私は2回、日本に来ました。1回目には、クラブ関係者といろんな話をしました。2回目には、さらに細かいことを詰めることができました。2回、来日して感じたのは、浦和レッズのスタッフは握手の価値を分かっている人だということです。ドイツと日本では法律的な違いもありますので、細かいところは弁護士などに頼んでやっていますが、それでも私は約束を守る人間です。そして私は正直、握手の価値を分かっていないクラブの人とは一緒に仕事をしたくないと思っています。このクラブにもし万が一、握手を交わすことについて理解していない人がいたらここでサインしようとは思いませんでした。しかし、私が2回の来日で分かったことは、このクラブには本当の意味で信用できるスタッフがいるということです。ですから私はここで監督をしようと思いました」
■監督の練習後の取材対応について。キャンプの予定については?
フィンケ監督「メディアの皆様が大切な仕事をしていて、責任感を持って仕事をしているのは理解しているつもりです。そしてこれからも、いい協力関係が作れればいいと思っています。根本的には私もコミュニケーションを大切にする人間です。もしお話しすることがあれば、毎日、お話をしたいです。ただ、練習が終わってクラブハウスを出てきてから、駐車場で車に乗る直前に、ジャーナリストの方々に囲まれるというのは質の高い仕事ではありません。クラブハウスの中で、場を設けて、1週間に2回、3回と、しっかり席に座ってサッカーについて話しながら、いろんなことにお答えできればいいと思います。クラブには優秀な広報のスタッフもいますので、何かお願いがあれば、広報の方に直接話してもらえればいいと思います。
合宿については宮崎、発音が難しいですが、最初は宮崎で決定です。2回目の合宿先についてはまだ情報は出ていません。2回目は海外で、戦術的な練習が増えることになると思いますが、どこでやるかはそれぞれの現場の指導者と話をして意見を聞いて、最終的にどこに行くかを決めたいと思います。この件は、この数日間で指導者と話をするので、あと何日かすればどこで合宿をするか、お伝えできると思います」
タンココーチ
「最後に、私の方からきちんと言わせていただきたいと思います。先程、私の過去についての話がありました。不幸な偶然の出来事ではあったのですが、事件に関しては責任を持たないといけないと思っています。当時、このような過ちを犯したことは確かです。このことに関して、私はこれからも責任を持って生きていきたいと思っています。あの事件から9年が経っていますが、それだけの年数が経っていてもこのことについて何度も何度も聞かれてきました。そして私の人生の中ではこれからも何度も何度も聞かれていくと思います。ですから今後も、当時の事件についてはしっかりと責任を持っていきたい。先程あった、薬物防止のキャンペーンなどにも積極的に参加したいと思います。フライブルグ時代にもさまざまな社会貢献をしてきましたし、浦和だけでなく、日本のどこかで、もしタイミングが合って、キャンペーンや薬物防止の活動などがあれば、喜んで参加したいです。特に若い人たちに対しては、薬物はいかによくないことであるか、そして将来的に人生を変えてしまうかもしれないということについてもいろいろと話をしたいし、指導もしていきたいと思っています。今後も真面目な人生を送っていきたいと思います」