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PICK UP PLAYER|山根視来

J1リーグ通算198試合目となるピッチに入ったのは、72分だった。それは同時に、山根視来が浦和レッズの選手として初めて埼玉スタジアムのピッチに立った瞬間でもあった。

「矢印が、前に前に、後ろに前に、となっていたので、相手陣内でプレーして3人、4人が絡めば崩せる」

9月13日に行われたファジアーノ岡山戦。ベンチで戦況を見つめながらそう考えていた山根は、ピッチに入ったわずか5分後、山根は相手2人の間を突破しようと試みてコーナーキックを得る。

すると、両手を下から勢いよく上げる仕草を何度も繰り返し、ゴール裏のファン・サポーターにさらなる声援を求めた。

「あれだけゴール裏に人数がいて、あの人たちの前でプレーができる。強い気持ちで一緒に闘ってもらっている。そして声量を上げてもらえれば、相手にとってすごくプレッシャーになると思いました」

その後も積極的に攻めに出た。90+3分には相手の背後を突きながらゴールライン手前でスピードが落ちる絶妙なパスを送ってチャンスメーク。その直後には、立て続けにシュートを放つ流れの中、パス&ゴーを選択して相手の目線を変える冷静さも見せた。

だが、試合の感想を問われれば、真っ先に後悔が口をつく。

「最後でしたし、自分のサイドからやられたので、つぶしきれていたら何も起こらなかっただろうという反省があります。チームとして、という部分はありますけど、僕はプレーする機会のあった選手なので、やっぱり悔しい気持ちはあります」

90+11分、山根は果敢にボールを奪いにいったものの、防ぎ切ることができなかった。結果としてチームは失点を喫し、勝ち点を逃した。

「チームを勝たせるプレーができなかった」

自身がピッチに立った試合での加入後初勝利を逃し、背番号6は唇を噛む。それでも、岡山戦は“前進“を示した一戦となった。

浦和レッズに合流した際にはコンディションが万全ではなく、MUFGスタジアムで行われた明治安田J1リーグ 第3節 FC町田ゼルビア戦で加入後初出場を果たしたあとも「よくない状況」になったが、いまは「日本に帰ってきてから一番いい状態」になっているという。

これからますますコンディションは上がっていくだろう。これまでは別メニュー調整も多く、「あまり一緒に練習をできていなかった」が、全体トレーニングを重ねていけば周囲との相互理解も進み、コンビネーションも向上するはずだ。

何より、山根は周囲に影響を与えられる選手である。川崎フロンターレでも共闘した瀬古 樹は言う。

「山根選手の練習に取り組む姿勢や一つひとつにこだわるところは、チームメートになって最初にリスペクトしたところです。試合になったときにそこでチームを勝たせる、得点に関われる、チームのために身体を張れる、そういう彼の志は本当に勉強になりました」

山根は川崎在籍時、細部に強くこだわる選手がチーム内で浮くのではなく、むしろ細部にこだわらない選手が浮くような、厳しさのある雰囲気をチーム内に求めていた。優勝を経験した選手が少しずつチームから離れる中、山根は「居場所がなくなるくらい嫌われてもいい」と思いながら、チームメートに厳しく指摘する役割を担った。その結果、川崎でのラストシーズン、最後の最後で天皇杯のタイトルを勝ち獲った。

岡山戦も当然、勝ちたかった。ただ、負けたからこそ感じた思いもある。

「ファン・サポーターのみなさんの熱量は、唯一無二のものだと思います。このスタジアムで自分が90分出て、勝ってみんなを笑顔にしたいなと、負けて改めて思いました」

まずは19日の東京ヴェルディ戦で勝利するため、いまできることのすべてを尽くすのは間違いないだろう。さらにその先には約2週間のリーグ中断期間がある。コンディションが上がってきた山根にとっては、さらに状態を上げ、チームと合わせる時間も取れる良い期間になるはずだ。

「浦和レッズが大きな変化をしようとしているタイミングで、自分もその歴史を作る一人になりたい」

そう話す山根が本力を発揮していくのは、これからだ。

(取材・文/菊地正典)

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