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PICK UP PLAYER|肥田野蓮治

ピッチの外で接する肥田野蓮治は、あどけなさが残る22歳の好青年だ。ただ一度、ピッチのなかに入れば表情は一変し、虎視眈々と獲物を仕留めようとするスナイパーに見える。
そのギャップに、こちらはやられるとともに、ストライカー然とした面構えに引き込まれる。

この日もそうだった。
9月29日、ルヴァンカップ2回戦に臨んだ浦和レッズは、39分に先制したものの、62分、69分とカターレ富山にゴールを許して逆転される。
肥田野に声が掛かったのは、72分に小森飛絢の得点で2-2に追いついたあとの81分だった。
タッチライン際でウォーミングアップをしていたときから「早く出してくれ」と思っていた彼は、両拳を握って指を鳴らすと、瀬古 樹に変わってピッチに入る。
その目はすでに鋭かった——。

交代からわずか2分後の83分だった。左サイドにポジションを移した小森からパスを受けた安居海渡が相手を1人交わして顔を上げると、前線に鋭いスルーパスを通す。そのパスに合わせて動いた肥田野は、DFの裏でボールを受けて抜け出すと、左足でゴール右にシュートを流し込んだ。

「曺さん(曺 貴裁監督)からも、相手の背後というところは求められていた。10分あれば1本は来ると思っていたので、その1本に集中して、絶対に決めるという気持ちで試合に入りました」

待望の今シーズン初ゴールは、チームを3回戦へと導く決勝点になった。

「やっとという感じです」

ようやく残した結果には、そこに至るまでの悔しさ、葛藤がにじんでいた。
特別指定選手だった2025年のファジアーノ岡山戦(J1リーグ 第37節)で初ゴールを挙げたストライカーは、続く百年構想リーグでチーム最多となる4得点を挙げた。さらなる飛躍を誓って迎えた2026/27シーズンだったが、アウェイで迎えたリーグ開幕のガンバ大阪戦でピッチを踏むことはできなかった。

ホーム開幕となったサンフレッチェ広島戦では、66分から途中出場するも、チームは1-4で敗戦。「何もできなかったので、モヤモヤしました」と、悔しさを隠せなかった。
第3節のFC町田ゼルビア戦でもチャンスをつかんだが、その試合で負傷する。「自分的にはやれるという感触が得られた試合」で、戦線を離脱することになった。
加えて、その後、3連敗していたチームは3連勝する。チームの勝利を喜びながらも、スタンドから試合を眺めて、再び悔しさを覚えていた。

「それでも、やっぱり自分が試合に出たらやれるという自信はあったし、常にチームが良い状態や流れでいくことはないだろうと思っていたので、そういうときに、いかに自分が力を発揮できるかを考えて準備するだけだと思っていました」

悔しさを噛み締めながら、肥田野が目を向けたのは「自分にできること」。すなわち「自分の長所をチームにどう還元するか」だった。

「できないことをできるようにしようとすると、まず自分を否定するところから入ってしまうじゃないですか。それは個人的にもあまり良くないし、自分らしくないと思いました。だから、自分がチームのなかで最も突出しているものを発揮する。それがメンタル的にもプラスになると思いました」
自分を否定することなく、自分の武器を信じた。

「1対1では絶対に負けない自信があるので、そこと、前を向いてボールを持ったときの推進力。その二つはどの相手と対峙しても負ける感じはしない」
決して課題に目を向けなかったわけではない。決してチームへの貢献、献身を意識しなかったわけでもない。それでも、ぶれることなく自分の強みを貫こうとしてきた。その信念が、メンタルを前向きに保つ姿勢にもつながっていた。

「心と身体。この二つがマッチしていないと、試合では良いプレーはできないと思う。怪我をしていた時期に、スタンドから試合を見ていても、やっぱりメンタルって大事なんだなと思うシーンは多かった。逆に相手に心と身体がマッチしていない選手がいたら、試合に入れていない感じに見えましたから」

富山戦を前に、そう言って現在地について語ってくれた彼は、こうも話していた。

「だから、絶対にこのまま続けていけば、チャンスは来るなって思っています。そこで余計なことを考えずに、自分にできることをしっかりやろう、と。そうすればチャンスは来るし、そのチャンスをつかめる自信もあります。そこで結果を残せば、またスタメン争いに加わっていけるとも思っています」

まさに、その決意をプレーで、結果で体現した富山戦だった。
試合を迎えるその日、バスに揺られ、スタジアムが見えてくると、22歳の青年は自然と身体に力がみなぎってくるのを実感するという。

「俺がやってやるという感じは自ら出していますね。埼玉スタジアムに向かうバスがスタジアムに入る瞬間に、自然とスイッチが入る感じがあるんです」

ホームである埼玉スタジアムは、彼の闘志をかき立てる舞台である。場所は違えども、天皇杯3回戦で大宮アルディージャと闘うNACK5スタジアム大宮でも同じだろう。
敵地へと乗り込むバスがスタジアムに入ったそのとき、肥田野蓮治はゴールを狙うスナイパーになる。

(取材・文/原田大輔)

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