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PICK UP PLAYER | オナイウ阿道
陽が沈みかけるMUFGスタジアムには、最後までレッズのゴールを信じる歌声が響いていた。0-1のまま試合終了の笛を聞くと、日本代表経験を持つ30歳は唇をかんだ。3月14日の東京ヴェルディ戦。1点を追う後半開始から前線に投入された交代選手のミッションは言わずもがな。
「まずは1点を返したかったんですけど、それができずに悔しいです。FWは結果が一番、大事なので。たとえ難しい試合で何もやらせてもらえなくても、1点を取ればいい。ゴール、アシストの数字にはこだわっていきたいです」
オナイウ阿道の言葉には、ストライカーのプライドがにじんだ。実質4シーズンにわたって活躍したフランスリーグでは1部・2部リーグ通算で31ゴールをマーク。完全移籍で加入する前に所属したドイツ2部の1.FCマクデブルクでは出場機会に恵まれず、公式戦から約半年間、遠ざかったが、そのポテンシャルは本物だ。本人が気にしていたゲーム勘も戻りつつある。古巣のレッズに復帰し、3試合目。自身の状態を冷静に見つめていた。
「チームの結果は負けなので、攻撃陣に求められているものは足りなかったですが、個人の感覚としては前節よりも良くなっています」
ゴール以外の仕事に目を向けると、東京V戦のパフォーマンスはこれまでの2試合とは明らかに違った。強靭なフィジカルを生かし、前線でどっしり構えてボールをキープしたかと思えば、持ち前の機動力も発揮。積極的に裏のスペースへ走り、自陣からの長いパスを呼び込んでいた。ボランチの安居海渡は、その効果を口にする。
「後半は背後のスペースを使えるようになり、相手のラインを押し下げることもできました。そうなれば、たとえ(敵陣で)ボールを奪われても、こっちはより高い位置から守備ができます。阿道君は(体が)強くて、前でボールを収めることができますし、裏抜けもしてくれますから」
55分には根本健太からのスルーパスに抜け出すと、鋭い反転で相手をかわし、ゴールを狙った。ペルナティエリア内での切れの動きは、得点を量産していたフランスリーグ時代を彷彿とさせるもの。89分にはサイドに流れて起点をつくり、チャンスを創出している。相手に体をぶつけられても、ブレない体幹の強さがある。パワフルなプレーは目立つものの、本人が心砕くのは周囲との連係だ。
「選手たちの個性はみんな違うので、僕はどちらかと言えば、周りに合わせるタイプ。その中で僕が1枚はがせれば、相手の守備バランスは崩せると思います。そういうこともできればいいなと」
個人で局面を打開し、得点を重ねてきたタイプではない。カギとなるのは、ゴールに直結するコンビネーションの向上。54分にはマテウス サヴィオからのクロスボールに反応し、得点機会をつくりかけたものの、あと一歩が届かなかった。そこは、まだ改善の余地がある。
「最後のアタッキングエリアでのクオリティー、選手同士のイメージ共有がもっとできればチャンスは増えていくし、ゴールにつながるシーンも出てきます」
新しい環境への順応は地道に進めている。日ごろの練習からチームメートたちとのコミュニケーションを欠かさない。個人だけではなく、全体にも目を向ける。チームの勝利、レッズの成功から逆算しながら行動している。同じポジションを争うルーキーの肥田野蓮治にも、自ら進んで丁寧なアドバイスを送るのもそのためだ。ゴール前の細かいポジショニングなど、身振り手振りで説明する。慣れない1トップで試行錯誤を繰り返す22歳は、しみじみと話していた。
「自分自身(オナイウ)の経験を交えて、教えてくれるので、本当にありがたいです」
肥田野の言葉を伝え聞いても、オナイウは表情をさして変えることはなかった。若い選手に手を差し伸べるのは、当たり前の仕事と言わんばかり。自身も若手時代は思い悩んだ。ジェフユナイテッド市原・千葉からレッズに加入したのはまだ21歳のときだった。2017年当時は出場機会がほとんどなく、リーグの出場も1試合のみ。AFCチャンピオンズリーグ優勝はピッチの外から眺め、タイトルを手にした実感を持てなかったという。あれから9年。すっかり立場も変わった。
「同じポジションの選手とコミュニケーションを取るのはすごく大事だと思っています。それが蓮治のためになっているのであれば、いいですね」
プロ13年目の30歳。個人の数字はもちろんのこと、豊富な経験を持つプレーヤーの一人として、積極的にチームを支える役割も担うつもりだ。加入会見で話したことは決して建前ではない。
「練習のなかで若い選手たちを良い方向に向かわせる雰囲気をつくれる選手になりたい。それもできると思っています」
背番号45の存在感は、徐々に増している。3月18日の柏レイソル戦に向けても、すぐに前を向いていた。東京V戦に続き、また同じ3バックのシステムを採用するチーム。苦手意識を持たずにチームメートと話しながら、打開策を見いだしていくという。
「空いてくるスペースは必ずあります。次はホームで闘いますし、ファン・サポーターの前で勝ち点3を取れるようにしたいです」
淡々とした口調ながら、言葉には力がこもる。移籍後初ゴールへの期待も高まるばかり。いまから12年前、プロの公式戦初ゴールを決めたのも柏だった。縁起が良いに越したことはない。
(取材・文/杉園昌之)
「まずは1点を返したかったんですけど、それができずに悔しいです。FWは結果が一番、大事なので。たとえ難しい試合で何もやらせてもらえなくても、1点を取ればいい。ゴール、アシストの数字にはこだわっていきたいです」
オナイウ阿道の言葉には、ストライカーのプライドがにじんだ。実質4シーズンにわたって活躍したフランスリーグでは1部・2部リーグ通算で31ゴールをマーク。完全移籍で加入する前に所属したドイツ2部の1.FCマクデブルクでは出場機会に恵まれず、公式戦から約半年間、遠ざかったが、そのポテンシャルは本物だ。本人が気にしていたゲーム勘も戻りつつある。古巣のレッズに復帰し、3試合目。自身の状態を冷静に見つめていた。
「チームの結果は負けなので、攻撃陣に求められているものは足りなかったですが、個人の感覚としては前節よりも良くなっています」
ゴール以外の仕事に目を向けると、東京V戦のパフォーマンスはこれまでの2試合とは明らかに違った。強靭なフィジカルを生かし、前線でどっしり構えてボールをキープしたかと思えば、持ち前の機動力も発揮。積極的に裏のスペースへ走り、自陣からの長いパスを呼び込んでいた。ボランチの安居海渡は、その効果を口にする。
「後半は背後のスペースを使えるようになり、相手のラインを押し下げることもできました。そうなれば、たとえ(敵陣で)ボールを奪われても、こっちはより高い位置から守備ができます。阿道君は(体が)強くて、前でボールを収めることができますし、裏抜けもしてくれますから」
55分には根本健太からのスルーパスに抜け出すと、鋭い反転で相手をかわし、ゴールを狙った。ペルナティエリア内での切れの動きは、得点を量産していたフランスリーグ時代を彷彿とさせるもの。89分にはサイドに流れて起点をつくり、チャンスを創出している。相手に体をぶつけられても、ブレない体幹の強さがある。パワフルなプレーは目立つものの、本人が心砕くのは周囲との連係だ。
「選手たちの個性はみんな違うので、僕はどちらかと言えば、周りに合わせるタイプ。その中で僕が1枚はがせれば、相手の守備バランスは崩せると思います。そういうこともできればいいなと」
個人で局面を打開し、得点を重ねてきたタイプではない。カギとなるのは、ゴールに直結するコンビネーションの向上。54分にはマテウス サヴィオからのクロスボールに反応し、得点機会をつくりかけたものの、あと一歩が届かなかった。そこは、まだ改善の余地がある。
「最後のアタッキングエリアでのクオリティー、選手同士のイメージ共有がもっとできればチャンスは増えていくし、ゴールにつながるシーンも出てきます」
新しい環境への順応は地道に進めている。日ごろの練習からチームメートたちとのコミュニケーションを欠かさない。個人だけではなく、全体にも目を向ける。チームの勝利、レッズの成功から逆算しながら行動している。同じポジションを争うルーキーの肥田野蓮治にも、自ら進んで丁寧なアドバイスを送るのもそのためだ。ゴール前の細かいポジショニングなど、身振り手振りで説明する。慣れない1トップで試行錯誤を繰り返す22歳は、しみじみと話していた。
「自分自身(オナイウ)の経験を交えて、教えてくれるので、本当にありがたいです」
肥田野の言葉を伝え聞いても、オナイウは表情をさして変えることはなかった。若い選手に手を差し伸べるのは、当たり前の仕事と言わんばかり。自身も若手時代は思い悩んだ。ジェフユナイテッド市原・千葉からレッズに加入したのはまだ21歳のときだった。2017年当時は出場機会がほとんどなく、リーグの出場も1試合のみ。AFCチャンピオンズリーグ優勝はピッチの外から眺め、タイトルを手にした実感を持てなかったという。あれから9年。すっかり立場も変わった。
「同じポジションの選手とコミュニケーションを取るのはすごく大事だと思っています。それが蓮治のためになっているのであれば、いいですね」
プロ13年目の30歳。個人の数字はもちろんのこと、豊富な経験を持つプレーヤーの一人として、積極的にチームを支える役割も担うつもりだ。加入会見で話したことは決して建前ではない。
「練習のなかで若い選手たちを良い方向に向かわせる雰囲気をつくれる選手になりたい。それもできると思っています」
背番号45の存在感は、徐々に増している。3月18日の柏レイソル戦に向けても、すぐに前を向いていた。東京V戦に続き、また同じ3バックのシステムを採用するチーム。苦手意識を持たずにチームメートと話しながら、打開策を見いだしていくという。
「空いてくるスペースは必ずあります。次はホームで闘いますし、ファン・サポーターの前で勝ち点3を取れるようにしたいです」
淡々とした口調ながら、言葉には力がこもる。移籍後初ゴールへの期待も高まるばかり。いまから12年前、プロの公式戦初ゴールを決めたのも柏だった。縁起が良いに越したことはない。
(取材・文/杉園昌之)
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