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PICK UP PLAYER|早川隼平

末恐ろしい20歳である。武器は強靭なフィジカル能力でも、並外れたテクニックでもなく、目には見えにくい。プロ4年目を迎える早川隼平は、チームの現状を現実的に分析し、深く洞察している。今季、2節のサンフレッチェ広島戦では1点を追う60分から途中出場。ゲームの流れは変えられなかったものの、ピッチの上で感じ取ったものがある。

「失点はサッカーにつきものですが、時間帯が問題。立ち上がり、前後半の終了間際はチーム全体で意識を共有しないといけない。曺(貴裁)さんが掲げる(戦術とパッションの)“ハイブリッド”のスタイルは、少しの時間で完成するとは思っていません。もちろん、それでも勝っていく必要があるので、落としどころを見つけないといけない」

フォーカスしているのは、チーム全体を機能させることだ。そのなかで自身の果たすべき役割を考えている。状況を見極めて、あえてワンテンポ遅らせるのも仕事。冷静なゲームコントロールである。積極果敢に前へ仕掛けていくサッカーを志向しているが、それがすべてはない。ディフェンス面も同様だ。前線からの守備は、判断が問われるという。

「ファーストディフェンダーが、どれだけ行けるかに懸かっています。ボールホルダーへの寄せ方で、周りのポジションも変わってくるので。疲れてアラート(警戒態勢)の抜けた状態からプレスが始まると、大きなズレを生じてしまう。前が行ける想定で後ろも動けば、一発で剥がされる可能性もあります。当然、プレスに行けない状況もある。最初にプレスに行く選手も、周りの選手も、それぞれが集中力を欠かさずに準備し、状況を見て判断しないといけない」

一丁目一番地のプレスは諸刃の剣。連動しなければ、たちまちピンチを招いてしまう。早川はエラーが起きる現象を頭で整理した上で練習に臨み、そこで疑問が生じれば、曺貴裁監督に遠慮なく意見を述べる。トレーニングメニューの前向きな改善案も提示する。それで関係がぎくしゃくすることはない。

「戦術が浸透するまでには時間が必要。キャンプと少しの時間だけでは足りないです。シーズンが開幕すれば、次から次に試合はきます。この短いサイクルで、どのようにチームをつくっていくのか。密にコミュニケーションを取りながら、進めていきたいと思っています」

20歳の思考回路とは思えないほど、全体を俯瞰(ふかん)している。3年前まで制服を着た高校生だったのが、嘘のようである。17歳4ヵ月で公式戦に初出場し、がむしゃらに走り回っていたのも今は昔。すぐにチームにフィットしてみせた。同年の2023年には史上最年少の17歳11ヵ月でYBCルヴァンカップのニューヒーロー賞を受賞した。精度の高い左足のキックで好機を演出しながら自らもゴールを狙うが、それだけではない。優れた戦術眼を持ち、指揮官の求めることを理解する能力に長けている。途中出場しても中盤で攻守のバランスを取り、チームを機能させる潤滑油のような存在になっている。客観的に自己分析も言い得て妙だ。

「周りを生かして、自分も生きるのが持ち味だと思っています。特長がないのも特長」

リーグでは先発出場の機会が限られているなか、8月26日に浦和駒場スタジアムで開催される天皇杯2回戦は大きなチャンスかもしれない。地道に経験を積み重ね、プレービジョンは広がってきた。昨年、ボランチを経験し、長短を織り交ぜたパスにも磨きがかかっている。

長い時間、ピッチに立てば、また違うプレーも見せてくれるはず。たとえ対戦相手が大学生でも、気を抜くこともないだろう。むしろ、この一戦でチーム内の序列を少しでも変えるきっかけにしたい。

「出場時間がもっと伸びてくれば、周りの選手たちにも影響力を与えていけるかもしれないです。そこは自分次第なのかな、と思います」

目指すところは、ピッチのオーガナイザー。曺 貴裁監督はこれまで率いてきたチームでも若手をリーダーに抜擢し、育ててきた。変革期にあるレッズで大きく台頭するかもしれない。

(取材・文/杉園昌之)

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