ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2009. 8.11 Vol.63
VOICE INDEX
「Talk on Together 2009」を開催
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「Talk on Together 2009 〜第1部〜」
▼進行:浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム(MDP) 清尾 淳氏
▼出席者:橋本光夫代表 信藤健仁チームダイレクター(TD)


PHOTO橋本代表:本日は天候が非常に不安定な中をお越しいただきまして、誠にありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。早速ですが、私の方からクラブ、チームの現況を報告し、経営の基本スタンスについてお話をさせていただきたいと思います。
8月2日の埼玉スタジアムでの清水エスパルス戦は、連敗の中で迎えたホームゲームでした。残念ながら勝利を収めることはできませんでしたが、この試合でスタジアムへ駆けつけてくれた多くのファン・サポーターの皆様の「Pride of URAWA」のロングコールは、私に改めて浦和レッズというクラブの位置づけと、ファン・サポーターの皆様の熱い思いを認識させ、私自身の責任の重さを痛感させるものでした。気が付くとこの試合中、私自身は用意されたシートに座っていることができずに、2時間、立ったままでピッチを見つめ、選手のワンプレーワンプレーを祈るような気持ちで見つめておりました。
私自身は浦和レッズに来て3ヵ月が過ぎましたが、浦和レッズを支援してくださっている多くのパートナーの皆様への表敬訪問、あるいはスタジアムでのファン・サポーターの皆様との会話を通して、改めてレッズを支えるたくさんの人々のパワーを感じています。特に冒頭に申し上げたスタジアムの声援は、ピッチ上の選手だけではなく、「浦和レッズ」というクラブに対するサポートでもあり、私自身の背中を押してくれる温かい激励であると受け止めております。同時に、4月の就任会見で、「浦和レッズはより地域に根差し、地域のシンボルを目指す努力を続けていくべき」とさせていただいた方向性が間違っていないことを確認できた3ヵ月でありました。浦和レッズが地域や、ファン・サポーターのためにあり、地域の公共的な存在として、地域に活力を与え、世界に「浦和」を発信することができるよう、微力ながら役立ちたいと考えておりますので、引き続き皆様のご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。
皆様から暖かいサポート、激励を受けながら、最近、新聞報道やクラブのホームページを通じて届けられるメッセージの中で、スタジアムでの運営に関する問題や、選手の移籍問題などでご心配をおかけしていることを、高いところからでありますが、深くお詫びを申し上げます。
本日は、浦和レッズの現況や、チームの現況と今後について、信藤チームダイレクター(TD)やフィンケ監督も交えて、皆様へ直接お伝えできる絶好の機会と考えております。後ほどTD、監督から、チームに関する詳細の話をさせていただきますが、事前に皆様からお寄せいただいたご質問やご意見への回答を含めて、私からクラブとチームの現況と、経営に関する基本スタンスについてお話をさせていただきます。
最初にチームの現況ですが、昨年の反省を踏まえ、今シーズンはチームマネジメント体制の見直しを踏まえ、信藤TD、フィンケ監督を迎え、新たに迎えた「レッズスタイル」「強くて魅力あるチーム」「人もボールも動く夢のあるフットボール」の構築元年と位置付けてスタートを切っております。ピッチ上の変化については感じ取っていただいていると思っていますが、チームの改革、レッズスタイルの構築は一朝一夕でできるものではなく、ファン・サポーターの皆様には、勝敗の結果にとらわれることなく、戦術の浸透などの過程を暖かく見守ってほしいというお願いを、就任時にも申し上げました。従って、シーズン当初から言われているとおり、今シーズンは「数値ノルマ」は課していないのが現状であります。「数値ノルマ」はありませんが、もちろん「勝ち」にはこだわります。可能性のある限り、一つでも上を目指しますし、優勝を目指しまして、日本・アジアでも随一のクラブになる目標を、いささかも変更しているわけではありません。もっとも重要なことは、直近の試合で勝つことではなくて、「レッズスタイル」の構築を目指すという年初に設定した軸が、ぶれることがあってはならないということです。
繰り返しますが、浦和レッズは、強くて魅力のあるチーム作りを続けます。私と、監督とTDの三者で、チームの基本的なことについて確認する、協議の場を設けてチームマネジメントを行なっております。言葉の問題、メディア対応などで、試行錯誤している問題はありますが、必要な修正を加え、今後もフィンケ監督、信藤TDとのコミュニケーションを取り、チームをサポートしていく覚悟でおります。 例えば、アレックス選手の移籍についても、三者で協議し、最終結論に至っております。本人の希望を考慮すると同時に、本人にとって、よりベターなオファーとなるよう、信藤TDが名古屋グランパスサイドと交渉し、フィンケ監督の意見も聞き、最終的には三者で合意した上で、移籍を決定しました。アレックス選手には長年レッズで活躍していただいており、寂しい部分はありますが、本人の希望がかなったものであり、ぜひ新しい天地で活躍してほしいと期待しております。
次に皆様から、「補強」について色々ご意見をいただいておりますので、このことについてお話をさせていただきたいと思います。クラブ全体の経営状況は、世界的な経済環境の悪化という影響もあり、非常に厳しい環境となっておりまして、収入は昨年と比べ、残念ながら若干減少する見通しであります。収支面では前年並みの確保を目指しておりまして、現在、クラブスタッフ一丸となって、さらなる収入の増大と、徹底的な費用の抑制に取り組んでいるところであります。そのような環境の中にあって、チーム強化費は前年並みを確保し、減少させていないのが実情でございます。現時点で残されている予算には限りがございますが、予算の枠内で、選手補強に関する「金庫」は開けられていると理解をしていただきたいと思います。
例えば、ヨーロッパでプレーする代表クラスの選手を獲得するということは、確かに難しい部分がありますが、「レッズスタイル」の構築に必要な、戦力アップにふさわしい選手の獲得に関する検討は、現在もTDが中心になって継続しているとご理解をいただきたいと思います。
PHOTO今、チームの運営の部分で、クラブの経営状況について若干触れましたが、収入面で最も大きなウエートを占める入場者数の状況について、先般新聞報道がなされましたので、簡単に現在の状況について皆様にご報告申し上げます。2009年度の入場者数は、8月2日終了時点で10試合を終えて、1試合平均4万4,652人です。この段階で、昨年はまだなかった駒場スタジアム開催試合が1試合含まれております。昨年の同時期では4万9,809人であり、マスコミの報道ではこの数値を比較し、1試合平均5,000人減という報道がなされております。埼玉スタジアムでの開催試合の平均で見ますと、1試合平均2,282人減っているというのが現在の状況であります。入場者の減少につきましては、さまざまな要因が考えられますが、「強くて魅力あるチーム」と「レッズワンダーランド」作りが必要不可欠と考えております。「WONDERシート」などの新しいシートの提案・発売や、シーズンチケットを保有いただいている皆様の来場履歴の分析などにも着手しておりますが、ホスピタリティ向上に向けた施策について、さらなる検討を継続していきたいと考えております。
就任以来、チームの重要性、ホームタウンの重要性、経営基盤の強化の三点を掲げ、組織の在り方を検討してまいりましたが、去る8月1日付けで組織の改正を実施いたしましたので、簡単に皆様にご紹介をいたします。
まず一つ目のトップに関しましては、トップと、ユース・ジュニアユースの結び付き、連携を強化するために、ユース・ジュニアユースをTDの下に置くことといたしました。合わせて、スカウト部門もTDの下に入れて、TDの役割を明確にいたしました。
二つ目のホームタウンの推進に関しては、地域での取り組み強化をさらに推進するため、新たにホームタウン推進部門を新設し、この中に講演会や、地元商店街との連携を図るホームタウン活動、レディース活動、ハートフルクラブ活動、そしてレッズランドの4機能を集約いたしました。これら4つの機能は、浦和レッズが地域に根差すために、中軸となって活動する必要がある業務と考えております。
三つ目の経営基盤の強化に関しては、営業力の強化を図ること、特にマネジメント機能の強化を図ることが必要と判断し、営業部門を営業1部と営業2部に分割いたしました。営業1部はパートナー担当で、地域を初めとする企業の皆様とのコミュニケーションを通じて、パートナーとのお付き合いをさらに深めていくつもりです。営業2部はマーチャンダイジング、グッズ担当で、独立させる形を取ることでファン・サポーターの皆様に親しまれ、喜ばれるグッズの企画・開発・販売を迅速に実施できるように組織改正を行ったものでございます。
次に、いろいろなご心配をおかけしております、トラブルに関連して若干のご報告をさせていただきます。埼玉スタジアムでのテレビクルーとサポーターとの暴力事件や、アウェイ戦でのサポーターの横断幕による広告看板を覆う事件が発生いたしました。いかなる場合でも、スタジアムで決められているルールを破ることや、暴力は許されないということを再確認したいと思っております。テレビクルーとサポーターの事件に関しては、サポーターの大切な旗が破れたことが発端ではありますが、開催者として、スタジアムの設営面や、トラブル発生後の対応面で不十分な点もあり、責任を感じており、フジテレビ、ファン・サポーター、関係各位には、改めて心からお詫びを申し上げます。事件は警察で調査中であり、最終的な事実関係は正確に把握できておりませんが、再発防止の具体的アクションは、既に7月からスタジアムにて実施しております。本件に関しましては、6月13日にトラブルが発生した時点から、クラブは事実関係の調査を行うとともに、フジテレビを初め、Jリーグ等の関係各位にも報告し、粛々と改善を図ってきております。事件後、すぐにフジテレビから警察に被害届が提出され、捜査にかかわる重要な事項となったため、発表は控えておりました。今後は、捜査の進展を見守りつつ、サポーターとも話し合いをした上で、対応を検討していくつもりでございます。
7月にいくつかの新聞にて、「相手サポーター歓迎」という報道が出たことを受けて、ホームページ上で説明をさせていただいております。確かに、モンテディオ山形戦のNDソフトスタジアムでの街のホスピタリティは地域の特徴を存分に示していたと思いますが、それぞれのクラブの歴史、文化、地域状況が異なり、それが浦和レッズに適用できるとは考えておりません。
日本のスポーツの中でも、Jリーグの最大の特徴はホームタウン制であり、ホーム&アウェイでの戦いが、多くのファン・サポーターを育ててきたと認識をしております。浦和レッズのスタジアム内においては、「レッズワンダーランド」を、今後も徹底的に追い求めるし、これが浦和レッズの最大の強みの一つと理解しております。「レッズワンダーランド」はスタンドに多くのファン・サポーターが詰めかけ、真っ赤になって選手と一緒に戦うことにより実現し、そこで感銘や、感動や、勝利への執念が芽生えると考えております。埼玉スタジアム周辺のいわゆる美園エリアも「All Come Together」などの取り組みを通じて、関係者の多大な協力も得ながら、赤く染まってきました。これも「ワンダーランド」の一部と考えております。一方、スタジアムの安全という切り口では、相手サポーターにもレッズ側と同様のホスピタリティを行なうべきで、公平な安全の提供という意味で、相手サポーターへのもてなしは必要だと考えております。
例えば、真夏の暑いときに、アウェイ側にも日陰や、暑熱対策が必要であり、もてなすべきであると考えております。ホスピタリティの向上が、新しいファンを生み、リピーターを増やし、入場者数の増大につながると考えているというのが、発言の真意でございます。
最後になりますが、就任以来三ヵ月が過ぎ、私自身がこの間に感じたことや、クラブの現況についてお話をさせていただきました。サッカーに未経験で、プロスポーツの知識もなく、長年メーカーで育った私に対して、浦和レッズの将来を不安視するという多くの声も聞いております。三ヵ月間だけではありますが、先輩たちが築き上げた浦和レッズの大きさと、存在感を認識させていただきました。皆様の声に真摯に耳を傾けながら、浦和レッズの発展のために尽くしたいというのが、今の私の素直な気持ちでございます。2007年からの三ヵ年の中期計画、「AAA(トリプルA)プラン」も、今年が最終年となりますが、来春までには「ポストAAAプラン」を策定し、再びアジアNo.1を目指すことを謳い、皆様に紹介したいと思います。今年度も半分以上が経過しておりますが、残された期間で、チームは「レッズスタイル」を貪欲に、勝利を目指した戦いに結び付けること、経営面でも、地元浦和に軸足を置いて、自立した、安定した基盤を作ることを目指して、改革の推進を図ることをお約束し、ご挨拶、並びに私からの現況報告とさせていただきます。
ぜひ、一緒になって強い浦和レッズを作ることにご協力いただきたいと思っております。(「2」へ続く)
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