ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2009. 8.11 Vol.63
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「Talk on Together 2009」を開催
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「Talk on Together 2009 〜第2部 トークショー〜」
▼進行:大住良之氏
▼出席者:フォルカー・フィンケ監督 モラス雅輝コーチ


大住氏:最近の浦和レッズは点が取れず、相手が点を取ってレッズが負けるという試合が続いていて、ヤキモキしています。加えて、新聞によると闘莉王選手とフィンケ監督の『場外乱闘』がはじまったということも書かれており、気になっています。本当のところはどうなのでしょう?

PHOTOフィンケ監督:(日本語で)コンバンハ。実際にいくつかのスポーツ新聞で、私と闘莉王が衝突することを願っているような書き方をされているのは知っていますが、事実はそうではありません。もちろん、闘莉王は優れた選手、大切な選手であることは間違いないと思います。そして同時に、彼は意見を言うことのできる選手です。闘莉王は一人の選手でありながら、クラブで起きるさまざまなことについて、さまざまな意見を持っています。私としてみれば、監督として選手と意見交換をすることができるというのがとても大切なことだと思います。
もちろん、このチームには闘莉王だけではなく、それ以外にもしっかりとした意見を持って建設的な話し合いをすることができる選手が数人います。彼らは立派な人格者だと思います。現時点では、このような形でとても大きく闘莉王とのことが取り上げられましたが、衝突しているということは一切ありません。もちろん、互いに意見を言い合って意見交換することはとても大切なことですし、今後もこのようなことは積極的に行なわれるべきだと思います。さまざまな意見を持っていたとしても隠したりしないで、しっかりと正面を見て話をすることができる、質問をすることができるというのは、とても大切だと思います。そして選手たちが様々なことに疑問を持って、「なぜなのか?」と聞いてくる。これは、一人の選手として大切なことだと思いますし、逆にすべてのことに対して毎回毎回うなずいている選手よりも、このような意見を持った選手の方が仕事をやりやすいのではないでしょうか。
ですから、皆さん心配しないでください。闘莉王と私はしっかりとした共同作業によって浦和レッズが成功するために毎日努力している、これが現実であります。

大住氏:今年、レッズのサッカーは変わりました。見ていて楽しいのですが、反面、まだ途中なのかなと思うときもあります。現在はどのような段階で、どのような手応えをもっているのでしょうか?

フィンケ監督:ここ数試合の結果は私にとっても、とても痛かったことは、皆さんにもご理解いただけると思います。そして、私がとても興味深かったのは、敗戦が続いたこの状況で、チームに所属している選手たちがどのような反応を示すか、という事でした。実際、ここ数試合、結果は非常に残念なものでしたが、以前に勝利を収めていたときと同じような形で得点チャンスを何度も作り出していたと思います。しかし、ここ数試合、私たちは決定力不足という問題に悩まされることになりました。ここにいらっしゃる皆さんも前回の清水エスパルス戦を観戦なさったと思います。前半0-0の状況で私たちが押し気味に試合を進めていて、エジミウソンに決定的なチャンスが訪れたことを覚えていらっしゃるのではないでしょうか。原口元気がサイドからとても質の高いパスを出して、エジミウソンがゴールを決めることができなかった。これは、疲労度が高まったこと、疲れてしまったことによって集中力が不足してしまったところもあるのではないでしょうか。6週間前のエジミウソンならば、あのようなボールを受けたときに、まず胸でボールをコントロールしてから、相手のGKに対して「右か左、どちらにゴールを決めてほしい?」と質問してから決めることができたと思います(笑)。ただし、現在は非常に疲れていることによって、そのようなことをすることはできず、決定的なチャンスをモノにすることができなかったのです。
しかしながら、これは私の個人的な意見かもしれませんが、エジミウソンは昨年と比べて格段に素晴らしいプレーをしています。さまざまな面で改善されていると思いますし、実際にこれまでチームのためにとても価値のある仕事をしてきました。しかしここ数試合は疲労が溜まったことで思ったようなプレーができず、全体的にプレーの質が落ちてしまったというのは事実です。そしてこのような状況ですから、本当ならば彼にある一定の回復期間を与えて、代わりに田中達也や梅崎 司らを起用したいと思っていましたが、残念ながら彼らは長期離脱してしまっていました。Jリーグで16、17試合、その他にもナビスコカップのすべてに出ていたエジミウソンは、ある意味で疲労が溜まってくるのは当たり前のことではないでしょうか。
実際にプレーの精度が落ちている、それから部分的に集中力が欠けている部分があったというのも事実です。しかし、これは体力的に少し疲れているからこそ、メンタル面で落ちているというのがあったのかもしれません。それでも、敗戦が続いたというのは事実ですが、忘れてはならないのは試合の内容は、そう悪くなかったということです。アウェイでの清水エスパルス戦での失点というのは皆さんも覚えていらっしゃると思います。開始からだいたい40秒でオウンゴールを食らってしまいました。ホームでのエスパルス戦でも、残念ながら坪井慶介にボールが当たったことで、軽くコースが変わって入ってしまった。このような不運なことが続いてしまったことも一つの要因だと思います。
これらの敗戦が私にとって非常に痛いものであったことも事実ですし、この痛さというものは皆さんと一緒に感じることができたのではないでしょうか。そして私にとって非常に残念であったのは、とてもたくさんのケガ人が出たことです。それによってケガをしなかった選手が毎回、毎回、フルで出場しなくてはいけなかったからです。しかしこのようにケガ人が出てくるというのは、昨年も実際にあったのではないでしょうか。私が得ている情報を見ますと、実際に昨年からも何人かのケガ人が、何度も出ていたという状況があったということです。これには文化の違いというものもあると思います。この国にはヨーロッパとはまったく違うメンタリティというものがあるわけです。もちろん文化の違いもあります。私が得た感触だと、日本という国は選手たちがケガをしながらも無理をして試合に出て、「ケガをしながらもチームのために頑張った」というのが英雄のような扱いを受けるところがあると思います。しかし、これは必ずしもいいことではないと思います。なぜかというと、ケガを押して試合に出場することによって、軽いケガであったとしてもさらに悪化してしまうかもしれない。このような状況を招いてしまうのはチームにとってもよくないことです。
そしてこれはあくまでも一つの例ですが、今日の練習では阿部勇樹が途中でやめて、治療のために室内に戻ることになってしまいました。オールスターの試合が韓国であったこともあり、彼は非常に厳しい日程の状況が続いていたわけですが、韓国から帰ってきた時点で筋肉に非常に強いハリが出ていて、それによって今日は途中で練習をやめなくてはいけませんでした。しかし、阿部というのはこのようなメンタリティを持った選手で、自ら練習をやめたりケガを理由に練習を回避したりするようなことは、一切しない選手です。これは素晴らしい姿勢かもしれませんが、ケガを悪化させてしまうかもしれないという心配を考えると、私たちの方から彼にストップをかけて、練習をもうやらなくてもいいから室内に戻って筋肉の治療をするようにと伝えなくてはいけません。このようなことが、今日あったわけですが、実際に過去に何度も何度もありました。
昨年から続いていることかもしれませんが、私たちのスタメンを見渡すと、年上の選手が少し多いということに皆さんも気付かれているのではないでしょうか。そして年上の選手というのは通常ならば7年、8年、9年とプロのサッカー選手として活動をしている、そうなるとどうしてもさまざまな古傷を抱えることになります。練習をすることによって、この古傷が出てきてしまう、それにより、離脱をして回復をして、また練習に戻ってきて、もしかしたらまた再発をしてしまうかもしれない。このようなことが何度も起きる可能性があるわけです。スタメンの選手が22歳から26歳であればそのようなことはあまりないのかもしれませんが、やはりある意味、キャリアを積んできた選手たちというのはケガをしやすい体になっているというのも理解をしていかなくてはいけないと思います。
そして、これは質問に対する最後の答えの文章になりますが(笑)、2006年に優勝したメンバーがチームに残っていて、実際にスタメンとして試合にも出ているわけです。優勝したのは2006年でそれから3年が経っています。ということは3年分、選手たちも年をとっているということです。そうすると、3年間、練習の負荷もあり、さまざまな疲労やケガもあって、このような形で体の部分でも無理をしてきたというのが年上の選手ではないでしょうか。ですから私は徐々に若手の選手を入れていくことによって、チーム全体の活性化を図っている段階です。

PHOTO大住氏:今、すごく感じたのは、フィンケ監督が怖い人だなということです。僕はさっきの質問の後で「ケガが多くて心配なんですが…」と聞こうと思っていたんです。でも目があった瞬間、自分からケガのことを話されたので…。僕は頭の中で、日本語で考えているのですが、どうして読めてしまうのかと思いました(笑)。今年、練習がだいぶ厳しいらしいので、ケガはそのことも原因になっているのでしょうか。

フィンケ監督:私はこのクラブで給料をもらっている身ですが、それと同時に、このクラブで仕事をしている限りはこのクラブの最大のファンでもありたいと思っています。ですから一人のファンとしても、このクラブの監督に質問をするでしょう。なぜこれだけのケガ人が出てしまっているのかと(笑)。
少し話が長くなってしまいますが、昨年のシーズンが終わった時点でこのチームについて詳細な分析を行ないました。実際に数試合を生で、日本で見ることができたわけですが、それ以外の試合もDVDで送ってもらい、昨年のすべての試合を映像で観戦しました。そして、昨年のスタメンの選手を見ていてどうしても、目につくことがありました。それは選手たちの年齢です。27歳から33歳の選手が非常に多い。このチームにはとても大きな、27歳から33歳のグループがあるということを私は感じていました。そして彼らは経験豊富で優れた個性を持っていて、素晴らしい選手ですが、昨年の試合を見ていて、やはり22歳から26歳の選手があまりいないという印象を受けたのです。そして当時、このクラブの責任者であった方々にはっきりと、「22歳から26歳の選手があまりにも少ないのではないか」ということを伝えました。この年代というのは3年、4年、5年とプロのサッカー選手として活動をしている経験がある。それと同時に、それほど多くの古傷を持っていない、そんなに何度も何度もケガをしていない。いわゆるサッカー選手として非常に調子のいい年齢であるわけです。それにもかかわらず、この22歳から26歳の選手がほぼ、いなかったというのは私にとっては非常に大きな驚きでした。27歳から33歳の選手が非常に優れた選手であるというのはよくあることです。
なぜなら、さまざまな経験を積んできているからです。ですから今私はチームに所属している年上の選手を責めたいわけでは一切、ありません。その点は皆さんにもご理解いただけると思います。しかし、この年齢になると、10年、11年、12年、13年とプロとして活動をしてきたことで、体にはさまざまな負荷が与えられ、どうしても古傷があったりします。体自体もケガをしやすくなってしまう。そうするとなかなか、定期的に、チームのために価値のある仕事ができないような状況になってしまうこともあります。
年上の選手たちはこのようなことはもちろん、聞きたくはないでしょう。しかしこれは厳しい事実だと思います。十何年間もプロとしてサッカー選手の仕事をしてくると、いろんなところに古傷も出てくる。いろんなところにケガ、大ケガをしたこともあるかもしれない。そうなるとどうしてもそれに体というものが反応を示して、何度も何度もケガを繰り返すことになってしまう。もちろん、年上の選手たちは素晴らしい実績を残している選手であることは非常に多いです。
そして優れた個性、能力を持っている、経験を持っている、しかし、彼らだけではいい結果を残すことができないという現実も、本当は、彼らは認めたくないかもしれないですけど、知っているはずですし、理解しているはずです。年上の選手が、どうしても若い選手も必要だということ、やはり若い選手が来ることによって、お互いに助け合うことができる。年上の選手と年下の選手が助け合うことができて初めて、いいチームができるのではないでしょうか。ただし、年上の選手だからといって、私がそのような選手を不公平に扱ったことは、一切事実ではありません。これはここではっきりとお伝えしたいと思います。私はすべての選手に同じようなチャンスを与えてきましたし、大切なのはその選手の実際のプレーのパフォーマンスやコンディションです。年上だからとスタメンを決めるようなことはいっさいありません。
練習などでも年上の選手が年下の選手を怒鳴りつけることがあります。特に年下の選手がミスを犯したときです。そのときに「もっと集中しろ」という意味で怒鳴りつけるのならばそれはとても建設的なことです。ただし、気を付けなくてはいけないのは、場合によって、年上の選手による単なるいじめになるときがあるからです。そういうときは、私がしっかり把握しておかなければいけません。もしそのような状況が起きたときには、自分から年上の選手に声をかけて「君たちは忘れてはならない。年上の選手たちというのは、年下の選手の力も必要としているんだ」と説明します。なぜかというと、年上の選手は視野も広いですし、戦術的にも素晴らしく、しっかりとした経験があるわけですが、若いときほど運動量が優れていないという現状があるからです。だからこそ、君たちの分まで走ってくれる年下の選手が必要なんだということを、力説します。それと同時に、私は年下の選手に対してもはっきりと「君たちは年上の選手がいなければ存在することができないんだ」ということを伝えます。これはとても大切なことだと思いますが、年上の選手たちは年下の選手たちを必要としている、そして年下の選手というのは年上の選手がいなければ存在できない。これが一つの事実だと思いますし、私の、一人の監督としての大切な仕事の一つは、年上の選手と年下の選手の正しいミックスを見つけることではないでしょうか。
もう一つ、先ほどの質問に対してお答えしたいと思います。私たちの練習が非常に厳しいものであるということについてです(笑)。私自身、浦和レッズのサポーターとして、浦和レッズの監督にぜひ、このことは聞きたいと思っていました(笑)。
私が昨年のチーム状況を映像など通して把握していたことは先ほどもお話ししました。今年の初めに行なった体力測定が、私が見た印象を証明づけてしまいました。私は選手を守らなくてはいけないために、そのときの体力測定によって得たさまざまな情報、データについて公の場で発表することは一切、ありません。しかし、あのような体力測定の結果があったからこそ、私たちは非常に早い段階から、準備期間の練習を始めたわけですし、通常のサッカーチームならば走ることがないくらいの距離を、キャンプ中に走ることになりました。土台となる持久力を鍛えなければならなかったからです。一つ、私にとって非常に喜ばしいことだったのですが、先週行なった体力測定の結果が、前回・1月の体力測定に比べて、全体的に改善されていました。ですから、今後、練習のメニューを組むときには少し、レベルの高いところからスタートできる、いわゆる土台が選手の方にもできあがっているという感触を得ました。すべての数値が、若干、よくなっているからです。今回の2回目の体力測定の結果というのは、ある意味、希望を与えてくれた結果だと思っています。あのような結果が出たからこそ、大きなグループを一気に入れ代える必要がないと判断したわけです。今、このチームに所属している選手たちをベースにして、さらにチーム力を改善していきたいと思います。

PHOTO大住氏:今シーズン、非常に印象的なのは10代の若い選手がたくさん出てきて、しかもベテランに見劣りすることなくプレーをしていることだと思います。それと同時にベテランの選手、ずっと試合に出ていて活躍をしている選手が若い選手に負けないような走りをしている。すごい驚きでした。これはやはり練習の成果だと思いますが、偉大なチームはやはり、練習のグラウンドから生まれるのでしょうか。

フィンケ監督:私の満足度についてですが、正直なところ、ここ3試合の結果がなければ、とても満足できるものになったと思います。しかし残念ながらあのような3試合の結果がありましたので、正直、あまり満足できない私というのがいるわけです。しかし、このような敗戦が続いている状況で、大切なのは進み始めた道を諦めないことです。今までこのチームは正しい方向に進み、いい形で成長をしてきたと思います。ですから、今、数試合に負けたからといって、選手たちが不安になるようなことをやってはいけません。ここで選手たちが不安になって、この道が正しいのかと考え始めてしまうと、残念ながらいい結果を生むことはできないと思います。特にこのような状況では、サッカー界で5年前、10年前に当たり前のように行なわれていたことを今頃になってやろうとするのは間違った解決方法だと思います。OKですか?(笑)(「5」へ続く)
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