ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2000.8.11 Vol.39

WALK ON TOGETHER
「第2回 浦和レッズシーズン2000 を語る会」ご報告

〜7月20日会合から〜

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[大野]
 クビツァ選手なんですが、正直言うと私全然わからないんですが、いい選手なんでしょうか。それとも今出ている結果程度の選手なんでしょうか。彼を生かせていないのか、周辺が悪いのか。どうなんでしょうか。

[横山]
 彼を取ってくるときに、これまでのレッズの選手は中盤から後ろの球出しに対して、流れて受けることが多かった訳ですが、相手を背にして球を受けて、そのまま攻撃を仕掛けられるような選手が欲しいと、これはもちろん監督も含めての希望がありました。そういう面で、彼はそれをやれる選手であると同時に流れの中でのプレーもできる。シュートも、これは今あまり点を取っていないのでシュートがうまいですよと言いにくいのですが、決して下手な選手ではありません。

[大野]
 札幌戦のシュートは素晴らしかったですね。

[横山]
 そうですね。いま申し上げたように、まず彼のところへボールが配給されて、ビデオなどを見てもらえればわかると思うんですが、数字的に見ると去年にくらべて後ろから前に出るボールを自分たちの選手が受けている回数が圧倒的に多いですね。その中の3分の2は味方につながっています。ですから攻撃の糸口は十分作れる訳で、そこからシュートまでどう持っていくか、という問題になる訳ですが、これは彼だけの問題ではなくて、もう今頃になったらそういうものがチームの中でうまく組み合わさっていなければいけないと思いますが、まずは攻撃の糸口としての役割がある。

 それと彼はどちらかというと左サイドに流れてシュートを打つのが好きなタイプなんですが、それをチームとして狙っていくのが彼を生かして点を取るカギだと思います。

 まずは彼にボールが入ったときに、いかにうまく捕球してやるかということが今後の課題と言っていいのではないかと思います。

[大野]
 斉藤監督がやろうとしているサッカーについても、クビツァについても、聞いているだけだと、それができれば大変いいチームになるだろうという感じですが、それが果たして何%表現されているかという不満がサポーターには残るんだと思います。本当に至福の喜びの時間帯がどれくらいあったんだ、というのが今年ではないかと思います。

 では次の意見を読み上げます。

 「前回の語る会で、今年の目標は具体的にはなく、J1に上がることが先決だと聞きましたが、クラブとしての中長期プランは何でしょうか。具体的に出さないといけないと思います」。

 「個人持ち株制度は全然施行する予定はないのでしょうか。浦和レッズだからできる思うのですが。そろそろ旧丸の内御三家のサラリーマン体質から脱却するときではないでしょうか」。

 「もう、いいかげん三菱体制はやめて、いろいろなところから人材を集めてやった方がいいと思う」。

 前々から、浦和レッズは三菱のカラーで刺激がないのではないだろうか。新しい血が入っていないのではないだろうか。いろいろ言われていますが、果たして現実はそうなのかどうか。大変に難しいところだと思いますが、サポーターが言うほど三菱がんじがらめの状態なのか、それとも徐々に変わりつつあるのか、どうなんでしょうか。

[中川]
 長期プランにつきましては、一般企業としては長期的な計画というのは経営上の数字、売上がどう、利益がどう、新しい商品開発、などがある訳ですが、Jリーグの場合は2002年以降、次の10年に向けてリーグをどう改革していくか、という観客動員数を増やすということを前提でのプロジェクトがこれから展開されていく訳なので、それによってチーム数がどうなるとか、ゲーム数がどうなるとか、売上がどうなるかということに絡んできますので、具体的な形での経営数値上のことは、我々としても先行きが不透明な時ですから特に作ってはおりません。しかし我々としても前から望んでいることですから、経営の拡大というのはやっていきたいと思っております。

 それで三菱との絡みでは、株主の多様化ということを前から申し上げておりますが、三菱自動車がいま90%持っている株の比率を50%強まで引き下げていこう、ということで、具体的には今スポンサーをやっていただいている会社が60〜70社ありますが、その中の30社くらいにお願いをして回っているところです。実現するのは秋から年末にかけてぐらいでしょうが、そういう具合に増資をして新しい株主さんに割り当てていこうと考えています。

 もう一つのビジョンというのは、まだお話できるようなものではないのですが、クラブハウスとか練習場を自前の施設を持ちたいというのが大きな願いです。しかし先立つものがどうなるか、ということがあります。ホームタウンの浦和市の中ではやはり土地の値段も高いですし、財務的なやり方も含めて検討しておりますが、候補地選びだけでも始めなければいけないと、そういう動きはし始めております。

 あとは三菱の体制の問題ですが、フロントにつきましては現在30数名おりますけども、もちろんJリーグが発足してから会社ができた訳ですから、若い20数名はプロパーの社員です。三菱からはサッカー経験者を中心とした部長以上の人たちがおりますけど、この人たちはいずれ定年になると思いますし、三菱が株を51%持っている以上は、管理者は来るでしょうが、プロパーの社員が増えていく傾向にはなると思います。

 現場については、私が来たときに三菱時代のぬるま湯的体質があるんじゃないか、ということでコーチにしろ選手にしろできるだけよその血を入れるべきじゃないかということも言いました。今年よそのチームから有力な選手を補強したことは、それにつながっていると思います。昨年よそから来たコーチもいた訳です。

 昨年デモス監督に替えて、結果的にうまくいかなかったということもありますし、今年は何が何でも1年でJ1に上がらなければいけないということで、今年は一番中を良く知った斉藤監督と、彼が選んだ三菱出身の2人のコーチになっています。来年以降のことはJ1に上がる目鼻がつくであろう秋以降に決めたいと思います。

[大野]
 最近、三菱自動車とダイムラーの提携の話が出ていますが、提携となると今までのように三菱自動車からどんどん資金がもらえるような状況にはならないのではないかと思うのですが。今までとは違った関係になる可能性もありますか。

[中川]
 それについては、まだ今月からダイムラーからの役員が来たばかりですので、私としては早くその役員に駒場に来てほしいという話をしているところです。マリノスさんのゴーンさんじゃありませんけれど、ドイツというサッカー国から来られた役員ということであれば、ダイムラーはドイツ代表チームのスポンサーをしていることもありますからサッカーに理解がないということはないと期待をしております。

[大野]
 レッズの選手の年俸を聞くたびに、ずいぶんもらっているなあ、という気がするんですが、三菱カラーといろいろ言われていても、三菱がないと浦和レッズの経営が大変に苦しくなるという状況はあるんでしょうか。

[中川]
 今年のレッズは28億から29億くらいの経営規模ですが、三菱自動車は従来から数億から10億くらいの運営資金を毎年出してくれています。それは直接的な話ですけれど、三菱に籍がある出向社員については人件費の一部も負担しておりますし、三菱グループ、あるいは三菱自動車の取引先が、スポンサー60〜70社のうち3分の2を占めています。

 したがって三菱自動車がいないと、そういうスポンサーさんもどうかかなってしまうといけませんし、私はそういうこともあって、出資比率は下げても三菱自動車は51%以上をキープして経営を支えてほしいと思います。これは自治体のご希望でもある訳です。出資者が百何十社もあるところもありますが、どこがバックボーンになっているかはっきりしないところはむしろ経営が大変になるということもありますので、財政的な基盤というのはきっちりしておきたいと思います。

[大野]
 先ほどの三菱カラーというのは、たぶん三菱自動車のその絡みだけではないと思うのですが、横山GMにお伺いしておいた方がいいのかもしれません。どうしてそういうふうにサポーターが思ってしまうのでしょうか。

[横山]
 やっぱり三菱重工のサッカー部が三菱自動車に移って、それがレッドダイヤモンズになった訳ですから、その中に三菱の多くの人間がいるというのはごく自然で、三菱の人間が多いぞ、というなら多いと思いますね。ですから、これは思い切って変えるということはできないことはないと思うんですが、いろんな面でこういうものをどんどん変えていくためには浦和レッズ自身が自分で何かをやれるという状態にならないといけないと思うんですね。そのためにどうやって自立していったらいいかということを、たとえばソシオ制度をどう考えていくかというのも選択肢の一つだろうと思うんですが、レッズそのものが自立できるような体制を作っていかないと難しい問題だと思います。自立する方向へ突っ走っていくことが重要だと思います。

[大野]
 年間シートは完売していて、駒場スタジアムにあれだけ毎試合入っているじゃないか。グッズだってみんな買っているじゃないか。それでもなかなか自立できないのか、ということを思うんですが。

[中川]
 現時点で見ればお金の使い方の効率が悪いということになってしまうと思いますね。というのはJ2の小さいクラブですと、うちの規模の3分の1とか半分以下のチームもかなりおられるようですし、成績の差がそれほどないのに、経営規模の差がずいぶんあるというところはあります。そういう意味では効率が悪いと言えると思います。 しかし今年は特に1年でJ1に上がらなければいけないということから、ケガ人が出た場合にもそなえて意識して選手をたくさん抱えているし、補強にもお金をかけていますから、選手の人件費についてはむしろ去年より1〜2割多いぐらいになると思います。

[大野]
 しかし、それだけお金を使っても満足できるような内容が出ないというのも問題だろうと思うんですが、今年ばかりの話をしていてもしょうがないんで、将来にわたって浦和レッズというのはこういうサッカーをお見せしたいんだ、と。高い目標に向かって進んでいくんだ、ということをお聞きしたいんですが。横山さん、そういうようなサッカーをサポーターにプレゼントしたいのか。10年、20年という長いスパンではなくて、4、5年で完成させたいのか、どういうふうに思っておられますか。それによって監督の人選なども変わってくると思うんですが。

[横山]
 監督によってずいぶん考え方に違いがあると思いますんで、私がこういうサッカーをやりたいとかいうのは違うのかな、と思いますが、いずれにもしてもサポーターの方々にずっとハラハラさせて、結果が悪かったと、こういう最悪の事態だった訳ですが、やっぱりすっきりした気持ちでゲームを見ていただくためには守備が相当しっかりしたチームというものを狙っていかなくてはならないという感じがします。

 それをやっていくために守備だけやっていればいいという訳ではなくて、攻撃というのは当たり前のことですが、安心したゲームというものを志向していくにはどうしても守備力を強固にしていくサッカーをやった方がいいんじゃないかと思います。私個人としては現役のときに一番後ろにいたものですから、攻撃に対する魅力というのがありまして、個人的にはやられても(攻めに)行ったほうがいいんじゃないか、という感じが強いんですが、やっぱり勝負というものを考えていったら、守備的なチームというものを考えていったほうがいいと思います。

[大野]
 そうなると選手個々の能力は高いと思うんですが、どうもレッズの選手は精神的に弱いのではないか、という質問も来ているのですが。たとえば「メンタルクリニックの問題についてもお伺いしたい」と。そこで蒸し返す訳ではありませんが、永井選手の問題についてはどういうふうにとらえて、どういうような形で今後選手たちに試合に臨んでもらおうということなんですか。社会人として素晴らしい人間が先にあって、そのあとにサッカー選手だよ、という横山さんのお話を聞いたことがあるんですが。

[横山]
 まさにその通りで、私としては本当に許しがたいといいますか、スポーツマンが最もやっちゃいけないことだと思うんですね。これは、そういう面では私自身みなさんにお詫びを申し上げるしかないと思います。もちろん終わった後すぐに彼と話をしましたけれど、スポーツというものと今の永井のおかれている立場から、絶対にやってはいけないことだということを直後に話をしました。これは言い訳をするよりお詫びをするしかないな、と思っております。

[大野]
 メンタルクリニックということなんですが、よくスポーツの雑誌を読んでいましても、いかにポジティブに考えて試合に臨むのか、失敗を恐れずに臨むにはどうしたらいいか。GKの田北選手などは身銭を切ってそういうところに入ったという話で、彼はそれでだいぶ成長したんではないかという意見もあるんですが、このメンタルクリニックというのはクラブがやるべきものなんでしょうか。それとも田北選手のように身銭を切ってやっていくものなんでしょうか。いま選手たちはそういうことに興味を持っているのでしょうか。そのあたりはどうでしょう。

[横山]
 興味を持っているかどうかはわかりませんが、やはりある程度はクラブでもやらなくてはいけないんじゃないかと私はいま思っています。どこまで掘り下げていけるかちょっとわかりません。個人差もありますし。ただスポーツをやる上で、このメンタルトレーニングというものは欠かすことのできないトレーニングの一つだと考えなくてはいけないと思っています。ですからチャレンジをしていきたいと思っています。

[中川]
 ちょっと永井のことで補足します。クラブとして処置を講じたのかという疑問も寄せられているようなのでお答えします。

 彼はリーグから10万円の罰金を取られましたけど、レッズでは20万円の罰金と次のホームゲームの自宅謹慎という措置を取りました。これは懲罰規定に基づいてやった訳ですが、その中でも重いほうの部類です。ついでに言っておけば、そのあとの大柴についても10万円の罰金という処置をしております。



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