ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2000.8.11 Vol.39

WALK ON TOGETHER
「第2回 浦和レッズシーズン2000 を語る会」ご報告

〜7月20日会合から〜

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 第1部 講演
「Jリーグから見た浦和レッズ」  佐々木一樹Jリーグ事務局長

 今晩は。何となく緊張しておりまして、浦和の選手の気持ちがわかるようです。

 レッズが2000年のシーズンを語る会ということで、今日が2回目と聞いております。1回目はシーズン前に「今シーズンをどう戦うべきか」という議論がされたと思います。今はJ2の中間でして、ちょうど良いタイミングでみなさんと語り合えるんじゃないかと思います。

 私はJリーグがスタートしてからずっと仕事をしておりまして、浦和レッズとも長いお付き合いであります。浦和レッズについて、Jリーグとしてというよりも私個人としてどういうふうに見ているかということを簡単にお話しして、これからのレッズに、みなさんのお力をますますいただければ、と思います。

 Jリーグがスタートして今年で8シーズン目。昨年からJ2という新しいリーグも始まりまして、J1、J2合わせてJリーグとしてやっております。浦和レッズはスタート当初から活躍しておりますが、残念ながら昨シーズンの成績が悪くて、現在J2で戦っている訳です。8年といいますと、生まれた子どもは小学2年生で、まだまだやんちゃな盛りです。その中でもいろいろな紆余曲折があったと思います。

 これはJリーグ発足前の話になりますが、日本サッカーリーグの時代に日本にプロサッカーリーグが必要だということで、いろいろ視察などを私自身がしていたころのことなんですが、87年か88年だったと思います。イングランドに行きまして、まだプレミアリーグができていなかったころです。アストン・ヴィラのホーム、ヴィラ・パークで、初めてイングランドのプロの試合を見ました。そのときに思ったのは、ああこれがサッカーなんだと。残念ながら、それまで私も日本リーグで仕事をしていて、サッカーのことは多少はわかったつもりでいたんですが、本場のリーグを見て「いやあ」と。昔プロ野球でヤクルトに来たホーナーが「日本の野球はBASEBALLじゃない」と言った気持ちがよくわかりました。「サッカーってこうなんだ。雰囲気がこうじゃないと駄目なんだ」というのをすごく感じました。それは何かというとスタジアムに来ているサポーター、ファンのの応援、選手をもり立てる拍手、全体が一体となんて演出している、そういうものをすごく感じました。

 具体的にいうと、たとえば左右にチームのサポーターが分かれているんですが、それがまるでステレオのように、右から左へ攻めるときは右のチームのサポーターが、ワーっと波のごとくなっていくんです。それに対して守る側のサポーターの声援が左から聞こえてくる。それから、いいプレーに対しては両方のサポーター、あるいはメーンスタンド、バックスタンドにいるファンがすごくいい拍手をする。それがまた波のように聞こえてくる。

 「うわあ、こういう雰囲気でやると選手も変わるなあ」とすごく感じました。そのときに思ったのは「日本でプロを考えようとしているけど、この雰囲気にするには、百年かかってもここまで素晴らしいスタジアムにできるかなあ」ということでした。そのときは本当に鳥肌が立つような思いで、その試合を見させていただきました。

 それから日本に帰って、プロリーグをどう作るかということを検討していたんですが、その中でも私の印象はそういうスタジアムの一体感、ファン、サポーターの声援があっての試合、というものをいかにすべきか、ということがずっと頭の隅にありました。

 ところが野球で育った日本のスポーツ、あるいは団体生活で育ったスポーツを応援するというと、高校野球やプロ野球のように、組織で決まった応援をさせられるというのがどうしてもあって、日本リーグのころもそうだったんですが、会社の厚生の人が「応援に行くぞ」と従業員を集めて、誰かリーダーを決めて、そのリーダーとともに手拍子や拍手をするという画一的な応援しかできないということで、これを私がイングランドで感じたような、本当に自分からサッカーをよく理解をして応援して、いいプレーには拍手をして、下手なプレーにはブーイングもありますが、そういうものが本当に雰囲気として表せるようになるにはちょっと大変だな、と思って作業に入ったんです。

 当初はやはり、何をどう応援すればいいんだ、ということで、我々からみなさんに、こう応援してください、というノウハウもないし、当然みなさんも持ち合わせていませんでした。テレビなどで何となくそういう雰囲気を知る中で徐々に蓄積されてきたんじゃないかと思います。

 スタートから浦和レッズ、鹿島アントラーズ、清水エスパルス、この3つのサポーターのみなさんが、意外や意外、私が描いていたイメージに早く近づいていっているな、と感じました。それがたった8年で、これだけ熱狂的な組織といいますか、浦和の場合には一つの組織にはなっていないとうかがっていますが、素晴らしい応援というものが定着していったというのは私にとって、すごく驚きでした。百年かかるな、と思っていたものが十年もかからないで、完成されたとは言えないにしろ、ある程度できて来たんじゃないかと思います。

 そういう意味では、Jリーグは最近は観客も減って苦戦をしていますが、全国の多くの方々が、それなりに応援の仕方、サポートの仕方を研究して、応援していただいているのは、Jリーグとして非常にありがたいと思っていますし、これからもサポーターのみなさんがいない限り、Jリーグは成功しないと思っています。

 そういうスタジアムの一体感というものを、これからもクラブのみなさんと相談する中で、いい雰囲気を作っていっていただきたいと思っています。その中でレッズのことをちょっと言わせていただきますと、素晴らしい雰囲気のあるスタジアムで、その応援を見に行きたいというファンもいる。本来は試合を見て、もう一度見に行きたいと感じてもらえれば一番なのですが、その前に駒場のスタジアムでのあの雰囲気を感じるだけで、またJリーグに行ってみたい、という人たちもいる訳ですから、ぜひ今の応援を続けていただきたいと思います。

 しかし最近ちょっと気になることがあります。J2で戦っていること自体に応援されている方は不満を持っておられるんでしょうが、これは勝負の世界ですから、選手は一生懸命プレーしていると思いますが、残念ながら今はJ2でやっている。今の頑張りからすれば、おそらく来シーズンはJ1に戻って、赤い軍団が暴れてくれるんじゃないかと思っております。

 ただサポーターのみなさんはスタジアムでは暴れないでほしい。お年寄りやお子さんも多くのみなさんにスタジアムに来ていただきたいて、私がイングランドで感じた雰囲気を作っていってもらいたいし、それを引っ張っていけるのは浦和レッズのサポーターなんじゃないかと思っていますが、残念ながら一部の方がペットボトルを投げたり、発煙筒をたいたり。それはサポーターではなく暴徒だと思います。そうではなくて暖かい声援と、あるいは叱咤激励するブーイングもあるかと思いますが、そういうもので浦和レッズを応援していただきたいと思います。

 浦和レッズのことで付け加えますと、サポーターあるいは自治体のみなさんの応援、そういう協力体制がJリーグの中で一、二を争うところにあると思います。そういうことで、これからもそういう人たちに助けられながら、レッズが強く、市民から愛されるようなチーム作りを目指していく必要もあるかと思います。

 イングランドやセリエAでもいろいろ問題が起こっておりますが、やはり過剰になることがいいとは決して思いませんし、我々もそれに対して新しい対処の仕方も研究していかなければならないと思っています。繰り返しになりますが、Jリーグは多くの方々に楽しい雰囲気で素晴らしい感動と夢を与えていきたいと思っています。それにはやはり選手の懸命なプレーと支えるファン、サポーターの声援があって初めて実現するもので、これから2002年に向けてJリーグも発展していこうと思っていますが、そのためにも多くの人たちのサポートが必要です。これからもますますのご支援をお願いして、今日の講話とさせていただきます。



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