ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2000.3.10 Vol.38

「浦和レッズシーズン2000 を語る会」ご報告

〜3月3日会合から〜

6/8
(1)
中川代表
(2)
横山GM
(3)
斉藤監督
(4)
第2部
(5)
Aブロック
(6)
Bブロック
(7)
Cブロック
(8)
Dブロック
−Bブロック−

〈大野氏〉

 次に、横山GMを中心にして育成、補強、フィジカル面での話になると思います。「新人たちが、今までどうも飼い殺しになっているように思うんですが、どうなんでしょう。もっと若手にチャンスを。具体的な一貫した新人育成の考えを聞かせてください」。横山さん、新人が育っていないとよく言われるんですが、現実にはどうなんでしょうか。

〈横山GM〉

 ベテラン勢が比較的元気だということもあるかと思うんですが、監督によって若い選手をどんどん起用していくタイプと、安全ということで若手の起用を躊躇するタイプがあると思うんです。原くんだとかア・デモスなどはわりと使っていく方だと思うんですね。

〈大野氏〉

 ケッペルもそうでしたね。

〈横山GM〉

 はい。結果が残せなかったために、うまくいかなかったということもあると思うんですが、やろうとしたことは、ずいぶん若手を使いたいという面が出ているところがあります。石井などはしばらく下積みがありましたが、使ってみたら良かった。そしたらどんどん伸びてきたということもありますし、必ずしも若手が全然育っていないということではないと思っています。

〈大野氏〉

 斉藤さん。一昨年、横浜フリューゲルスの不幸があって、かなりの選手が各球団に輩出されたときに、浦和レッズは採らずに新人を採ってスタートしたんですが、その選手はどのいくらい育っているんだ、と。育成が充分にされていないのではないか、という疑問が多いんですが、実際に2年目の選手たちを見ていて、どうでしょうか。

〈斉藤監督〉

 良い面はいっぱい持っていると思います。ただ自分の良い面をもっともっと知らなくちゃいけないと思います。それを伸ばしてあげたいとは思います。今年は使うチャンスがあれば若手も当然使いたいと思います。なにしろ勝たなくちゃいけないので、勝つメンバーで戦いたいと思うので、勝てそうもないと思ったら使いません。

〈大野氏〉

 横山さん、今年はサテライトに参加できないので、ふだん出られない選手をどういうふうに育成していくかも大きな課題になるんじゃないでしょうか。

〈横山GM〉

 そうだと思います。サテライトがない分、ゲームの感覚というものを失ってはいけないので、斉藤監督以下コーチは充分に考えていると思います。

〈大野氏〉

 盛田はどうなんですか。彼は能力がある、可能性があるから採ったんだろうと思うんですが、いま何部咲きぐらいなんでしょうか。満開になってもらいたいんですが。

〈横山GM〉

 そうですね。満開になってもらいたのですが、斉藤監督も言っていましたが、彼は自分自身の良さというものと、逆に言えば自分自身のまずさというものもきちんと理解をしないといけないと思うんですね。そういう中から、グラウンドで実際に与えられたポジションでどういう仕事をしていくのか。チームが要望するプレーをどれだけやれるか、ということ。そういう中で自分の良さをどう生かしていくのかが彼の課題だと思うんですね。

〈大野氏〉

 「高校や大学からは新人選手を獲得するのに、他のチームからの補強に消極的なのは何故でしょうか」ということです。今回は阿部、室井、路木を獲得したんですが、これは今までの流れから、こういう意見が出ていると思うんですが。消極的な訳ではないんですか?積極的にやっているけどうまくいかないんですか。

〈横山GM〉

 特に消極的ということではないんですけど、基本的には若い選手がどんどん育ってきて一流になってほしいと思っています。しかし、なかなかそれだけではうまくいかないということもよくわかってますし、当然他チームからの移籍もある訳です。しかし他チームからの移籍ばっかりで、それを積極的にただ考えているということではないですから。しかし、こういうふうに言われても仕方がないなとは思いますが、特に「他チームからはとらない」とか「他チームからどんどん採る」とかいう考えでやっている訳ではありません。私、個人的には若い選手がレッズの中で育ってきてほしいな、という気持ちは強いですけれどね。

〈大野氏〉

 はい。それが結果として出てくれば、こういう質問もこないと思うんです。なかなか結果が伴わないから、そういうふうに言われてしまうと思うんですね。  さて「マッチデープログラムの増刊号によれば、Jリーグの選手の育成が下部組織の主目的ではない、といいながら、一方で若い選手を育てていくということをレッズの基本にしていると言っているが、これは余所の高校や大学から有望な選手が加入することを当てにするということなのでしょうか。将来のレッズをどのような選手に担わせるつもりなのか」という質問が来たのですが。  (注・12ページと11ページ)

〈横山GM〉

 マッチデープログラムには、そのように書いてありますが、それは私の間違いです。ただ、その前に「プロ養成だけが目的ではない」とタイトルがついています。ユースやジュニアユースはプロだけ、ということではなくて、もっと大きな面でサッカーをやっていくということです。私はいつも言っているんですが、50人いても50人がみんなプロになるというのはまず不可能なんです。でもそういう50人にサッカーを続けてもらうというのは、将来のサッカーのためには非常に大きな力になっていくんですね。全部プロになれる訳ではないが、サッカーを好きだという気持ちを持ち続けてもらいたいという意味で言っている訳です。プロの下部組織として動いている訳ですから、プロを目指すのは当たり前のことで、それだけが目的ではないんだということをご理解いただきたいと思います。

〈大野氏〉

 サポーターがこういうことを言うのは、○○ユース出身の選手が増えてきた中で、浦和レッズユース出身という肩書があまりにも少ない。いったいユースは育てているのか、ということではないかと思うんですね。浦和レッズユース出身の選手がJリーグではばたくことは目的の一つですよね。

〈横山GM〉

 もちろん、そうです。

〈大野氏〉

 で、育成のやり方も今のままでやっていくということですね。数を増やしたり、ということは。

〈横山GM〉

 そういうことは近い将来出てくると思います。

〈大野氏〉

 「ユースから本格的にプロ育成の構想がない以上、高校から有望選手を採ってくることになりますが、これから毎年スカウトが選手獲得に成功する自信はあるのでしょうか。具体的に、来年は」。

〈横山GM〉

 スカウトの仕事というのは非常に時間もかかりますし、大変です。去年の仕事が終われば、すぐ次の仕事ということで、やってくれています。

〈大野氏〉

 「今後のアヤックスとの関係はどうなるんでしょう。以前ドイツとの関係があったと思うのですが、いつも中途半端な形で終わってしまったように思います」。「バイエルン・ミュンヘンとのアドバイザー契約があったはずだと思うのですが、現在どうなっているんでしょうか」「ベッケンバウアー氏とアドバイザー契約を結んでいたと記憶しております。これはどうなんでしょうか」「今後、ギドとパートナーシップを持とうと思っているんでしょうか」。

〈横山GM〉

 浦和レッズとベッケンバウアー、あるいはバイエルン・ミュンヘンとアドバイザー契約を結んだことはありません。たぶん、以前ヨーロッパ三菱でベッケンバウアーに車に乗ってもらったことがあるので、その際にレッズのことが出たのだと思います。実際に日本に来てサッカースクールをやってもらったことがあります。しかし浦和レッズと直接の契約ではありません。

〈大野氏〉

 今後はどこかのチームと提携をするということはあるんでしょうか。

〈横山GM〉

 良いチームだったら、出来ればやった方がいいと私は思ってるんですが、これを長くやるのは極めて難しいんです。というのは各チーム、どんどん人が変わっていく訳です。だいたい、そういうことをクラブ同士でやっていくためには、力関係でどちらかが片方にお願いする形になると思うんですね。それが長続きするためには相当たくさんのお金が必要になってくると思います。

〈大野氏〉

 これは横山さんが監督のころに耳にした話ですが、イタリアの強力チームから提携話が来て、浦和レッズがその話を聞いたら、とんでもない金額を養成された、と。とても払える金額じゃないということを聞いたんですが。やはり提携を結んで、若い選手を2年間なら2年間預けるとか、育成してもらうというのは現状のクラブの運営資金を考えると、かなり厳しいということですか。

〈横山GM〉

 金銭的に厳しいということもありますが、若い選手をものすごく良いチームに預けて、そこのトップに入れてもいらうというのは、相当お金を払えばわかりませんが、かなり難しいようですね。

〈大野氏〉

 永井雄一郎のような形はありますか。

〈横山GM〉

 とろうと思ったらとれると思います。

〈大野氏〉

 それはヨーロッパということですか。

〈横山GM〉

 ヨーロッパでなくても南米でも、そういうクラブ間の話ができるところはあります。

〈大野氏〉

 いま33人の選手がいて、全員が出られる訳ではない。その中で、将来の素質はあるけれど、今はJ1昇格の戦いの中では使えないという選手を送りだすというのはどうでしょうか。

〈横山GM〉

 可能性が全然ない訳じゃないです。

〈大野氏〉

 簡単な質問です。「横山さん、ベベットのような人をなぜ入れないの?」先ほどの「水面下」というのは、そういう人ですか。

〈横山GM〉

 まあ、そういうことができればいいな、と思っています。

〈大野氏〉

 「ケガ人のあまりの多さも降格の要因でした。なぜ早い時期に芝を改善するような働きかけがなかったのか。優秀なフィジカルコーチを獲得しなかったのか、選手のコンディションを管理する部署を強化しなければ、今後それがまた繰り返しになる可能性があります」ということなんですが、確かにケガ人で泣いたシーズンでもあったんですが、同じ形でやっていってケガ人が出る年も出ない年もあるんですね。横山さん、大原の芝はそんなに悪いですか。

〈横山GM〉

 芝よりも芝生の下の状態が良くないですね。これは浦和市にお願いして徐々に改善していってもらっていますが、去年あたり使いすぎの傾向もあったと思いますが、これは少しグラウンドの面数が少ないということもあります。

〈大野氏〉

 浦和市のものですからお借りしている立場で言いにくいんですが、言うことはちゃんと言わなくていけないのではないですか。

〈横山GM〉

 そうですね。

〈大野氏〉

 さて「円柱理論は今やレッズが弱い理由。プロとしての意識が弱い理由の一つに上げられている。この円柱理論を今後も続けていくのか。本当に強いプロチームをつくるならば円錐またはピラミッドでなければならないし、レッズ円柱理論である限りJ1で優勝することはできないとは思うが」いかがでしょうか。

〈横山GM〉

 私は、クラブというのは円柱でないといけないと思っているんです。幼児からお年寄りまで円柱の中に入っている。その中に円錐形のチームがある。子供から大人までクラブの会員がたくさんいて、そういう中にピラミッドが出来上がっているという形がベストだと考えているんです。ですから円柱というのはクラブのことで、強化をするチームというのは円錐形だという考えなんです。何でもかんでもずっと一緒にいればいいということではなくて、優秀な選手はピラミッドの中に入ってくる訳です。 (注・この理論はサッカーを中心とした会員制スポーツクラブの理想的なあり方を述べているもので、現在の浦和レッズの形を述べているものではありません。円柱、円錐の縦軸をクラブ会員の年齢、横軸を人数と考えます。円柱はクラブの会員全体を表し、円錐はその中のプロ選手またはプロ選手予備軍を表します。年齢層が低いところではプロ選手予備軍は大勢いますが年齢が上がるにつれて、その数は減っていき円錐形になります。しかしプロ選手でなくてもサッカーをやめる訳ではなく、クラブ全体を表す円柱形は維持されます。年齢層が上の部分では円錐の外側の存在が増えていきます。これが円柱理論、円錐理論というものです。プロ選手もしくはプロ予備軍は円錐の形でなければならないとしているのは質問者の主張と同じです。質問者には誤解があるものと思われます)。

〈大野氏〉

 それでは会場の方から質問をどうぞ。

〈参加者〉

 選手をコンバートする考えはあるのでしょうか。また新入団選手をフロンターレなどのように提携するクラブに海外留学させて育成する考えはないのでしょうか。

〈大野氏〉

 後半の質問は横山さん、お願いします。

〈横山GM〉

 本人にとって、それが素晴らしく可能性のあることであれば行かせるべきだと思います。しかし入ってすぐに行かせるのがいいのかはわかりませんし、それは本人や現場ともよく話し合ってやるべきことだと思います。1度失敗しますと、次に続かなくなるんで慎重にやりたいと思います。

〈大野氏〉

 選手のコンバートというのは斉藤さんにお聞きしますが、これは具体的にいうと何かイメージがあるのでしょうか。

〈参加者〉

 たとえば今年のJ2で言えば、札幌に高木、大分にヴァルディネイという大型FWが入りましたが、それに対抗するために永井、盛田という180センチのプレーヤーをセンターバックにコンバートするとかいう、大胆な発想はないのでしょうか。

〈斉藤監督〉

 ありません。勝つためにやりたいので、冒険はできません。

〈参加者〉

 先ほどから聞いていて、監督は外国人のストライカーが欲しいというニュアンスに聞こえるんですけど、GMの話を聞いていると、そんなにヨーロッパとのコネクションも強くないように思えるんですよね。ならば、なぜヨーロッパにこだわるのか。過去を見てもヨーロッパにこだわったために外国人の補強が遅れたように思うんですが。

〈横山GM〉

 おっしゃる通りで、特にヨーロッパにこだわる必要はまったくないと思っていますし、ブラジルでもアルゼンチンでも、いい選手が採れればそれでいいと思っています。

〈大野氏〉

 南米とのパイプというのは浦和レッズは持っているんですか。

〈横山GM〉

 もちろん、あります。これまでも候補にはずいぶん挙げたこともあります。

〈参加者〉

 若手の育成に力を入れているということですが、去年からJリーグで選手の登録人数が規制されたと思うんですが、新人は5試合ぐらい出るとA契約の対象となるということです。そうすると、多くの新人に出場の機会を与えると、シーズン末になって選手を何人か放出しなければいけない、ということになると思うんですが、このことについてレッズはJリーグに改善要求などしないのですか。それと最近他チームからあまり採ってこないんですが、右サイドというと山田しかいないと思うんですよ。しかし彼もケガがあったり出場停止があったりすると思うので、そこに土橋とか内舘をあてがうのではなくて、右サイドのバックアップとして誰かを採ることはないんですか。

〈横山GM〉

 今のところ、右サイドは山田で十分いけると思っていますので、具体的にこの選手を採ろうと考えていることはありません。

 それとJリーグの決まりは、いろんな賛成や反対があって決まってくる訳ですけれど、まだA契約選手の数の上限が決まって1年しかたっていないのに、反対だ何だと言ってもいけないし、また今年1年はあまりそういうことを言う立場にありません。  しかしこの制度ができたときには、レッズはどちらかというと反対の意見を持っていました。



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