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21.12.02

レッズレディースを支える人たち 正木裕史ヘッドコーチ インタビュー Vol.1



チームの輪に溶け込みながら、トレーニングの毎日を紡ぐ正木裕史ヘッドコーチ。
右も左もわからない女子サッカーの世界で指導をはじめて12年。レッズレディース歴は5年を数える。かつて抱いていた高校サッカーへの夢は、いつしか女子を極めたいという思いに変わる中で今、レッズレディースに思うこと。その胸中を聞く。


明るくて、闘える。それがレッズレディースの良さ

正木裕史ヘッドコーチは、2017シーズンからレッズレディースで指導をされ、5シーズン目になりました
「でも、言ってもまだ5年。ここはアカデミー出身の選手が多いので、中学1年生からいる選手に比べたらレッズレディース歴は浅いんですよね。同期でいうと(南)萌華や(長嶋)玲奈。少しずつ彼女たちが主力になってきて、経験値も高くなっている。その他の選手もそうだけど、みんなが良い状態で前向きに毎日取り組んでいて、それが結果として結びついたのが昨シーズンの優勝だと感じています。同時に思うのは、自分自身がこれまでのキャリアで見てきた女子チームは3チーム目ですけど、そのチームの持っている雰囲気は歴史の中で築かれるもの。自分がチームに加わったから劇的な何かが起きたということではなくて、選手一人ひとりをとっても、それまで指導を受けてきた多くの人たちの力や流れがあってのこと。それはチームも同様で、積み重ねてきた歴史が絶対にある。それがチームの大事なところになると思いますね」

チームのいいところや選手たちの魅力をどのように感じていますか
「外から見ていたときのレッズレディースは、最後まで諦めないで闘うチームでした。今、強化担当の柳田(美幸)のように闘将的な選手がいて、みんなが気持ちを出して『闘い抜く』というイメージ。レッズレディースの特長はそこにあると思って、チームに入ってきたんです。実際に、表に出すタイプではないけど、キャプテンの柴田華絵もそういうタイプで、その姿が若手たちの見本となって、チームの武器になっています。高橋はなは、それを引き継いでいる一番大きな選手です。萌華もそう。歴史の中で培っている“らしさ”はそういうとこにあると思いますね。それから、明るさもあります」

チームは、笑顔を絶やさず明るいですよね
「基本的に上下関係はないし、明るいですよね。個人的にも“人と人”という結び付きの中で雰囲気は良くいたいという思いがあります。それがここの良さでもあるのかな。明るくて、戦える。それこそレッズレディースが築いてきた歴史だと思うんですよね」



その歴史の中で、今シーズンからは森(栄次)総監督、楠瀬(直木)監督という体制になりました。2人とのコミュニケーション含めてチームの関わり方などに変化はありますか?
「まったくないですね(笑)。昨シーズンまでにやってきたことと変わらないですし、仕事も変わらない。本当にこれまでの継続です。ただ、2人の動きを見ている部分はあります。選手って、いろいろと言われるのもいいかもしれないですが、言われすぎてもだめ。(指導者が)同じ選手ばかりにいくのは良くないと考えているんです。まんべんなくと言うか…基本的に一日一回全員と喋るというのが自分の中で習慣化されていて、その中で試合に出てない選手のモチベーションを考えたり、そのときの状況を見たりすることはありますけど、いろいろな選手と話しながら、伝えながらというのは意識しているんですよね。例えば今、試合に出ている選手も試合に出られない時期やベンチに入れない時間があった。その悔しさや苦しさを乗り越えています。だから、そのときの思いなどを思い起こさせるような声を掛けて、試合に入るようなときもあります」

ウォーミングアップ前の円陣では気持ちの入る声を掛けていますし、日常の中でも選手の輪に自然と入っている印象です。それは指導者としての変わらないスタンスなんですね
「それはずっと昔から変わらないですね。実は以前、FC東京のスクールコーチをしていたときに苦い経験があって。全然、意識していなかったんですけど、20人くらいのクラスなのに何人かにしか声を掛けていなかったことがあったんです。それをとても怒られたことがあります(苦笑)。そのことがあってからひと言でも二言でも全員と話すことは、指導者として大事にしているところですね。そうしたところが女子チームには合っているのかな。だから12年も女子サッカーの世界にいるんだろうって思います」



選手たちに接する中で意識されていることはその他にもありますか?
「一つあるとするとサッカーの話だけはしないですね。コーチという職業柄、自分の話を聞いてもらおうと思って接しますけど、サッカーの話しかしない人間だと、選手も話を聞かないと思っています。まずは話を聞いてくれる状態に持っていく作業から入るので、些細なことやくだらないことを話すことも多いですよ」

その中で、選手たちのどんなところを見ていますか?
「話しかけたときの反応です。本人が意識していないところで、気持ちの上がり下がりとなる要因がいくつかあるので、全体的な雰囲気など見ています。ただそれも、たくさん話しているからわかることもあるので、あえて距離を置くこともありますし、些細な反応の善し悪しは気にしないようにしているんです」

正木ヘッドコーチと選手の絶妙な距離感はそうしたところから生まれてくるのですね
「本当に無意識なんですよ。だから意識的に何かをしていることはなくて。これも女子サッカーに初めて携わるようになった東京電力女子サッカー部マリーゼ(以下マリーゼ)時代から変わらない。だけど女子チームのコーチになった1年目はわからないことだらけでした。スカウティング映像もつくったことがなかったから、見終わったあとのトレーニングで『今日の映像はよくわからなかった。何なの?』って言われたり(苦笑)。そういうことがしょっちゅうありましたよ。最初は凹みましたけど、だんだん慣れてきて、今に至るという感じなんです」
(Vol.2へ続く)

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https://bit.ly/3GqE0qT

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