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ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2007. 2.28 Vol.59
VOICE INDEX
「Talk on Together2007」を開催
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「Talk on Together 2007 〜第2部〜」
▼進行:信藤健仁氏
▼出席者:ホルガー・オジェック監督


信藤氏:まずはお越しいただいてありがとうございます。レッズの監督は非常に難しい仕事だと思います11年ぶりに浦和に帰ってきて懐かしいとか変わったとか何か感想をお願いします。

PHOTOオジェック監督:みなさまこんばんは。残念ながら日本語をまだ流暢に話せないのでドイツ語で話します。まずこうした皆様の暖かい歓迎を受けまして、ありがとうございますと述べさせていただきます。わたしが最後にここで仕事をしてからかなり長い月日がたってしまいました。もちろん当時の時間が止まったわけではありません。当然のことながら変化というものがありました。最初に久しぶりに帰ってきてクラブの組織、体系がプロらしくなったと思いました。
昔来た時はプロフェッショナルとはどういうものかを模索していたときでした。その後月日がたちいろいろな経験をしてきたと思います。当然クラブのレベルも上がってきました。
スポーツ面については、成長を順調に遂げていき、昨シーズンは2つのタイトルをとることができました。これは本当に素晴らしいことです。これを維持することが今一番大事なことです。これはいろいろなみなさんにも心当たりがあると思いますが、トップを極めるという状況になるとほかからの期待が今まで以上に多くかかります。今レッズが置かれている状況がまさしくその状況です。チームにとっても監督にとってもクラブにとっても、今日来てくださった多くの方、それ以外の本当に多くの方たちが大きな期待をかけています。

信藤氏:レッズはビッククラブになりました。オジェックの話からクラブの歴史が伝わってきます。
私は91年の春に浦和レッズ立ち上げますというパレードをしました。こういう雰囲気はありませんでした。
あれから16年。あらゆるものが変わりました。その中でオジェック監督が監督をしてチームを3位に導き、タクティカル・ディシプリンや厳しい指導の下でチームがプロフェッショナルへと変わっていきました。
これからが重要です。天皇杯が終わり日程を考えると3月3日の開幕にチームのコンディションを間に合わせるのは非常に難しいと思いますが、その辺はどうでしょうか。

オジェック監督:チームがですね、本当に強くて他のチームよりも長く戦ってきたチームには他のチームに考えられない多くの問題が出てきます。
天皇杯ではほとんどのチームが12月の中旬には敗退したわけですが、こうしたチームは新シーズンになって休養をとる時間、準備をする時間がしっかりあります。 ところが1月1日まで戦ったチームには時間的なもの以外にも問題を抱えています。それは選手たちが持っているストレスです。いったいどれだけのストレスに耐えてきたのか。天皇杯はノックアウト式の大会です。ということは常に毎回決勝戦のようなものです。準々決勝、準決勝、決勝と進むことによって勝ち進めば勝ち進むほど周囲の期待が上がり、ストレスは大きく選手たちに降りかかってくる。これは体力的なもの以外にかかってくる精神的に大きなもののひとつです。当然体力的なものは、つらい移動などを考えること、それ以外に忘れられている精神的なものまで考慮しなければなりません。
こうした大会が終わったあと選手たちには4週間の休養が必要だと考えられています。これはスポーツ医学の中でも証明されています。次の準備ができるまでにまず4週間の休養が必要だと考えられているのです。
ところがうちの選手たちは天皇杯の決勝から4週間の休みはありませんでした。それに近い休みはあったかもしれませんが、Jリーグのメディカルチェックを受けなければならないなど彼らは必要な4週間の休養をとることができませんでした。
あと、ブラジル人選手という特別な例もあります。ブラジル人は母国へ帰るため地球の裏側まで行かなければなりません。直行便があるわけでもない。また、ブラジル人の時計の出来は日本人やドイツ人のものとは違っています。こういうことも考慮してあげないといけないのです。そういうわけで彼らは練習時間に遅れました。ただ逆に言えば日本人選手たちは彼らよりも1週間早く練習し、本当に厳しいトレーニングを積んでいるので体力的には1週間ほどの差ができました。当然遅れてきた選手たちはこの遅れを取り戻さなければなりません。
たとえば世界の名選手でも体力的なものが備わってなければ実際に試合で出すことができません。 それ以外に代表選手たちがいます。代表チームにもキャンプがありました。代表選手たちにはレッズ以外の負荷がかかっています。もちろん、選手、クラブにとって、これほど名誉なことはありません。ところがこれがまた選手にとってはストレスになってしまいます。クラブでは監督が選手たちの様子を見てどのように最終調整をさせるか見ることができます。毎日接しているからです。
ただ、代表に選ばれた選手たちそんなことはいってられない。ここまで出来る。体力的にはまだできていないけどそんなことは言っていられない。出せる以上のものを出してしまうことになります。 今、全選手が戻ってきたことは非常にうれしいことです。今週末から参加するJリーグの開幕に集中して出来る練習の環境が整ったといえます。ただ残念なことにけが人が長引いています。長谷部、田中達也はチームに合流できる状況ではない。ずっとリハビリをしています。そのあと何人かの選手、3日、4日は休まなければならない選手がいます。当然また時間がおくれていきます。メディアを通じていろいろ情報は発信されているが、これが現在の正直なチームの状況です。

PHOTO信藤氏:フットボールは非常にメンタルなスポーツです。休みが4週間というのは賛成です。
休まないチームはシーズンの中盤で失速するんですね。ワールドカップ開催の次のシーズン、多くのビッククラブで選手のパフォーマンスの不調で苦しんでいるのを見ればわかる。
4週間の休みのあと7週間のトレーニングがベストだと考えますが、浦和レッズのようなクラブは4週後には開幕なんですね。それをどうするのか、非常に緻密に調整しているところだと思います。
監督が考えるブルズカップとゼロックスを通じてのコンディションの問題はわかりました。昨年チャンピオンになってある程度スタイルを継承して、観察と分析と次に向けてどうするか考えているところだと思います。世界で戦うために必要なもの、課題はなんでしょうか。

オジェック監督:優勝チームを率いて大きな改革をすることはできません。なぜならそのチームは結果を出してきたからです。優勝という大きな結果を出した、それについて反対することは何もないと思います。
ただ先ほども言いましたが、この優勝したチーム、日本でもトップクラス、世界サッカーでの活躍が非常に重要になってくると思います。世界サッカーと国内サッカーと比較した場合、世界のサッカーの場合、ハードさが違います。たとえば体勝負というものがあります。体で当たっていくんだというチームがあります。そのような相手がいることを念頭において準備しなければなりません。ただそういう相手がきても自分たちの力を出せるようにするということが非常に大切なことです。このようなことを浦和レッズは今シーズンやっていかなければならない。もうすぐアジアチャンピオンズリーグの予選を見ればこういうチームとやっていかなければならないことがみなさんもわかると思います。
どんなチームが来ても甘く見てはいけない。こうしたチームはいろいろなキャラクターをもっているからです。特にわれわれにとってのアウェー、インドネシア、中国、オーストラリアでは、環境がまったく変わってきます。
私の国際サッカーの経験で得たものを述べさせていきたいと思います。グラウンドに行きましたが、会場には鍵がかかって入れませんでした。鍵を持っている人がいなかったそうです。あるいはホテルで宿泊する場合、エアコンが壊れていました。ものすごい暑い思いをしました。あるいは空港での入国管理では、ぜんぜん通してくれません。全くサッカーの試合に関係ないところでもこうしたことが起こります。これは非常に選手にストレスを与えます。サッカーの試合以外にもこうした環境に立ち向かわなければならないのです。
逆に言うと、それが国際サッカーの現状なのです。どう克服していくか。それは経験です。経験を積んでいればこれはこうした方がいいなと対応できるのです。

信藤氏:監督から全チームへのリスペクトを持ちながらも過酷なスケジュールの中で変化を求めていかなければならないという状況がうかがえます。
レッズの世界戦略を考えていくと環境面の整備もしていかなければならないということだと思います。この1週間の戦い方をもう少し具体的にお話ください。

オジェック監督:3試合を考えることはできません。1試合1試合を考えていきたいと思います。すごく高い目標を持っていることはすばらしいことだと思います。目標を設定し、ただそれに向かって一歩一歩険しい道を踏みしめていかなければいけないということです。そうしないと道を踏み外して一気に落ちてしまうということです。
ですから初戦の横浜FCとの試合をほとんど決勝戦のように考えています。ですのでこの試合のことだけに集中したいと思います。その後の日程はわかっていますが、まず最初に第1試合のピッチに立って対戦相手に勝つことが大事です。
もちろん一般的なプランを持っていることも大事です。そのような一般的なプランとしての日程で先を見るのではなく相手の情報を集めることが重要なのです。もうひとつは使いたい選手が使える状態にあるか健康なのかどうかということが重要です。風邪ではないが怪我をしてしまった。あるいは出場停止をくらってしまった。そうすればメンバー変更を余儀なくされます。新しい選手、前の試合に出られなかった選手と出ている選手とが、いかに変わらずに出られるかが大切です。

信藤氏:レッズは非常にいいチームになりました。個人の力もありウィニングメンタリティもついてきた。あとはグループワークの重要性、チーム戦術やゲーム戦術をつめていかないと世界では通用しないかなということがブルズカップなどで見えてきました。ワシントンはいい選手です。しかしもう少し全体と絡めるような戦術を使っていけるとどのチームも太刀打ちできなくなるかなという風に思います。その点でレッズはどうですか。戦術理解が乏しい選手はいますか(笑)。

PHOTOオジェック監督:先ほどもお話しましたが、準備期間、時間的なものが非常にないので戦術面の練習時間がないというのがあります。選手のハーモニーというのは非常に大切ですが、これは戦術面が大きな作用をもたらします。例えば、相手がボールを持った。うちの選手は守らなければいけない。ディフェンスの最初は誰か。先ほど名前が挙がったワシントンです。彼がボールに対してチェックにいかなければならない。これができなければ全体での約束事ができなくなります。彼だけではありません。彼が動いた場合、他はどうするか。私たちはコンパクトな守備陣をつくり相手にプレッシャーをかけていきたいと思います。
やりたいことは相手からボールをすぐに奪いたいということ。あるいはプレスをかけることで相手のミスを誘うこと。そうすることでまた次の段階でボールを奪えます。そして攻撃につなげます。その中で大切なことはパスコースを消すことです。彼らに素早い攻撃に移させないことが大切です。奪ったあと当然素早く攻撃に移らなければなりません。ボールを奪った選手が少なくとも2つパスコースを作ります。縦かサイドチェンジか、当然相手が攻撃に移ろうとしているときにボールを奪っている訳ですから相手は前に出てきているので、その裏のスペースをつくことができます。それが我々が今、やらなければならない練習です。

信藤氏:ピクチャーが見えてきましたね。時間がない中で監督が考えられているごく一部でしょうが、披露していただきました。わずかでもほころびがあると全体がつながらないし大きなものにならない。お聞きしていて非常に楽しみですね。
監督は勝利を目指す事に対して妥協しないと思うんですが、レッズであれ、負けを受け入れなければならない時があります。そうするときはどう対処するのですか。

オジェック監督:おっしゃるとおり負けるのは大嫌いですし、負けてもそれを認めたくありません。まず大切なことは自分の気持ちを抑えて変なことを言わないようにすることです。その日の状態、チームのみんなから離れて自分のフラストを抑えて気持ちを落ち着かせてから誰かに会うと。そうすれば間違いを起こすことはありません。

信藤氏:監督は事前に準備して、当然勝つことを前提にしているので受け入れるのは大変なんです。そうした中で監督は暴れるということですね(笑)。さて、監督は世界のいろいろなところでコーチをされてきていますが、さきほどのお話にもありましたがブラジル人は時間にルーズだったりといろいろ各国の人たちをまとめながらチームを強くしなければならないのは難しいと思います。そうした場合どう対処されていますか。

オジェック監督:先ほどブラジル人の時計は我々とは違うという話をしました。トルコにいた時ですがナイジェリアの選手がいました。ナイジェリアの選手は代表選手でもありましたが代表に呼ばれた後、いつも時間通りに帰ってきません。常に飛行機が壊れたと。何回もこんな話は通用しないので、新しい言い訳を考えてきたんですが、おじいさんが3回亡くなりました。

信藤氏:難しいですよね。トルコなどでは熱狂の色が違うわけです。浦和の街の熱狂もそれはオリジナルなものになっていますよね。その国によって応援の仕方も全然違うわけです。そうした世界のサッカー、アジアのサッカーを経験されてきた中で戦っていく。AFCチャンピオンズリーグにつながっていくように思います。 われわれ、レッズを愛するみなさんとしては世界クラブワールドカップに出たいですよね。日本で開催される大会に日本のクラブがいないのはこんな寂しいことはありません。
スケジュールの問題、コンディションの問題、ブルズカップ、ゼロックスと課題も見えてきました。これからが本当の勝負になってくると思います。最後に今シーズンにかける意気込みと将来像を含めて話していただきたいと思います。

オジェック監督:ここでみなさんを喜ばすためにJリーグに優勝します、カップ戦も勝ちます。そしてAFCチャンピオンズリーグも優勝しますと言えば、みなさん今日は帰っていい話が聞けたなとなるでしょう。しかし現実的に考えなければいけないと思います。もちろんやることはやります。選手も監督も同じ船に乗っています。もちろんJリーグ2連覇したいです。しかしそのようなタイトルを約束することは誰も出来ません。約束できることはひとつ、タイトルをとるための努力を惜しまなくやっていくこと、これだけは約束できます。他のタイトルも同じです。そのために1試合1試合を積み重ね、そこからチームを強くしていくことだと思います。結果を出すために厳しい練習をすることを約束します。

信藤氏:いいシーズンになることをお祈りします。今日はありがとうございました。
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