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ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2004.3.2 Vol.54
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浦和レッズシーズン2004を語る会

第2部

PHOTO伊東氏:きょうは約1時間、基本的にはインジュリータイムなしで8時45分まで、犬飼代表のお話をうかがった第1部を受けて――森GMとブッフバルト監督に来ていただいていますので、戦力など、いわゆる現場のことを中心に話を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。まず、ブッフバルト監督、浦和レッズのシーズンを「語る会」は今年で9回目になるということですが、こういった催しはドイツにもあるのでしょうか。
ブッフバルト監督:ドイツにはこのような催しものはありません。ご存知のようにドイツではクラブ組織ですので、会員の方々が集まる総会があり、そのなかでシーズンの目標や財政面についてお話をすることはありますが、こういう形でのイベントはありません。
伊東氏:この会も、趣旨としてはドイツの総会に近いものになるのではないかと思います。いままでの8回、そのときどきの監督さん、GMに出ていただいていますが、基本的に、この会では「正直に語る」というルールになっていますので、よろしくお願いします。先ほど控え室で、監督は「基本的に私には秘密――隠し事はない」とおっしゃっていましたので、そのあたり、ぜひ、つっこんだ話をお聞きしたいと思います。冗談はさておき、アデレード・キャンプが終了しました。その手応えを100点満点で採点すると、チームは何十点ぐらいまで仕上がってきたのでしょうか。
ブッフバルト監督:シーズンを迎える前、6週間から7週間が準備期間にあてられました。最初の2週間は大原で基礎体力をつけるための練習を行いました。選手がよくやってくれたので、コンディションは非常に上がってきました。それから2週間、アデレードでキャンプをはったわけですが、そこでは戦術面中心の練習を開始しました。1日3回の練習ということも含めて、非常にハードな練習をしました。試合も4試合を行い、対戦相手のレベルはあまり高くはありませんでしたが、全試合で勝つことができましたし、試合のなかで良いプレーが数多く見られました。私としては非常に満足しています。帰ってきてから行ったコンディショニングのテストの結果にも、選手の能力が上がっていることが出ています。ただし、そのようなハードな練習を積んできましたので、当然、選手たちは疲れています。これから開幕まで10日あまりあるわけですが、その前に、まず、3月4日木曜日にプレシーズンマッチを行います。そして、3月13日が開幕ですが、選手たちはきっとすごく良い状態で開幕を向かえることができるだろうと思っています。オリンピック代表とA代表の選手たちですが、残念ながら、なかなか一緒に練習する時間がありませんでした。しかし、それ以外の、一緒にやってきた選手たちは非常に良い状態に仕上がってきています。
伊東氏:最後におっしゃった、A代表、オリンピック代表の選手たちですが、彼らは当然今シーズンもチームの中心になっていくと予想されるのですが、シーズン前のキャンプというのは、思わぬ若手や、予想以上にぐっと伸びる選手が出てくるものだと思います。逆に言えば、若手にとってはアピールの場でもあるわけです。監督の目から見て「この選手はいいぞ」と注目している選手を、何人か名前をあげてもらえませんか。
ブッフバルト監督:A代表、オリンピック代表の選手がいないということは、私にとっては非常にやりづらいことだったのですが、逆にメリットもあったのです。代表選手たちがいたら十分に時間をかけて見ることはできなかったであろう選手たちをよく知ることができました。そのなかでも、名前をあげるなら、西村卓朗はコンディショニングがすばらしくて、すごくやる気を見せてくれています。また、残念ながらいまはけがをしていますが、梅田直哉も非常に良い形で伸びてきました。試合でも何点か得点しています。そして、横山拓也は今年入ってきた若い選手ですが、すばらしい才能を持っていると思います。このように、若い選手たちが非常に伸びてきています。これらの選手たちをさらにきたえて――Jリーグ、ナビスコカップ、天皇杯とある厳しいシーズンのなかでは必ず彼らの力が必要になってきますので、彼らが力を出せるように、伸ばしていきたいと思います。さらに、南祐三、三上卓哉の両名も非常に良い形で練習を行っています。
伊東氏:実は具体的な名前は出てこないのではないかと思っていましたが、それだけあげていただいてありがとうございます。(会場に)いまあがった名前を覚えておくと、今後楽しめるのではないかと思います。たとえば……どこかに行っている選手があって、ふだんそれ以外の選手で練習しているのに、どこかに行っていた選手が帰ってくるとそのままレギュラーにしてしまう…というようなことはないですよね。
PHOTOブッフバルト監督:基本的なことですが、やはり、実力のある選手、私に力を見せてくれた選手しか使えません。要は、チームに適合する選手しか使えないと思っています。ただし、代表選手には、ある程度ボーナスというものがあると思います。ボーナスというのは、永年クラブで、あるいはレッズで非常に良い仕事をしてくれた、日本のために活躍してくれた――非常にクォリティーの高い選手だということです。だからこそ代表に選ばれているわけですからね。そうはいっても、クラブに戻ってきたら、まず、監督である私に自分の力を見せてもらいたい。それを証明してくれたら使う、と考えています。しかし、チームには一種のヒエラルキーが必要です。チームの選手全員を同等に扱うということはできないものなのです。なぜならば、ゲームが始まってしまえば、ピッチの外にいる監督は影響を与えることができません。そのときに、ピッチ内で瞬時にいろいろなことを判断し、決定しなければならないわけです。ですから、そういう選手、たとえば、圧倒的なレギュラー、あるいはキャプテンといった選手を使っていかなければなりません。また、そういうことで、ひとつのチームが完成されていくのだと考えています。試合で活躍ができないことがあって、「なんで彼がレギュラーなの?」と思うこともあるかもしれませんが、そういうことは実際に起こりうるのです。
伊東氏:非常に健全な考え方で、それを聞いて非常に安心しました。アデレード・キャンプに話を戻します。サポーターの方からも質問をいただいているのですが、報道によると、3−3−3−1システムを試されたそうですね。これは、左右の、いわゆるアウトサイドの選手をより高い位置に置こうということでしょうか。去年はアウトサイドのふたりがなかなか前のほうに出てこなくて、攻撃の枚数が足りないだのなんだのと言われました。そういうねらいがあってのことなのでしょうか。この3−3−3−1システムを解説してください。
ブッフバルト監督:まず、システムのことですが、3−3−3−1などというのは単なる数字にすぎないと思っています。私の考えでは、ディフェンスは3人いれば十分です。ほとんどのチームが2トップで攻めてきますので、その2トップに対して、3人の良いディフェンダーがいれば十分ではないかと思います。そうすれば、あまったディフェンスの1枚を中盤に押し上げることによって、中盤での数的優位をつくることができます。さらにその前、前線でも数的優位をつくることができると思います。とくに外側からの攻撃を重視しているのは、外側から攻めることで中央にスペースができる――要はエメルソンらのフォワードにスペースができるということです。いまレッズにはいろいろな個性や特性をもったフォワードがたくさんいます。アレックス、エメルソン、田中達也、永井雄一郎、岡野雅行…そういった選手の持ち味を生かすために、やはり外から攻めていきたいと思うのです。さらに、試合では、特定の選手だけがゴールをあげるのではなくて、チャンスがあれば、多くの選手にゴールを決めてほしいと思います。ただ、そのためには、基本的な約束事が必要です。先ほどあげました3−3−3−1システム、3−4−3システム、あるいは3−5−2になるかもれません――これは、そのときの状況、相手によっても変わるものだと思っています。私は、1つのポジションに対してどうこうということではなく、中盤とフォワード、中盤とディフェンス、その流れ、連携がどうなるかを重要視しています。さらに、攻撃的なサッカーをしていきたいと思います。いまのレッズには攻撃的な選手がたくさんいるからです。以前言いましたが、私は、1−0で勝つよりも3−2で勝つほうがいいと思っています。スタジアムにいらしたみなさんも、魅力的なサッカー、攻撃的なサッカーを期待しているでしょう。そういうサッカーをお見せしたいと思っています。
PHOTO伊東氏:すばらしい通訳ですね。聞きほれましたよ。ありがとうございました。山内通訳です。日本代表のジーコ監督は、記者会見で「もし明日試合をするとしたらスタメンはだれでしょうか」ときかれると、ちゃんと11人答えてくれるのですが、3月4日のプレシーズンマッチ、ヴァンフォーレ甲府戦――先ほど何人か成長株の名前をあげていただきましたが、できれば、ここで11人のスタメンを発表してくださいませんか。これは、みなさん口外しないという約束で(場内拍手)、聞かせていただければ…。
ブッフバルト監督:ジーコ監督はブラジル人、私はドイツ人なので、ちょっと難しいのですが…。3月4日の試合についてですが、選手よりも前にみなさんやマスコミの方々にお伝えすることは、私はフェアではないと思っています。やはり、最初に選手に私が直接伝えて、それを選手が聞くようにしたい。ほかからいろいろな情報が選手に入るようなやり方は、私はしたくないと思っていますので、それは勘弁してください(場内大拍手)。
伊東氏:わかりました。これもまた非常に健全な考え方だと思います(場内爆笑)。これまで、キャンプも含めて非常に順調ということですが、ニキフォロフ選手が手術をしたという報道がありました。早くて2カ月、最悪の場合はファーストステージを棒に振るのではないかとみられていますが、彼の常態について、そして、彼に代わる選手についてのお考えはどうですか。
ブッフバルト監督:ニキフォロフ選手ですが、昨年のJリーグでけがをして、そのままシーズンを終えました。そして、完全に治ったとはいえない段階で今シーズンを迎えて練習に参加したのですが――昨年のけがは肉離れだったのですが――練習をしているうちにひざに問題がでてきたということで、ドクターにいろいろと検査をしてもらったところ、手術が必要だということなのです。軟骨の損傷だと聞いています。私にとってもクラブにとっても非常に大きな損失だと思っています。というのも、彼ほど身長があって、しかもヘディングの強い選手はなかなかいないからです。私は彼を中心にしてディフェンスを考えていましたから、非常に大きな痛手です。ただ、その代わりに、いま、南祐三が非常に伸びてきています。また、平川忠亮をあのポジションにコンバートできないかとも考えています。しかし、これはまだ頭の中で考えていることで、これから状態がどうなっていくかを見ていかなければならないと思います。起こってしまったことは嘆いてもしかたがありませんので、いまいる戦力で戦っていこうと思っています。
伊東氏:情報をさりげなくちらっと見せてくれるあたりが、サービス精神があるのか…少なくとも前監督の倍ぐらいは…。
ブッフバルト監督:ほかにも秘密ごとはありますので…(場内笑い)。

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