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チーム始動日囲み取材=工藤輝央スポーツダイレクター
2025/26シーズンの始動初日のトレーニングを終え、工藤輝央スポーツダイレクター(SD)が報道陣からの囲み取材に応じました。
【工藤輝央SD】
ーー新シーズンの目標を教えてください。
「今日の朝にスタートのミーティングでも話しましたが、もちろんリーグの最終的な結果はありますが、昨シーズンも勝ち点を落としたと考えているので、『一戦必勝』ということを伝えました。勝ち点はどんな相手との試合でも3ポイントしかないので、3ポイントを積み上げていく。その結果が優勝なので、一戦必勝でやっていきましょうと。トーナメントであれば勝たないと次には進めないので、どんな形でもいいから勝利する、という話をちょうどしましたので、そのように考えています」
ーー昨シーズンはAWCL(AFC女子チャンピオンズリーグ)があり、日程的な厳しさは感じましたか。
「正直、昨シーズンの日程を見たときには、僕自身はそんなに感じませんでした。みなさんご存知のように、男子トップチームであれば過密日程がたくさんあるじゃないですか。それに比べたら少ないので、そこまで影響はないんじゃないかと思ったものの、実際にはたぶんレディースの選手たちは1週間で3試合やることに慣れていなかった部分もあり、その意味で少しギャップがあったと思っています」
ーー今シーズンはその分、昨シーズンよりも勝たなければいけないという環境だと思います。
「おっしゃる通りです。1週間しっかり準備できて試合に臨めるサイクルが続くということで、昨シーズンよりもいい準備ができるはずだと思っています」
ーーシーズンオフにはチームを長く支えてきた選手が複数移籍することになりました。経緯について伺えますか。
「それぞれいろいろなパターンがあります。まず基本的に、昨シーズンもお話ししたと思いますが、育成出身者が海外クラブにチャレンジしたいというのを強引に止めることはしたくないですし、彼女たちが海外に出て活躍することをポジティブに受け止める、そういった形がベースにあります。
そういった中で、たとえば遠藤優選手は契約も残っていましたし、彼女自身が自分の年齢を考えたときに、まさか海外からオファーが来るとは思わなかった、というところがまずあります。彼女もチームに残って貢献してくれることも考えてくれていましたが、一方で、まさかそんなチャンスが来る、しかも彼女の中でもそうですし、外から見てもいいリーグとされているところで自分が挑戦できる可能性があるということで、話し合った結果、快く送り出すと決めました。まだ交渉中で最後の部分はまとまっていないのですが、クラブにも置いていってくれるものがありますし、プロの世界としてそれは非常にありがたいことだと思っています。
石川璃音選手は、昨シーズンの始まりの時点で5クラブからオファーが来ていました。元々JFAアカデミー出身で海外クラブへの思いも強く、チャレンジしたい気持ちが彼女の中にあった中で、昨シーズンは残ってくれました。AWCLもありますし、レッズレディースでキャリアを始めて、レッズレディースで勝ちたいと言ってくれて、僕らも残ってほしいとお願いもしましたし、そういった中で残ってくれて、彼女も今回のタイミングについては悩んでいました。やはり勝てなかった、勝って出ていきたかったということでしたが、今回来たオファーなど、いろいろなものを総合的に考えたときに、このタイミングでチャレンジさせてほしいということだったので、それは昨年約束していることですし、気持ちよく送り出してあげなければいけません。彼女もクラブにしっかりと残してくれているものがありますので、非常に感謝しています。
塩越柚歩選手に関しては、プロの世界なので我々も自分たちの基準、クラブの基準で選手を査定していくものがある中、日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)さんのほうが良い条件だったということだと思います。東京NBさんには東京NBさんの査定基準や評価基準、補強の戦略もあるでしょうし、そこが我々とは合わなかった、ということが一つだと思います。もちろん慰留はしましたし、条件も提示しましたが、残念ながらプロはこういうものなので、うまくまとまらなかった、ということになります。
栗島朱里選手に関しては、彼女自身がこのクラブで中学1年からずっとレッズランドに通っていて、自分の年齢を考えたときに『ここしか知らない』という話をしていました。たとえば僕も長くこのクラブにお世話になっていますけど、『工藤さん、2クラブに行きましたよね。よそのクラブに行ったときに違いを感じませんでしたか』と聞かれ、『こういう違いがあるよ』とか、普通に雑談でも話をしてきた中で、自分の人生のビジョンとして『海外へ行きたい、海外で生活もしてみたい』というところから話が始まりました。彼女も割と早いタイミングからそういうことを意識していたので、シーズンの終盤にはもうその方向性になっていましたし、それはもう、彼女の人生のビジョンと言われたら応援するしかありません。今まで貢献してくれた選手なので、気持ちよく送り出してあげたい、ということになります。
猶本光選手に関しては、彼女の選手としての残りのキャリアとクラブの方向性、クラブの考えについて対話を重ねた中で、今回の決断に至った、ということです。契約内容になるのでそこまで詳細には話せませんが、彼女も自分の残り少ないキャリアでチャレンジしたいこと、達成させたいことがあるとなったときに、それは彼女が選べることです。彼女も同じく貢献してくれた選手ですし、彼女が高校を卒業して入ってくるときに、僕が福岡に行って口説いた選手でもあるので、彼女のことも応援したい、ということです。
竹内愛未選手に関しては育成出身で、なかなかチャンスがつかめませんでした。そういった中で、彼女も高校のときから英語の勉強などもしていて、海外を含めたトータル的な中で、今は次の道に進んでいる、というところになります」
ーーチーム作りとして考えていることや選手に期待していることをお聞かせください。
「長年引っ張ってくれた選手たちがこのタイミングでチャレンジしていくということで不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんけど、昨シーズンのスカッドでも若い選手たちがいるようになっていて、たとえば藤﨑智子選手はデビューしてあれだけ結果を出したところもありますし、試合には出られませんでしたけど、秋本佳音選手もU-19日本女子代表で活躍しています。いい競争が生まれることは間違いないと思っていますし、そこはそんなに不安には感じていないです。
新しく入ってくれた選手もいますけども、加藤千佳選手に関してはウチの育成出身で、ウチのことももちろん知っていますし、先ほどの栗島選手の話ではないですけど、加藤選手は他に2クラブを経験して、ウチの良さがあらためて分かった、という話もしていました。そして、大好きなクラブでもう1回プレーしたいという気持ちを訴えてくれました。プラス、彼女ももうベテランになって、育成出身が多いチームで『後輩たちに伝えられることが、自分にはあると思います』と言ってくれて、今回加入していただくことになりました。
榊原琴乃選手は、見ていればみなさんも分かると思いますけど、ノジマステラ神奈川相模原であれだけ活躍されて、高卒でWEリーグに入ってからほぼほぼフルで出続けている選手です。まだ年齢も若いですし、彼女の意識レベルがすごく高くて、自分がどういう選手になっていきたいかというものが明確にある選手なので、レッズレディースにも貢献してもらいたいですし、彼女のビジョンにこちらも貢献したいと話をして、入ってもらいました。
あとは、昨年は僕自身が『外国籍の選手はまだ考えていません』という話をしましたけど、今シーズンのタイミングでは考えていて、今は進んでいます。なので、近いうちに発表できることもあるでしょうし、少し先に発表になることも含めて、今は進んでいることがあるので、それはもう少し待ってもらえればと思っています」
ーー外国籍選手を入れたほうがいいと考えられたのは、どのようなポイントだったのでしょうか。
「なぜそう考えたかというと、AWCLのグループステージでHo Chi Minh City Women’s FCと対戦したときに、アメリカ人の選手が3選手出ていました。その前の予選ステージでは、元ウチの選手でアジア圏や中東のチームに補強された選手がいるんですよね。そういった中で、『FIFA女子クラブワールドカップを目指してやっていきます』とみなさんの前で話していますけど、実際に身近で補強しているクラブがある程度結果を出したというのはAWCLで戦って思いましたし、Ho Chi Minh City Women’s FCの選手たちについても、彼女たちがいるから苦戦したところがあったんです。そしてたぶん、それが女子サッカーの世界ではより加速すると思います。そう考えたときに、早めに着手しなければ、選手もスタッフもクラブとして経験値が上がっていかないのかなと思っています。
外国籍の選手に入ってもらうことで、Jリーグと同じですけど、普段経験しない間合い、リーチの長さもそうですし、タイミングとかの違いもあります。今回のFIFAクラブワールドカップでも世界との差みたいなものが出ていますけど、やっぱりJリーグだと打たれないところで打たれるとか、浦和レッズの3戦目のミドルシュートもすごかったじゃないですか。なかなかない、そういった意味で、日常のところでもチームに入ってもらってトレーニングすることによってレベルが上がっていくところもありますし、もちろん補強的なところもあります。世界と考えたときに、この時点で補強していくことを考えなければいけないと思って、今はそういうふうになっています」
ーークラブとして、チームを若返らせるところもあるのでしょうか。
「クラブのビジョンとしては、もちろん続けていかなければいけません。同じメンバーで戦えるなんてことはもちろんないですし、実際に僕自身がいた2021年の男子トップチームの選手・スタッフで今誰が残っていますかと言ったときに、天皇杯で勝ったところから続いてこの間のクラブワールドカップまで行っていますけど、選手もスタッフもだいぶ変わっていますよね。なので、クラブはいい意味でも変わっていかなければいけません。常に変化し続けなければ、後退していくと思うんです。なので世代交代も一つのことで、それは選手と面談したときにも伝えていることでもあります。でもそれって、別に16歳だろうが30歳だろうが、勝負の世界なのでパフォーマンスがいい人が試合に出るだけだと思いますけど、クラブとしてはもちろん変化を続けなければいけないという意味で、そういうことも考えています」
ーー昨シーズンのラスト3試合のパフォーマンスはどのように感じましたか。また、それを受けて新シーズンに向けて突き詰めていかなければいけない戦術的な課題はなんだとお考えでしょうか。
「最初に言った通り、リーグは勝ち点3の積み重ねなので、どれかのゲームが決定的にということはないと思います。一方で、シーズンの流れはありますよね。昨シーズンで言うと、まずは前半戦で勝ち点を逃した試合は非常に大きかったと思っています。それが結果的にギリギリな状況になり、勝ち点を競う状況になった。そのときには、おそらく過去に経験したことがないくらいメンタル的に追い込まれる状況の中で試合を迎えなければいけませんでした。
その前のシーズンでは、最初にINAC神戸レオネッサさんが優勝したときも、ウチが優勝したときもそうですけど、最後のほうで何節も1位で走るんですよね。その前にみんなが勝ち点を落としていってトップが走ると。最後の最後まで上3つくらいで競うのは初めてのシーズンだったと思いますし、その意味でターニングポイントになったのは、東京NB戦とアルビレックス新潟レディース(新潟L)戦は外せなくなってくると思います。新潟L戦はまわりの結果も含めて、勝っていれば首位だった、ということもありましたし、その結果が最終的なメンタルの維持の部分でパフォーマンスにつながったのかなと思っています。
そういうときに違いを出せる選手、違いを生める状況に、クラブの我々自身もそうですし、選手も、コーチングスタッフも、そこにまだ伸びしろがあるんじゃないかと思っています。なのでそこにチャレンジしましょう、というのが今シーズンになります」
ーー堀孝史監督のサッカーの大枠は見えてきていますが、細かい部分のすり合わせが間に合わなくて勝ち点を積めなかった、という印象がありました。
「おっしゃる通りだと思います。昨シーズンで堀監督にやっていただいて、大枠の提示は終了しているところもあると思うので、今シーズンはキャンプなど事前に準備もありますし、そこからどういうふうに変化をつけていくか、というところが大きなテーマになります。たとえばポジショニングにしても、スタートポジションのところはみんな理解している、そこからどうやって変化していくんだ、というところです。秩序と自由をどうバランスを持ってピッチ上で表現できるか、というところがカギになると思っています」
ーー堀孝史監督のサッカーはダイナミックなところがあり、蹴るパスの距離も選手間の距離も、WEリーグの中では広いほうだと思います。そこについては工藤SDのポジションからはどのように選手に働き掛けて、意識づけさせていきたいですか。
「堀監督とシーズン終了後に話しましたけど、ダイナミックなほうからアプローチして距離を近づけるところと、広いところについて調整する作業になっていきます。昨年はその距離を近づけるところがうまくいかなかったと思っています。ダイナミックなところに少し囚われすぎたというか。なので、そのダイナミックさと距離を近づけた局面の違いというのが今シーズンのテーマになるので、そこに取り組んでもらうのが一つあります。
ただ、ダイナミックさがないと絶対に世界で勝てないと僕は思います。ショートパスだけでも勝てないですし。なので、さっき言った秩序と自由というところで、当たり前ですけど最低限のルールの中で自由にプレーしていいのがサッカーで、だから僕は世界で一番魅力があるスポーツだと思っていますし、これだけみなさんが見ていると思いますけど、その自由の部分は昨シーズンに堀監督になってからはちょっと少なかったですし、選手に伝わりきらなかったと思います。クスさん(楠瀬直木前監督)のときは自由が多くて秩序が少なかった、そこのバランスを取りたいと思っています」
ーープレシーズンでアメリカツアーを実施するのは、世界で戦うことを見据えた上での取り組みなのでしょうか。
「そうですね。たまたま、いろいろなタイミングがありましたけど、アメリカはご存知のとおり、昔も今も強豪国の一つです。エンターテインメントとしても、アメリカはいろいろなスポーツで成功しています。そういったことを踏まえたときに、アメリカでクラブとして選手もクラブスタッフも全体の経験値を高める、それが28年から始まる女子クラブワールドカップにもつながると思っていますし、アジアの戦いにももちろんつながっていくと思います。そういう経験値を増やすのは非常に大事だと思ってアメリカツアーを組んだのが、大きな理由の一つです。
あとは田口(誠)代表も『世界へ』というところを強く言われています。昨年、レディースジュニアユースが『NIKE PREMIER CUP 2024』という世界大会に出て4位だったのですが、同年代のアメリカのクラブと試合をしたときに、ダイナミックさが全然違いました。
アメリカ女子代表とは池田太監督のなでしこジャパンも対戦したと思いますけど、アメリカは育成年代が変わったんですよね。アメリカはある程度までは行くけど世界で勝ちきれないという時期にトレセン制度を変えて、今はいろいろ試行錯誤して取り組んでいます。そういったものも芽が出始めて、若い選手がどんどん出てきているのもありますし、プロリーグでも結果も出しています。そういった意味で、トータル的なことを踏まえてアメリカに行くことになりました。
あとは、女子クラブワールドカップに出たときに、集中開催とは限りません。移動していくことになるとは思うので、今回のアメリカツアーも2、3日トレーニングして試合をしたら移動して、ということで3試合を組んだ、というところです」
【工藤輝央SD】
ーー新シーズンの目標を教えてください。
「今日の朝にスタートのミーティングでも話しましたが、もちろんリーグの最終的な結果はありますが、昨シーズンも勝ち点を落としたと考えているので、『一戦必勝』ということを伝えました。勝ち点はどんな相手との試合でも3ポイントしかないので、3ポイントを積み上げていく。その結果が優勝なので、一戦必勝でやっていきましょうと。トーナメントであれば勝たないと次には進めないので、どんな形でもいいから勝利する、という話をちょうどしましたので、そのように考えています」
ーー昨シーズンはAWCL(AFC女子チャンピオンズリーグ)があり、日程的な厳しさは感じましたか。
「正直、昨シーズンの日程を見たときには、僕自身はそんなに感じませんでした。みなさんご存知のように、男子トップチームであれば過密日程がたくさんあるじゃないですか。それに比べたら少ないので、そこまで影響はないんじゃないかと思ったものの、実際にはたぶんレディースの選手たちは1週間で3試合やることに慣れていなかった部分もあり、その意味で少しギャップがあったと思っています」
ーー今シーズンはその分、昨シーズンよりも勝たなければいけないという環境だと思います。
「おっしゃる通りです。1週間しっかり準備できて試合に臨めるサイクルが続くということで、昨シーズンよりもいい準備ができるはずだと思っています」
ーーシーズンオフにはチームを長く支えてきた選手が複数移籍することになりました。経緯について伺えますか。
「それぞれいろいろなパターンがあります。まず基本的に、昨シーズンもお話ししたと思いますが、育成出身者が海外クラブにチャレンジしたいというのを強引に止めることはしたくないですし、彼女たちが海外に出て活躍することをポジティブに受け止める、そういった形がベースにあります。
そういった中で、たとえば遠藤優選手は契約も残っていましたし、彼女自身が自分の年齢を考えたときに、まさか海外からオファーが来るとは思わなかった、というところがまずあります。彼女もチームに残って貢献してくれることも考えてくれていましたが、一方で、まさかそんなチャンスが来る、しかも彼女の中でもそうですし、外から見てもいいリーグとされているところで自分が挑戦できる可能性があるということで、話し合った結果、快く送り出すと決めました。まだ交渉中で最後の部分はまとまっていないのですが、クラブにも置いていってくれるものがありますし、プロの世界としてそれは非常にありがたいことだと思っています。
石川璃音選手は、昨シーズンの始まりの時点で5クラブからオファーが来ていました。元々JFAアカデミー出身で海外クラブへの思いも強く、チャレンジしたい気持ちが彼女の中にあった中で、昨シーズンは残ってくれました。AWCLもありますし、レッズレディースでキャリアを始めて、レッズレディースで勝ちたいと言ってくれて、僕らも残ってほしいとお願いもしましたし、そういった中で残ってくれて、彼女も今回のタイミングについては悩んでいました。やはり勝てなかった、勝って出ていきたかったということでしたが、今回来たオファーなど、いろいろなものを総合的に考えたときに、このタイミングでチャレンジさせてほしいということだったので、それは昨年約束していることですし、気持ちよく送り出してあげなければいけません。彼女もクラブにしっかりと残してくれているものがありますので、非常に感謝しています。
塩越柚歩選手に関しては、プロの世界なので我々も自分たちの基準、クラブの基準で選手を査定していくものがある中、日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)さんのほうが良い条件だったということだと思います。東京NBさんには東京NBさんの査定基準や評価基準、補強の戦略もあるでしょうし、そこが我々とは合わなかった、ということが一つだと思います。もちろん慰留はしましたし、条件も提示しましたが、残念ながらプロはこういうものなので、うまくまとまらなかった、ということになります。
栗島朱里選手に関しては、彼女自身がこのクラブで中学1年からずっとレッズランドに通っていて、自分の年齢を考えたときに『ここしか知らない』という話をしていました。たとえば僕も長くこのクラブにお世話になっていますけど、『工藤さん、2クラブに行きましたよね。よそのクラブに行ったときに違いを感じませんでしたか』と聞かれ、『こういう違いがあるよ』とか、普通に雑談でも話をしてきた中で、自分の人生のビジョンとして『海外へ行きたい、海外で生活もしてみたい』というところから話が始まりました。彼女も割と早いタイミングからそういうことを意識していたので、シーズンの終盤にはもうその方向性になっていましたし、それはもう、彼女の人生のビジョンと言われたら応援するしかありません。今まで貢献してくれた選手なので、気持ちよく送り出してあげたい、ということになります。
猶本光選手に関しては、彼女の選手としての残りのキャリアとクラブの方向性、クラブの考えについて対話を重ねた中で、今回の決断に至った、ということです。契約内容になるのでそこまで詳細には話せませんが、彼女も自分の残り少ないキャリアでチャレンジしたいこと、達成させたいことがあるとなったときに、それは彼女が選べることです。彼女も同じく貢献してくれた選手ですし、彼女が高校を卒業して入ってくるときに、僕が福岡に行って口説いた選手でもあるので、彼女のことも応援したい、ということです。
竹内愛未選手に関しては育成出身で、なかなかチャンスがつかめませんでした。そういった中で、彼女も高校のときから英語の勉強などもしていて、海外を含めたトータル的な中で、今は次の道に進んでいる、というところになります」
ーーチーム作りとして考えていることや選手に期待していることをお聞かせください。
「長年引っ張ってくれた選手たちがこのタイミングでチャレンジしていくということで不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんけど、昨シーズンのスカッドでも若い選手たちがいるようになっていて、たとえば藤﨑智子選手はデビューしてあれだけ結果を出したところもありますし、試合には出られませんでしたけど、秋本佳音選手もU-19日本女子代表で活躍しています。いい競争が生まれることは間違いないと思っていますし、そこはそんなに不安には感じていないです。
新しく入ってくれた選手もいますけども、加藤千佳選手に関してはウチの育成出身で、ウチのことももちろん知っていますし、先ほどの栗島選手の話ではないですけど、加藤選手は他に2クラブを経験して、ウチの良さがあらためて分かった、という話もしていました。そして、大好きなクラブでもう1回プレーしたいという気持ちを訴えてくれました。プラス、彼女ももうベテランになって、育成出身が多いチームで『後輩たちに伝えられることが、自分にはあると思います』と言ってくれて、今回加入していただくことになりました。
榊原琴乃選手は、見ていればみなさんも分かると思いますけど、ノジマステラ神奈川相模原であれだけ活躍されて、高卒でWEリーグに入ってからほぼほぼフルで出続けている選手です。まだ年齢も若いですし、彼女の意識レベルがすごく高くて、自分がどういう選手になっていきたいかというものが明確にある選手なので、レッズレディースにも貢献してもらいたいですし、彼女のビジョンにこちらも貢献したいと話をして、入ってもらいました。
あとは、昨年は僕自身が『外国籍の選手はまだ考えていません』という話をしましたけど、今シーズンのタイミングでは考えていて、今は進んでいます。なので、近いうちに発表できることもあるでしょうし、少し先に発表になることも含めて、今は進んでいることがあるので、それはもう少し待ってもらえればと思っています」
ーー外国籍選手を入れたほうがいいと考えられたのは、どのようなポイントだったのでしょうか。
「なぜそう考えたかというと、AWCLのグループステージでHo Chi Minh City Women’s FCと対戦したときに、アメリカ人の選手が3選手出ていました。その前の予選ステージでは、元ウチの選手でアジア圏や中東のチームに補強された選手がいるんですよね。そういった中で、『FIFA女子クラブワールドカップを目指してやっていきます』とみなさんの前で話していますけど、実際に身近で補強しているクラブがある程度結果を出したというのはAWCLで戦って思いましたし、Ho Chi Minh City Women’s FCの選手たちについても、彼女たちがいるから苦戦したところがあったんです。そしてたぶん、それが女子サッカーの世界ではより加速すると思います。そう考えたときに、早めに着手しなければ、選手もスタッフもクラブとして経験値が上がっていかないのかなと思っています。
外国籍の選手に入ってもらうことで、Jリーグと同じですけど、普段経験しない間合い、リーチの長さもそうですし、タイミングとかの違いもあります。今回のFIFAクラブワールドカップでも世界との差みたいなものが出ていますけど、やっぱりJリーグだと打たれないところで打たれるとか、浦和レッズの3戦目のミドルシュートもすごかったじゃないですか。なかなかない、そういった意味で、日常のところでもチームに入ってもらってトレーニングすることによってレベルが上がっていくところもありますし、もちろん補強的なところもあります。世界と考えたときに、この時点で補強していくことを考えなければいけないと思って、今はそういうふうになっています」
ーークラブとして、チームを若返らせるところもあるのでしょうか。
「クラブのビジョンとしては、もちろん続けていかなければいけません。同じメンバーで戦えるなんてことはもちろんないですし、実際に僕自身がいた2021年の男子トップチームの選手・スタッフで今誰が残っていますかと言ったときに、天皇杯で勝ったところから続いてこの間のクラブワールドカップまで行っていますけど、選手もスタッフもだいぶ変わっていますよね。なので、クラブはいい意味でも変わっていかなければいけません。常に変化し続けなければ、後退していくと思うんです。なので世代交代も一つのことで、それは選手と面談したときにも伝えていることでもあります。でもそれって、別に16歳だろうが30歳だろうが、勝負の世界なのでパフォーマンスがいい人が試合に出るだけだと思いますけど、クラブとしてはもちろん変化を続けなければいけないという意味で、そういうことも考えています」
ーー昨シーズンのラスト3試合のパフォーマンスはどのように感じましたか。また、それを受けて新シーズンに向けて突き詰めていかなければいけない戦術的な課題はなんだとお考えでしょうか。
「最初に言った通り、リーグは勝ち点3の積み重ねなので、どれかのゲームが決定的にということはないと思います。一方で、シーズンの流れはありますよね。昨シーズンで言うと、まずは前半戦で勝ち点を逃した試合は非常に大きかったと思っています。それが結果的にギリギリな状況になり、勝ち点を競う状況になった。そのときには、おそらく過去に経験したことがないくらいメンタル的に追い込まれる状況の中で試合を迎えなければいけませんでした。
その前のシーズンでは、最初にINAC神戸レオネッサさんが優勝したときも、ウチが優勝したときもそうですけど、最後のほうで何節も1位で走るんですよね。その前にみんなが勝ち点を落としていってトップが走ると。最後の最後まで上3つくらいで競うのは初めてのシーズンだったと思いますし、その意味でターニングポイントになったのは、東京NB戦とアルビレックス新潟レディース(新潟L)戦は外せなくなってくると思います。新潟L戦はまわりの結果も含めて、勝っていれば首位だった、ということもありましたし、その結果が最終的なメンタルの維持の部分でパフォーマンスにつながったのかなと思っています。
そういうときに違いを出せる選手、違いを生める状況に、クラブの我々自身もそうですし、選手も、コーチングスタッフも、そこにまだ伸びしろがあるんじゃないかと思っています。なのでそこにチャレンジしましょう、というのが今シーズンになります」
ーー堀孝史監督のサッカーの大枠は見えてきていますが、細かい部分のすり合わせが間に合わなくて勝ち点を積めなかった、という印象がありました。
「おっしゃる通りだと思います。昨シーズンで堀監督にやっていただいて、大枠の提示は終了しているところもあると思うので、今シーズンはキャンプなど事前に準備もありますし、そこからどういうふうに変化をつけていくか、というところが大きなテーマになります。たとえばポジショニングにしても、スタートポジションのところはみんな理解している、そこからどうやって変化していくんだ、というところです。秩序と自由をどうバランスを持ってピッチ上で表現できるか、というところがカギになると思っています」
ーー堀孝史監督のサッカーはダイナミックなところがあり、蹴るパスの距離も選手間の距離も、WEリーグの中では広いほうだと思います。そこについては工藤SDのポジションからはどのように選手に働き掛けて、意識づけさせていきたいですか。
「堀監督とシーズン終了後に話しましたけど、ダイナミックなほうからアプローチして距離を近づけるところと、広いところについて調整する作業になっていきます。昨年はその距離を近づけるところがうまくいかなかったと思っています。ダイナミックなところに少し囚われすぎたというか。なので、そのダイナミックさと距離を近づけた局面の違いというのが今シーズンのテーマになるので、そこに取り組んでもらうのが一つあります。
ただ、ダイナミックさがないと絶対に世界で勝てないと僕は思います。ショートパスだけでも勝てないですし。なので、さっき言った秩序と自由というところで、当たり前ですけど最低限のルールの中で自由にプレーしていいのがサッカーで、だから僕は世界で一番魅力があるスポーツだと思っていますし、これだけみなさんが見ていると思いますけど、その自由の部分は昨シーズンに堀監督になってからはちょっと少なかったですし、選手に伝わりきらなかったと思います。クスさん(楠瀬直木前監督)のときは自由が多くて秩序が少なかった、そこのバランスを取りたいと思っています」
ーープレシーズンでアメリカツアーを実施するのは、世界で戦うことを見据えた上での取り組みなのでしょうか。
「そうですね。たまたま、いろいろなタイミングがありましたけど、アメリカはご存知のとおり、昔も今も強豪国の一つです。エンターテインメントとしても、アメリカはいろいろなスポーツで成功しています。そういったことを踏まえたときに、アメリカでクラブとして選手もクラブスタッフも全体の経験値を高める、それが28年から始まる女子クラブワールドカップにもつながると思っていますし、アジアの戦いにももちろんつながっていくと思います。そういう経験値を増やすのは非常に大事だと思ってアメリカツアーを組んだのが、大きな理由の一つです。
あとは田口(誠)代表も『世界へ』というところを強く言われています。昨年、レディースジュニアユースが『NIKE PREMIER CUP 2024』という世界大会に出て4位だったのですが、同年代のアメリカのクラブと試合をしたときに、ダイナミックさが全然違いました。
アメリカ女子代表とは池田太監督のなでしこジャパンも対戦したと思いますけど、アメリカは育成年代が変わったんですよね。アメリカはある程度までは行くけど世界で勝ちきれないという時期にトレセン制度を変えて、今はいろいろ試行錯誤して取り組んでいます。そういったものも芽が出始めて、若い選手がどんどん出てきているのもありますし、プロリーグでも結果も出しています。そういった意味で、トータル的なことを踏まえてアメリカに行くことになりました。
あとは、女子クラブワールドカップに出たときに、集中開催とは限りません。移動していくことになるとは思うので、今回のアメリカツアーも2、3日トレーニングして試合をしたら移動して、ということで3試合を組んだ、というところです」
