駒場の芝生


1993年のJリーグ開幕で、レッズの選手が駒場のピッチに立って以来、初めて芝生の張替えをすると聞いてちょっと驚いた。
確かに最近はかなり凸凹が目立ち、芝も剥がれてしまう部分もあって、選手の怪我も心配だと思っていた部分があった。

駒場スタジアムには思い出が一杯詰まっている。

1万人弱のスタジアムから2万人収容に改修した駒場スタジアムのセレモニーが1995年8月16日暑い夏の日に行われた。後援会初のボランティア(スチュワード)160名の参加のもと、ピッチを赤い布で覆い、荘厳な音楽が流れる中、160人のスチュワードが幕を引くとピッチに「COME HOME 」のメッセージが現われるという演出であったが、開始間近、上空に暗雲が立ち込め、今でいうゲリラ豪雨に見舞われ、折角の赤い布が雨にぬれて芝生に張り付き、何十回と練習したセレモニーもリハーサル通りには進まなかった。それでも、160人の懸命な動きに、大きな拍手が起こり、感動の一幕を飾った記憶がよみがえってきた。

その駒場スタジアムの改修にあたり、さいたま市からピッチの芝生を市民に無料で配布したいので、レッズにぜひ協力して欲しいという依頼があった。
せっかくの機会なので、芝生の配布だけではなく、普段は絶対に入ることができないピッチの上で、みんなが自由に体験できるイベントを考えた。
内舘秀樹と一緒にボールを蹴るミニサッカーコーナー、キックターゲット、思い出のロッカールーム、そして、数々のドラマを生んだピッチの地点にメモリアルボードを立てることにした。

例えば「土橋正樹J1復帰Vゴールの地」「福田正博得点王の地」「ギド・ブッフバルト引退セレモニー」「小野伸二グッドラックセレモニー」「ゼリコ・ペドロヴィッチ感謝セレモニー」「GK田北雄気J初得点の地」「福田正博 世界一悲しいVゴール」など、これらのポイントに、正確にボードを立てた。

来場者のみなさんは、開門と同時に一斉に芝生配布ポイントに向かう。その後、大勢の方々がそれぞれのメモリアルポイントで記念写真に収まっていた。
ミニサッカーコーナーのアシスタントとして、元選手の池田学さんに声をかけたら2つ返事でOKしてくれた。「福田正博 世界一悲しいVゴール」のポイントの横で、当時、福田正博に抱きついたシーンを再現するように、ファン・サポーターと気さくに記念撮影をに応じてくれたのには、とても感動した。

思い出が一杯詰まったピッチの芝生をはがして持ち帰るのには、辛さもあったが、2500人もの人が駆けつけてくれ、芝生の感触を味わいながら、とてもいいイベントだったと、笑顔で帰路につかれる姿に、思わず目頭が熱くなった。

駒場スタジアムは、2年後の6月まで、ピッチと陸上トラックの張替えのため使用できないが、また新しいピッチの上で選手たちの汗と涙でいくつもの感動が生まれていくのだろうと思う。

[2010.11.4 HT:K Vol.6]