ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2009. 8.10 Vol.62
VOICE INDEX
「浦和レッズハートフルミーティング2009」を開催
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PHOTO●落合 弘キャプテン
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皆様、本当にありがとうございます。我々がこうしていろいろな活動ができるのも皆様方のご協力のおかげということを日々、感じております。それぞれの関係者の方々にお礼を申し上げます。前回、出られている方もいらっしゃいますし、そうでない方もいらっしゃって、いつも皆さんの心に残るような話をということができたらと思っているので、正直、どうしようかと随分、悩みましたが常日頃から感じているスローガンの話から入らせてもらおうと決めました。
まずはこの4枚の写真をご覧ください。これは私が撮った写真です。それぞれ、お子さんですよね。こういうのを見ると、何て言うか、一生懸命ですよね。このお子さん、ボールを見ています。一生懸命ですよね。その上の写真は井戸です。幼稚園にある井戸ですけど、『やってごらん』と言ったら、あんな感じで全身を使って一生懸命水を汲んでいますよね。次の写真も幼稚園の年少くらいだと思いますが、我々の年長さんへのクリニックを見に来ていたんです。ああやって先生方に言われて並んでいるんです。たぶんこれでは分からないかもしれないんですが、カメラを向けるとその中の2人がこっちを見ている。その目がすごく澄んでいるんですよね。こういうのを見ると我々は本当に頑張らなければいけないなと思います。子供達がこれだけ一生懸命やっているんだから我々も一生懸命やって、一生懸命やることが素晴らしいことなんだ、とぜひ分かってもらいたい。という流れの中で我々の活動があるということをぜひ、ご理解ください。一番下の写真は家族です。広い野原でお昼を食べている、これも最高ですよね。
次のスローガンですが、『今だからこそ、スポーツ(サッカー)の楽しさと大切さを!』。大切さというところに注目してください。どっちかというとお子さんです。お子さんに何かをやるときに楽しくやらせることはすごく大事です。でも、ここのところはすごく難しいんですが、ちょっと話が飛躍するかもしれません。私の子供のころは、戦争が終わった大変な時期です。私自身、母親が日本橋の呉服問屋の娘でした。戦争で焼け出されて浦和に避難してきたわけです。父親が宮内庁関係の仕事をしていたこともあり、結構、いい生活をしていたのではないかと思う中で、何もなく焼け出されて、我が家は8畳6畳6畳、簡単な台所があって、そこに3家族が住んでいました。そういう環境です。それぞれの家族が8畳と6畳と6畳に住んで、台所は共通です。玄関なんてそれこそ靴だらけです。よく覚えているのは、窓の下にリンゴ箱を置いて部屋に出入りしていました。私はそういう環境の中で育ちましたが、当時は嫌だな、大変だなと思っていました。でも今思うとすごくいい経験をさせてもらいました。それが我々のハートフルクラブの活動の原点みたいなものだと、少しだけでも理解していただければと思います。 どういうことかと言いますと、我々は子供と接することが多いです。いろいろな国に行ったときも話すのですが、子供たちを育むために、学校があり、家庭があり、地域というものがあります。それぞれがうまい具合に子供に接しないとやっぱり、社会人になってからしっかり独り立ちできるような人間にはなっていかないのではといつも思っています。我々のころは、それが知らない間に作り上げられていましたね。私の家庭などはその最たるものでした。家の中に他の家族のいろいろな眼があるわけです。いろいろな眼で私のことを見るわけです。怒られることもたくさんあります。でも今は核家族ですよね。そうするとお子さんを見る眼がすごく少ないですよね。大丈夫なのかなと私は思います。
他では、学校に行ったら我々のころは、校長先生が来たらしっかりと挨拶をする、それが当たり前でした。今は小学校に行くと、校長先生や先生方が校門のところで待っていて一生懸命、おはよう、おはようと言っています。ちょっとどうなのかなと思ったりしますが、我々のころは学校の中で、本当に厳しくある意味教えられた。ある意味、自由さがありました。私は運動が大好きでした。1年間で一番誇りに思いながら、正々堂々と学校を歩いているのは運動会の日でした。運動会の徒競走で1位になると、赤いリボンをもらえるんです。赤いリボンを3つくらいつけていたら、それで誇らしいのです。だから私は運動会の日は本当に誇らしかった。でもそうじゃないときは、勉強で誇らしい子もいます。それでいいのではないかと思います。でもみんなを平均的にしてしまって、どうするのかと。社会に出たときに、そんな社会はなかなかないぞと思います。学校も昔はそういう中でいろいろなものが育まれたのが、今はどうかな、という思いはしています。地域ではまさにそうですよね。我が家は隣に当然家がありました。隣との境は生け垣です。簡単な木が植えてあるだけでした。竹が格子になっている。そのどこかに穴があいていました。自由に出入りできましたが、今はそのような状態はありません。しっかりと塀が立っています。隣で何をやっているか、さっぱり分かりません。昔は隣で何をやっているか、よく分かっていました。
私は子供のころ浦和高校の近くに住んでいました。家から4軒先に家があって、そこの家には子供用の自転車があり、私はときどき借りていました。借りに行くときは道を通る必要がありません。垣根をどんどんくぐっていけばいいのです。それで平気で自転車にありついて、ありがとうございます、どうってことはないよ、という挨拶がある日常でした。そういう日常はすごく大事だと思いますし、そういう中で子供たちがいろいろ育まれていくわけですよね。現在の家庭は核家族が多いですよね。お母さん方は姑さんのいろいろな小言なども嫌だから、核家族にするというリスクをとるわけですよね。どういうリスクかというと、お子さんを育てるのは大変です。その大変なところを昔は、おじいちゃんおばあちゃんが助けてくれました。核家族になると助けてくれませんよね。どうなるかというと、大変な問題も起きているわけですよね。みんなリスクを負ったのだから、それなりの覚悟をしておかなければいけません。その辺の部分も家庭でなかなかないから子供たちもうまく育まれていかないのではと思っています。
学校などもそうです。いろいろな学校に行って、校長先生といろんな話をします。『落合さん、そんなわけにはいかないんですよ』って随分、言われますからね。でもそうしたらどうするんですかと聞くと、『自分も思うけどどうしようもないんだよ』と言う人、結構、多いんですよね。学校もそうなっています。地域もそうです。 これは私がよく話しをしていることですが、ある学校に行こうとしたときに所在地がよく分からなかったのです。車で向かっている途中、歩いている小学生に聞こうかと思いました。本当に聞こうと思いましたが、直前で辞めました。それは、車を止めて降りて、小学生に聞いたら逃げられるかもしれない。学校から知らない人から聞かれたら逃げておいでと言われているかもしれない。そうなったら寂しくて仕方がないから、聞かないで自分で探そうと思いました。それが現実だと思います。そういう現実の中で、子供たちがきちんと育まれるのか。大げさな言い方ですけど、そう思っています。よくないはずだ。じゃあ何とかしなければいけない。何とかするには、どうしたらいいか。我々はサッカーを通じて子供たちと付き合っている。サッカーを通して昔、家庭・学校・地域でやっていたような部分を少しでも提供できたらというのが、我々のハートフルクラブだということをぜひ、ご理解ください。
ですから、このスローガンというのは『今』なんです。『今だからこそ』なんです。昔だったら必要がないと思います。でも今はこういうような状態になってしまっているので、『今だからこそスポーツ(サッカー)の楽しさと大切さを!』というテーマにしているということをぜひご理解ください。
2年前からサブタイトルみたいなもので、『守・破・離(しゅ・は・り)』という言葉を使っています。サッカーをやる上で、どう具体的にやったらいいのか。それをこの言葉で表したいということです。何でもかんでも楽しくやって、それが大切だということじゃないと思うんです。もっと具体的に教えていかないといけません。それにはこの『守・破・離』を必ず守ってください、頭の中に入れて行動してくださいというものです。
インターネットで調べていただくとこういうことが出てくると思います。日本には昔から、茶道、華道、空手道、柔道、剣道いろいろあります。いろんな道があります。その道を究めていくときに、必ずこの『守・破・離』を守ってほしいという書かれ方をしていると思います。これは言葉の意味と順番、この2つがすごく大事だという書かれ方もしていました。『守』の部分、これは基本だとどこへいっても言っています。基本をまずやりなさいと。ただ、基本はつまらないぞと。子供たちは目標を作るのがうまいです。夢を持つのがうまい。でもそこに到達するのは難しいと言っています。すごい壁にもぶつかる。それを乗り越えないと格好いい目標、夢には辿り着けない。ではどうするのと言ったときにこの基本、つまらないかもしれないけど、サッカーだったらインサイドキックをしっかりやる。つまらないものを身につけておけば大きな壁にぶつかっても絶対に乗り越えることができる。
その中で言うのは、つまらないけど、面白くしなさい、それは知恵だぞということです。繰り返しやるのはつまらないです。それをつまらない、つまらないでも頑張ろうというのはなかなか難しい。そこで発想の転換です。やらされていた部分を自分からやることでつまらない部分を面白くしてしまう。ある意味、簡単です。子供たちには具体的に話しをしているんですが、つまらないことをやらなければいけないんだったら、面白くしてしまって、それで身につけようよと、それが『守・破・離』だと話しています。いろいろなたくさんの基本を身につけて、しっかりとした土台を、分厚い土台を作ってほしい。そこは絶対に忘れないようにと話しています。
それで、基本ができたら次は『破』の部分、挑戦と書いてありますが、もう一つ分かりやすいのは個性です。基本でしっかりした土台を作りました。それだけでいいのとなったときに、特にプロの世界などは個性がすごく大事です。基本、土台をしっかり作り上げたときに、少しずつ出てくるのが個性です。そういう話をよくしています。でも今の子供たちは個性って何と聞くと、目立てばいいと言います。ちょっと待てよ、と。目立てばいいんだったら大変なことになるよと話をします。例えば、あるサッカー少年団にいったとします。そこでオーバーヘッドキックという難しいキックをして、私がそれを見てうまいと思う。それでレッズの子供たちと一緒にサッカーをやろうとその子に言ったとします。レッズの子供たちは上手です。そういう中に、オーバーヘッドキックをした子供が、できると思って来るわけです。ところが、日々の練習というのは、しっかり蹴ること、しっかり止めること、しっかりコーチングの声を出すこと、そんなことだらけです。オーバーヘッドキックを決めた子はそれが不得手だったとすると、周りからは文句を言われますよ。しっかり止めろ、しっかり蹴れ、後ろから誰かが行ったらコーチングをしてくれと。そうするとその子は確かにそうだなと思いますよね。レッズのみんなはしっかり止めて蹴って、声が出ている。自分はそこが駄目だなと。でもどこかでオーバーヘッドキックをするシーンがくるだろう。そうなったら見事に決めよう、そしたらうまいんだと周りは言ってくれるだろうと思いながらトレーニングをしている。そういうシーンはなかなかありません。オーバーヘッドキックのシーンがなくて練習が終わると、その子の評価は下がります。そうすると、何だよ、落合さん、たいしたことないじゃないというふうになってしまう。そうなってほしくないんです。土台をしっかり作り上げる。そこまではまずやらされるんです。しようがないんです。やらされることを自分でやるということ変えるのですが、要はしっかりと土台を作り上げてそこから少しずつ出てくるのが個性だと。
それで最後の『離』なんですが、これはもう簡単です。名人クラスです。楽しくやるというのは。楽しくサッカーをやりなさい、でも気を付けてと。例えば、レッズのプロですごく活躍している選手、例を挙げると山田直輝でいいと思います。山田直輝は大活躍しています。そのプレーをビデオに撮ったとします。18歳で大活躍していますし、それは楽しいと思います。その楽しく思っているプレーをビデオに撮ってスローで見ると、本当に、基本に忠実です。そういう意味では彼はすごくいい見本になっているんじゃないかと思っています。彼は自分のことをよく知っていますよね。何よりも運動量が大事だ、人の嫌がることを自分はやりたい、そういう中でチームから重要な人間として試合に使ってもらいたいみたいな話をしています。本当に彼は周りが見えていて、プレーも正確です。本人の性格も真っ直ぐだということです。土台を作って少し自分の個性、他と違うものを作り上げて自分のものにする、そして楽しくサッカーをする。これが『守・破・離』なんです。それだけは頭の中に入れてサッカーをやってくださいよということを、いつも言っています。
こちらは横文字で書いてあります。これはある小学校の先生が京都で聞いたということなんです。その先生は剣道をやっていて、京都でインターナショナルの剣道の大会があったそうです。それで日本人用に大会に『守・破・離』の言葉を全面に出して使っていました。日本人用に説明を書いて、外国人にも説明をしなければいけないときに、横文字で使った『守・破・離』がこれです。『守』は『Basic』です。言われてみれば何となく分かります。自分でももしかしたらそう浮かぶかもしれません。『破』はなんでしょう? わかりませんと答える。『Challenge』です。何となく分かる。最後、『離』です。何だろうと言ったらその先生は『Value』と答えてくれました。正直、これは感動ものでした。要は、いろんなベーシックなものを作り上げる、そして自分の色を出すことに挑戦する、そういうものを経ないと価値が生まれない。これはいいということで、この話を使わせてくださいということで、使っています。そういう考えで我々のハートフルクラブが動いているということをぜひご理解ください。コーチ陣もこういうことを全部頭に入れながらそれぞれの仕事に対応しています。
先日、ある新聞社からこういう問い合わせを受けました。落合さん、ハートフルクラブの、幼稚園からシニアまでそれぞれの年代の指導マニュアルはあるんですか、と。即座にありませんと答えました。すると、それじゃ困るんじゃないですか、と言われたのですが、全然、そんなことはないと。我々には大事なスローガンがあります。あとの部分はコーチ陣がそれぞれこのスローガンを頭に入れて、対応してほしいというやり方をしているのが我々のハートフルクラブだと話しています。もっと分かりやすく言います。世の中にはマニュアルがたくさんあります。それは本当に大事なものです。マニュアルを自分のものにしたからOKなんだ、ということは多いですよね。でも私は違うと思います。せっかくマニュアルを自分のものにしたのなら、それを使ってどれだけいいアドリブができるか、それが大事ですよね。コーチ陣には、マニュアルはないよ、我々の評価はことが起きたときにどんなアドリブをするか、それで評価を受けることが大事だと話をしています。ですからハートフルクラブではコーチ陣の一人一人の存在というものがすごく大きいです。そのスタッフをこれから紹介します。ただ名前を言ってもしようがないので、名前、出身地、それと我々はいろんなところで感動をもらっているので、その感動ということを何か、1分間で言ってほしいと思います。(「3」へつづく)
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