ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2008. 6.26 Vol.60
VOICE INDEX
「Talk on Together2008」を開催
第2部へ
「Talk on Together 2008 〜第1部 クラブの現況〜」
▼進行:日本経済新聞 運動部 吉田誠一氏
▼出席者:藤口光紀代表 中村修三強化本部長


PHOTO吉田氏:レッズはJリーグでは名古屋グランパスと同じ勝ち点ですが首位に立っています。しかし、ナビスコカップでは1勝もできずに敗退が決まってしまいました。28日にはJリーグが再開しまして、秋にはACLの戦いも始まります。シーズンが始まる前に「2008年シーズンを迎えるにあたって」という今年の取り組み方についてクラブは発表していますが、それも踏まえて、今年のこれまでのピッチ内での戦い、それからピッチ外のことも含めて、藤口代表はどのように総括をされていますか?

藤口代表:こんばんは。日頃から浦和レッズに対しまして、熱きご声援、ご支援、ご協力を賜りまして、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。今シーズン浦和レッズは、昨シーズンACLを取り、さらに今年もアジア制覇、そして去年取れなかったJリーグ、これを必ず取るためにオジェック体制でスタートいたしました。
そのときに、「昨シーズンは非常に堅い試合が多かったね。勝ったけれども、もっと躍動感あふれる試合がほしいね」という話をして、監督も当然「そうだね。もっとアグレッシブに、攻撃的にいこうよ」ということで、準備をして、開幕を迎えました。しかし、残念ながら2試合を終わったところで、試合もそうですけれども、練習場でも躍動感あふれてない、選手が躍ってないということから、かなり思い切って、監督を交代するという決断をさせていただきました。このときは、皆様方におきましては、「一緒に戦っていこうという矢先になんだよ」というお気持ちがあったと思います。ご批判は一身に受けまして、レッズがよくなるためにという決断をご理解いただければと思います。それでゲルト(エンゲルス)体制になって、その点は間違いなく変わってきていると思います。
2008シーズンにあたっては、「強くて魅力あるチームづくり」ということを進めていこう、そして「より攻撃的に」ということを目標にしました。
それと昨シーズンできなかったことですが、やはり若手の台頭と育成、この辺はちょっと欠けていたという事実もあります。それがゲルトになって、実際今シーズンはそういう取り組みがなされていると思っています。
ピッチ内では、そういうことで、まだまだこれからというところもありますけれども、まだ「過程」の段階と思っていただければよろしいかと思います。
あとは試合運営など、ピッチ外のことですが、「より快適なスタジアムづくり」、そして「アカデミーセンターの強化」ということも含めて、取り組んできております。例えばレッズランドも、もっとしっかり独り立ちさせようということで、分社化して自立させようという方向で取り組み、これも現実のものとなってきております。それと、大原サッカー場の練習環境、これもだいぶ手狭になっているものを増築してもっとよくしよう、そして、ファン・サポーターの皆様が本当にたくさん大原においでいただく、そのときの環境整備ということも今取り組んでいるところです。これらはまた後ほどお話をさせていただきますが、2008シーズンにあたってそういう取り組みをしてきました。

吉田氏:春先にいきなり監督交代という大きな出来事があったわけですけれども、その監督交代にあたって、エンゲルス監督にどのようなことを望まれるのか、方針について確認されたと思いますが、その内容についてお聞かせいただきたいのと、その中でできていること、できていないことについて代表にお伺いします。

PHOTO藤口代表:まず、チームとクラブが進むべき方向性が一致していなければいけないということで、それを確認させてもらいました。ゲルトが就任したときに、「情熱あふれるサッカー」という話をしまして、その点は非常に一致したところであります。その辺は後ほど監督本人からお話しさせていただければと思います。まずは、クラブとチームが一体となって進むということ、それと先ほどもお話しした通り、レッズは非常に平均年齢が高くなってきている、このまま行ったらどこかでガクンと落ちてしまう。やはり世代交代をうまくしていかないと、これが3年後、5年後になったときに非常に困る。その中で若手をいかに起用していくのかというのは非常に重要なポイントでもあります。その点はゲルトも分かっていまして、それが一番大きなポイントだったと思います。
それと、対メディア、ファン・サポーターに対して、どういう選手が接触をするのか、対応をするのかということを、もう一度確認しようということがあります。選手が試合場でサッカーができるというのは、多くのファン・サポーターの皆様、そしてメディアの皆様がいてできるということをもう一度しっかりと選手に理解させ、指導してほしいと確認しました。
細かいことはまだ多々ありますけれども、この2点については非常に大きなポイントであったと思います。

吉田氏:ナビスコカップなどで非常に若い選手を新しく試されたりしているわけですが、すぐに結果が出るものではありません。そういう成果が出るのはこれからだと思います。ですが、それらの若手を試す以前からエンゲルス監督は就任早々、堤 俊輔とか、エスクデロ、細貝 萌などを積極的に登用して、彼らはもうチームの「軸」になっていると思います。この辺の世代交代も含めて、中村さんはエンゲルス監督の戦いぶりについてはどのように統括されているのでしょうか?

中村強化本部長:ゲルトになってから、今名前が出てきました細貝、セルヒオ、堤、こういった選手が定着してきたと思います。勝ちながら選手を育てる、選手を育てながら勝ってきている、そういう部分でゲルトは非常によくやってくれていると思います。非常に難しい部分だと思いますけれども、そこをしっかり取り組んでくれています。

吉田氏:中村さんは今日ブラジルから帰国されたところだと聞きましたが、夏に向けての補強などについてはどのようにお考えになっているのでしょうか?

中村強化本部長:これは監督ともよく話しているのですけれども、我々としては、これからJリーグ、ACLで戦って行く中、そして優勝をしなければいけない中で、しっかりと戦力を整えるのが我々の仕事だと思います。監督の要望があって、そのときにすぐ対応できるような準備ということで今回は行ってきましたけれども、それはこのタイミングになるのかもしれませんし、来年の2月に向けてのタイミングになるのかもしれませんけれども、準備はしっかりしてきたと思っています。

吉田氏:具体的にこのポジションというような問題は抱えていらっしゃるのでしょうか?

中村強化本部長:そこは今ディフェンスの選手を考えています。ディフェンスといっても、そこだけしかできないということではなく、いくつかのポジションができるDFで考えています。

吉田氏:トップチーム以外で「アカデミーセンターの充実」ということもレッズはずっと取り組んできたわけですけれども、どのようなことをしてどのような成果が上がり、今後どのように展開されていきたいかということを教えてください。

中村強化本部長:まだまだ足りない部分が多々あると思いますけれども、2002年から私は強化の仕事に携わりましたが、その中で強化と育成が連携した体制作りをしました。2003年に育成部門からいい選手を獲得しようとした第一期生が今年トップに登録した山田直輝、高橋峻希になります。年齢の関係で時間がかかりますから、今は一期生、二期生のあたりで芽が出てきています。トップチームの戦力という意味ではもう少し時間がかかるかもしれませんけれども、アカデミーで育った子供たちが、トップに上がってきています。その前に入っていたセルヒオも今定着しつつありますので、アカデミーセンターとして少しずつ結果が出てきている状況だと思います。まだまだ、これから出てくる選手が多いと思います。
この第一段階が終わりまして、今シーズンからアカデミーセンター長に外部から矢作典史を招聘、指導者の部分でも外部から招聘したということで、さらにレベルアップしようとしています。
ハートフルクラブも、元選手であった城定信次、室井市衛が戻ってきて、これからさらに活性化していきたいと思っています。

吉田氏:レディースの方も活躍されていますね。

中村強化本部長:レディースも今年から村松 浩監督に代わりまして、現時点では2位ですが、今まで一回も勝ったことがなかったベレーザに勝って、サッカー自体も、抽象的な表現ですが、人とボールが動いて、後ろの選手がどんどん追い越していくようなサッカーができてきていると思いますので、トップだけではなく、レディースの応援もお願いしたいと思っております。

吉田氏:話の順番が逆になりましたが、今レッズがリーグ戦で首位にいるわけですが、その成績自体についてはどのように評価されているのでしょうか?

中村強化本部長:ナビスコカップでは皆様に申し訳ない結果で終わってしまったのですけれども、リーグ戦では今首位です。数字的にも得点が一番多く、失点が一番少ないという理想的な形ですが、内容を見るとまだまだ不足している点がたくさんあります。その内容を充実させていくために、今、チームはしっかり練習に取り組んでいます。

吉田氏:「内容が伴わないじゃないか」という声はあると思いますが、では代表は「レッズのサッカー」というのはどういうものを築いていきたいとお考えですか?

藤口代表:最近よく「レッズのサッカー」ってどういうのですか?ということを聞かれますが、例えば昔は「ヨーロッパ型」・「南米型」というような形がありましたが、現代のサッカーというのは、ほとんど同じ方向に向かっています。非常にハードワークが必要なゲームになっています。ですから日本代表もそうですし、他のところもそうです、目指すところは同じ方向に行っているのではと思っています。具体的にボールポゼッションを高くして、ワイドから点を取るとか、攻守の切り替えを早くするとか、そういうところはあるとは思います。けれども、タイトルを取る、勝利を求めるというときに、最後に必要なものが何かというのは、やはり「ハート」の部分だと思います。例えば、「最後まであきらめない姿勢」これをみんなが持って常に戦う、それが一番大事なところではないかと思います。
残念ながら、ナビスコカップを見ていて皆様が不甲斐ないと思ったところはその辺ではないかという気がします。ですから、もう一度そのベースのところをしっかりと指導して、浦和レッズというチームを作っていってほしいなと思います。

吉田氏:中村さんはどういう部分をもっと積み上げていかなければならないとお考えですか?

中村強化本部長:今、藤口の方からもありましたけれども、トップだけではなく、子供たちやレディースにもよく言っているのは、「戦う姿勢」ということです。そのベースがあって、技術の部分があると僕は思っていますので、「戦う姿勢」が非常に大事だと思っています。

吉田氏:リーグ戦が再開すると、ポンテとかアレックスが戻ってくると思いますが、どういうことを期待してらっしゃいますか?

PHOTO中村強化本部長:ポンテが帰ってくることで、中盤にタメができて、パスもできる、ドリブルで仕掛けられて、ゴールまで行けると、昨年のMVPですし、彼は非常に大きい戦力ですね。そしてもう一つはポンテが入ることで、高原のポジションが明確になります。今まではシャドー(ストライカー)的なポジションで中盤の動きに入ってきたり、トップにいなければいけないときに少し引いていたりして、彼自身も少し運動量が多く必要な部分があったと思いますけれども、ポンテが入ることで、高原のポジションも明確になって、点を取るポジションにいることで、点も確実に取っていくということになると思います。

吉田氏:チームの状況についてはとりあえずこれくらいにしておきまして、クラブの取り組みというところに移らせていただきます。昨年の7月30日に「スタジアム運営指針」を発表しまして、スタジアムの観戦環境を改善していこうということに取り組んでこられたわけですけれども、ここまでできていること、できていないことについて、代表はどう評価されていますでしょうか?

藤口代表:スタジアム運営指針である「H・E・A・R・T」の頭文字を取って「HEART」と言っている中の「H」、最初は、ホスピタリティですけれども、より快適で安全なスタジアムづくりということで、たくさんの人に「レッズワンダーランド」を体験していただこうといろいろ工夫はしてきております。その一つがアッパースタンドについて、ファミリーで子供と一緒に、落ち着いて見ていただくためにファミリー席対応にしようということで、「MU席」というものを設けて取り組んでおります。現実にその席で見るお子様連れが増えてきているということもあります。しかし、アッパースタンドでは臨場感に欠けているだろうということで、去年から場内FMを採用し、それをさらに加速してやってきております。そういう点では、一歩一歩ですけれども進めております。小さいところですと、オーロラビジョンの活用というものもあります。今までは試合中は映像を流さないということでしたが、片方のビジョンだけ映像を流しています。これはワールドカップなどでそういうものを始めていましたので、小さいことですが、そういうことから皆様に楽しんでもらおうということはやっております。
「E」は「エコロジー」ですけれども、割りばしの材質を変えるとか、アルミ缶の分別回収をするとか、そういう活動をしています。
「A」のアクセシビリティ、やはり埼玉スタジアムは遠いねということが一番言われていたところで、特にホームタウン、浦和から一時間近くもかかるようでは遠い、これを何とか解決したいと思いました。これはクラブだけではどうにもならないので、行政とも話し合って、ちょうどJR浦和駅の東口が再開発される、それならばシャトルバスの発車場も東口にすることによって、10〜15分短縮できるだろうということで、浦和パルコのオープンと同時にシャトルバスの発車場を東口に移しました。このことによって浦和駅から埼玉スタジアムまで平均すると35分、もちろん時間帯によっては違いますが、早ければ25分ぐらいで着くこともあるようです。浦和の街から30分以内で着くように、さらにもっと工夫をする必要があると思っていますけれども、徐々にそういう取り組みをしております。あとは埼玉スタジアムにタクシープールを設けて、帰りにタクシーを使って帰りやすくするということもしていますし、埼玉スタジアム行きのシャトルバスが発車する浦和パルコ内に「レッズゲート」がありますが、ここで試合前のイベントを行なう、そしてマッチデープログラムを販売して、バスを待っている間に読んでもらおうとか、そういうこともしてきております。
そして「R」、「ルール・フレキシビリティ」ということで、やはり決まりがこうですということではなくて、一般のファン・サポーターの皆様が安全・快適に見られるようなやり方を、フレキシブルに考えて対応していこうという取り組みであります。スタジアムを赤くしようということも、埼玉スタジアムと協力していろいろな取り組みを進めているところです。
最後の「T」は「トゥギャザー」、一緒になって取り組むということで、一昨年から秋に「All Come Together!」の活動を開始しましたけれども、それをさらに加速しようということで、昨シーズン行ないまして、また今年もより多くの方に参加していただいて一緒になってやっていこうと考えております。
ただ残念ながら、5月17日、ガンバ大阪戦で、ああいうことが起こってしまいました。本当にいいスタジアムの状況だったのにもかかわらず、ああいうことが起こってしまいました。あれはもうガンバのファン・サポーターではないと思いますね、ああいう人は。本当に確信犯的な人だと思います。レッズのファンの中にモノを投げ込んでああいうことになってしまいました。それをクラブが、未然に防げなかった、そのことが残念でなりません。一番安全なスタジアム、世界に誇れるスタジアムを作ろうということで取り組んできた結果があのような事態になり、ファン・サポーターの皆様を裏切ってしまいました。しばらくの間非常に我慢していただいた皆様がいたわけですけれども、それを防いであげることができませんでした。
ファン・サポーターの皆様からも「クラブは何をやっているんだ」というお叱りを非常に多く受けております。これはもうその通りだと思っています。今、その点をもう二度とあのようなことがないように、本当に安全なスタジアムにするためにもう一度最初からやり直そうという気持ちで取り組んでいるところであります。

吉田氏:あの事件を踏まえて、どのような対応をされたのでしょうか?

藤口代表:本当にサッカーを愛するファン・サポーターであれば、ああいうことはありえないと思います。ですが、それを防ぐのがこれからの警備、スタジアム運営に課せられた課題だと思います。日本のスポーツ運営というのは「自主警備」が中心で、事件が何か起こらないと警察はなかなか活動してくれません。そのジレンマというものはあります。その辺は警察サイドにもお話をして、予防の段階で活動をすることができないのか、ということも考えています。入口での持ち物検査もやっているわけですけれども、もっと徹底するということもしなければいけません。ただ、そうすると本当に何にもない人たちにも負荷をかけてしまう、そのせめぎ合いというのは我々運営サイドでも頭を痛めているところでもあります。緩衝地帯を今広げておりますが、本当に何かをやろうとしたら緩衝地帯などあってないようなものになってしまいます。一人一人にそういう気持ちを持たせない雰囲気作りをしていくのが大事だと思います。ただ、こういう世の中ですから、皆様が安全にスタジアムへ来られる体制を作るのが運営側の責任だと思っています。

吉田氏:ファン・サポーターの皆様からは、「雨の日、日差しが強い日、入場前に待っている間の環境が厳しい」という意見がありますが、それについて具体的に対応策はありますでしょうか?

藤口代表:まず屋根の話につきましては、ずっと出てはいますが、まだ(埼玉)県に話をぶつけても進展していないというのが状況です。埼スタは県営スタジアムであってクラブが残念ながら自由にはできません。県もいろいろな問題を抱えていて、なかなか踏み出せない、そういう中で芝の問題もあります。本当はホームスタジアムというのは、練習している芝と同じものの方が選手はやりやすいわけです。でも、埼玉スタジアムは屋根があって、大原には屋根がない、そのために大原は暖地型、埼スタは寒地型と実は種類が違います。大原の芝は今、最高の状態です。どこへ行っても大原以上のピッチはないくらいです。そうすると、埼スタは少し環境が違います。これは本当のホームじゃないんじゃないかというのもあるんですけど、やはり屋根がある・ないについても、現在芝を世話している方々に聞くと、非常に難しいと言われています。ですからさらにゴール裏に屋根を追加したとしたら、今の状況は保てないというような話もあります。ただ温暖化が進んで気温が上がっていますから、あと2年もしたら変わるのではないかとも思っていますし、品種改良もされていますので、そういう環境の中でも育つ芝生というのも出てくると思います。ただ、芝生については今ヨーロッパ選手権をやっていますけど、今ヨーロッパで流行っているのは、すぐ張り替えるということです。ちょっと信じられないのは大会期間中に張り替えるという時代になっています。でも日本には今そういう文化はありません。ですから、しっかり根付かせてよくするという形でずっときています。なかなか芝生と屋根との関係は切り離せないので、その辺も検討課題にしています。それから、ビジョンがあるのですぐ上に屋根がかぶせられない、全部屋根をかけるようにすると40億円かかるという話もあって、全体的に話が進んでいません。そういう点では皆様から要望をいろいろ受けているんですけれども、今新設の屋根については進展していません。
また、並んでいて夏場になって暑いということについては、今まで「ミスト・シャワー」ということで、霧が噴き出すようなものを置いていましたけれども、皆様からすると「なんか形だけだね」みたいなことがあると思います。今年は、テントを設置することを考えています。まずテントで日よけ、それでやってみて、一つ一つやりながら工夫をしていければと考えています。

吉田氏:いろいろ、できること・できないことがあると思いますが、できることから一つずつ取り組んでいただければと思います。その他アトランダムに質問を続けさせていただきますけれども、中村さん、これもガンバの試合と絡んでいるのですが、選手の言動や素行について、問題があるのではないかという指摘もあるわけですが、クラブとしてはどのような指導を行っているのか教えてください。

中村強化本部長:個性の強い選手が多いので目立ってしまう部分もあると思いますが、本当の部分ではすごくいいやつが多くてですね、例えば闘莉王なんかもよく失礼なことを言って取り上げられることがあるんですが、子供の日には自分で見学に来ている子供たちを呼んで一緒にサッカーをやったり、本来そういう優しいやつなんですね。そういうところがあるのは知っていただきたいです。でも失礼なことを言ったことに対しては、しっかり選手を呼んで注意をしています。今回のガンバの試合の後には全員集めて、「冷静にプレーすること」、「試合に集中しよう」ということを強く話しました。そういうことで、これからも厳しくしっかりと取り組んでいかなければいけないと思っています。

PHOTO吉田氏:レッズは世界に羽ばたいていくんだというお考えを表明されて戦っているわけですけれども、もう一度地元に足を付けていくという活動も見直していかなければならないと思うのですが、ホームタウン活動について、藤口代表はどのようなお考えを持って、どういう取り組みをされていますでしょうか?

藤口代表:日本からアジア、アジアから世界ということで取り組んできています。ただそのときに、クラブ内でも話をしているのは、「世界と言ったって、足元をしっかりしないとダメだ、ホームタウンがあって世界があるんだ」ということは常々言っているのですが、いろいろな取り組みの中で、例えばハートフルクラブの活動を、昨年から海外でも始めました。国際交流であったり、そういう中でアジアの国々を知り、チームがアジアで他の国に行ったときにいろいろな情報を得られるとか、そういうこともあります。これからアジアに出ていくためには、相手の国のことも知る必要があります。ハートフルクラブの指導者にとっても、そこの地で、言葉が通じない中で子供の心をどのように引き付けることができるかということは、指導者にとっても非常にいい経験だということで取り組んできています。ただ、その情報が外に出てきます。そうすると、皆様からすると「なんだ、地元でしないで外でばっかりしているのかよ」というような意見も頂きますが、海外でやっているのはほんのわずかなことで、地元では本当に毎日ハートフルの活動を色々なところでしております。ホームタウンを忘れているわけではないんですけれども、情報が出てこないので、そういう見られ方をしてしまっているところもあろうかと思います。
ただ、やはりもう一度「浦和レッズ」の原点である「浦和」を中心として、浦和の皆様、ホームタウンの皆様、さいたま市の皆様と一緒になってやっていこうと思います。そういう風に見られてしまうというのは、実はどこかにそういう気持ちが垣間見られるのだろうということもありますから、もう一度ホームタウン活動をやっていこうと思います。もちろんこれからも「All Come Together!」ということはやっていきますけれども、さらに地域と密着した活動をしていければなと思っています。
そういう意味では、今は埼玉スタジアムがメインとなっていますが、駒場スタジアムでも、少なくとも年に1試合はリーグ戦などをやろうと思っています。確かに見られない人がたくさんいるかもしれません、でもそうしたら浦和の街の中で、いろいろな店で、例えばテレビを見ながら盛り上がるということもできるのではないかと。いろんなやり方で、みんなで一緒になって盛り上がるということが方法論としてできるのではないかとちょっと考えています。

吉田氏:中村さん、ジュニアチームについては保有するおつもりがあるのかどうかはいかがでしょうか?

中村強化本部長:今はそういう考えは持っていません。浦和のジュニアチームは非常に歴史があって、非常に強いチームが多いんですね。そういう中にレッズが入っていくことは、非常に問題になるのではないかと僕は思っています。今、実際には浦和のいい選手、可能性のある選手はレッズのジュニアユースに多く入ってきています。そういう地域の子供たちがレッズに入ってくるという流れはできていると思いますので、違う形で協力できればと思っています。具体的にはトレセン活動にコーチを派遣したりしています。実際に、今は、浦和のジュニアチームの活動と、いい関係ができているのではないかと思っています。良好な流れの中で、実際はレッズの下部組織みたいな形になっていると思います。

藤口代表:ちょっといいですか(笑)。いい方向に向いているんですけれども、世の中の流れが少し違った方向に進んでいることも事実なんです。来年から日本サッカー協会が方針を出したんですけれども、小学校年代の大会にセレクションチームは出してはいけないという、そういう方向になるらしいんです。従来、浦和は「FC浦和」という選抜チームを作ってきましたけれども、来年からそういう形になるかもしれないという事で、埼玉県協会の子供の年代を担当している委員の方から、「レッズで(ジュニアチームを)持ってくださいよ」という話がきたのも確かです。今、すぐにそういうチームを持ってやろうということではないんですけれども、これから世の中の流れの中でどうしたらいいのかというのを、実際に子供たちを指導している皆様と話し合いながら進めていく必要があるのかなと思っています。

吉田氏:レッズランドについては分社化されるということですけれども、どうして分社化するのか、分社化するとどういういいことがあって、それを踏まえてどういう展開をしていきたいのかということはいかがでしょうか?

藤口代表:今、吉田さんから分社化という話があったんですけれども、実は明日浦和レッズの臨時株主総会というものがありまして、そこで正式に決定するんですけれども、まあいいですね(笑)。取締役会では承認されていますから。大丈夫だと思います。
2005年の8月にレッズランドは仮オープンしました。最初から何億もかけて整備してやっていこうというよりも、徐々に徐々に毎年毎年自分たちの手で作り上げていこうということで進んできました。その中でただ、将来的にしっかりとした組織を作って取り組んでいくことが大事だろうと思っていました。親会社である三菱自動車もかなりそのあたりは強く言ってきていました。ですから、その辺がはっきりしないと設備投資なんかもなかなかできないという状況下できていまして、その辺が整理されまして、8月からレッズランドという会社で分社化して、もっと環境整備も進めて、より快適なレッズランドにしていきたいと思っています。独立することによって、もっと環境を整備することが大きなポイントだと思います。

吉田氏:FCバイエルン・ミュンヘンとパートナーシップを結んでいるわけですが、具体的にどういうことを行っていて、どういう成果が上がっているのでしょうか?バイエルンは7月31日に来日してレッズと試合をするわけですが。

藤口代表:ヨーロッパでも有数のクラブであるバイエルンとパートナーシップの締結をしているわけですけれども、これはむしろバイエルンサイドからアジアで最も信頼を置けるクラブである浦和レッズとパートナーシップを結びたいという話がありまして、レッズとしてもこれはいい話だということで始めたものです。例えば年間何千万かバイエルンに払うというようなことは一切ありません。まったく対等な形でパートナーシップを結んでいます。その中で、いろいろな人の交流ということもしております。例えばジュニアユースチームを夏場に向こうに送り込んで2週間ほど合宿をしながら大会に出るということはやっていますし、今年も土田GKコーチがバイエルンに行って、向こうのチームに帯同して短期留学のような形を受け入れてくれたり、そういう現場サイドの交流が一つですね。
スカウティングのところでも、膨大な情報をバイエルンは持っています。その辺でいろいろ情報は入るんですが、今のヨーロッパ市場は金額がケタ違いです。ですからバイエルンが対象としているような選手は、本当にすぐ手が出るような選手は逆に少ないところで、そういったところのギャップを感じているところもまた事実です。
また、去年からは、営業部の、例えばマーチャンダイジングだったり、実際のクラブのスタッフが行って、いろいろ情報交換をしたり、いいところを取り入れたりだとか、そういう交流をしています。

吉田氏:非常にユーロ高の中で外国人選手を取りに行くのは大変だと聞いていますけれども、中村さん、どうなのでしょうか?

PHOTO中村強化本部長:実際ブラジルに1ヵ月近く行ってきたのですが、4年前に行ったときと状況が大きく変わっていました。4年前はセンターフォワード、ストライカーは非常に高い。それは世界中でセンターフォワードが不足しているからだという話で、センターバックは大丈夫ですよという話だったんです。それが今回行ったら、FWはもちろん高いのですが、センターバックも世界中で不足しているという事でした。優秀なブラジル人の選手をこの時期に皆ヨーロッパの大きなクラブが見に来ていて、そういうクラブは、またお金の単位が違います。1,000万ユーロ(約16.6億円)以上の金額を提示しているような状況で、ここ数年で本当に変わってきていますね。ブラジル国内で大きな実績がない選手でも非常に高くなっているのが現状です。

吉田氏:わたくしからの質問は以上にさせていただきまして、ここまでの話を踏まえまして質問がありましたら会場から受け付けます。

最初の質問の方:本日は貴重なお話をと言いたかったのですが、あまり貴重な時間を過ごせたとは思えませんでした。3月20日に北サイドスタンドのゴール裏に藤口代表と中村本部長がいらっしゃって、藤口社長は「今、我々に何ができるか分からないが、必ずやる、やらせてください」とゴール裏のファン・サポーターと約束していただいたと思います。それに対してどのくらいできているのか、どういうことをして、いつごろまでにどんなことができるのか、クラブがやっているのかということを具体的にお話しいただきたいと思います。

藤口代表:あのときに一番皆様方から言われたのは、やはりサポーターとクラブとの信頼関係ということが非常に大きかったと思います。要するに一緒にクラブについていこうといった矢先に、コロッと指導者を変える、こういうことではついて行けない。もっと明確なビジョンを持ってやってほしいというのが一番のポイントだったと思っています。ですから、我々は「強くて魅力のあるチーム作り」、その点についてゲルト・エンゲルスに託して今取り組んでいる最中であります。その結論が出るのは、すぐに目に見えて分かるというわけではないですし、これはやはりシーズンが終わったところで分かることだと思っています。それは中村強化本部長ともども、取り組んでいるところでありまして、それに対して今どうしたということは言えないところだと思います。
それで、クラブの取り組みについては、ホームタウンに誇りを持ったクラブ作りについてはずっと取り組んでいるところでありまして、これは地道に一歩一歩やっていくしかないわけです。先ほども申し上げましたが、ホームタウン・浦和と一緒になってやっていくしかないと思っています。

質問:目標としたことに対して、企業としておそらくうまくいかなかったと思われていると思います。そのうまくいかなかったということに対して、打てる策はあるにもかかわらず、我々は外から見ていて、ベストな施策を取っているとは思えません。それについて、クラブは何がベストだと思ってこれまで動いていたのか、それからこれからどう動こうとしているのかということをもう少し具体的に説明してください。

藤口代表:例えばどういうことですか?

質問:補強です。そして、ナビスコの試合をご覧になっているかと思いますが、覇気がない。ハートが大事だと言っていらっしゃるのにもかかわらず、選手から一切伝わってこない、それがキャプテンだったりということが何度もありました。そういうものについて、クラブとしてどのようにもっと魅力のあるクラブというものを、具体的にどういうことというのが一切伝わってきません。聞こえてきませんし、見えてきません。それをもっと具体的に教えていただけないでしょうか。

藤口代表:分かりましたが、先ほどからずっとお伝えしていることを、続けていくしかないと思っています。特効薬的なものをこうすればいいというものではないと思っています。それから山田ですが、毎日の中で指導はしているわけですけれども、彼自身の性格的なものの「見え方」があると思います。彼は彼なりにいいものを持っているところがあるわけでして、おっしゃることもよく分かります。申し訳ないですけれども、あなた以上に、僕が試合中に腹が立っているところはそこです。そういう見え方をしてしまいますが、彼は彼なりにいいところがあるんです。だから、我々は選手のいいところを出していきたい、ゲルトにはそれを言っているんです。いい選手がいっぱいいる、そのいいところを出してほしいということです。だからこれは言い続けていくしかないです。それは分かってほしいと思います。

質問:別に山田選手を批判をしているわけではないです。補強というものに対して、もうちょっと具体的なお話を聞かせてください。現場がどういうニーズを持っているのか、ほしいと言っているのか、言っていないのか?

中村強化本部長:可能性はウィンドウが開いているときまであります。今回、私はその準備をしてきました。もし(エンゲルス監督が補強に)「行こう」と言ったらすぐに行きます。

質問:すぐといってもリーグは再開しますし、ウィンドウもそろそろ閉まるころだと思いますが。

中村強化本部長:そうです。

質問:現場からのニーズというのはありますか?

中村強化本部長:ありますよ。日々話をしていますから、それで我々は準備したわけです。それがこのタイミングなのか、2月なのかということです。細貝、堤といった若い選手が伸びてきている状況の中で、どうするか。ACL、Jリーグを本当にこれで取れるか、ケガ人が出るかもしれない、そういうこともゲルトと議論して、総合的に決めなければいけません。その準備だけはしています。メディアの方もいらっしゃいますし、誰を取るぞというようなことは、今はなかなか言えません。しかし準備はしっかりしています。

藤口代表:例えばオリンピックのチームがありますけど、オーバーエージを入れるか入れないかということには議論がありますよね。本当に入れた方が強くなるのか、分からないんです。短期間で入れたとして、本当に選手がフィットできるかどうか、逆に言ったら障害になることもあるんです。非常にチーム作りというのは難しいところですよね。

質問:補強が必要なものがあるとお考えなのであれば、確保するような動きがあったのかどうかということです。

藤口代表:ですから、今やっていますから、それをお分かりいただきたいと思います。

質問:地域密着ということをいろいろおっしゃっていますが、例えば浦和のお祭りで、浦和レッズのブースが一切なかった、そういうところも一つ一つできることだと思いますが?まだトゥギャザーという気持ちになることはできません。

藤口代表:それは今さいたま市と一緒になって取り組んでいます。レッズがあちこちに出ることが果たしていいことかどうかということは、実は議論をしながらやっています。逆にどんな所にも出ていくのがいいのかというのは、マイナスな部分もあったりします。それは市と話し合いながらやっています。もう強引にあっちこっちに行けばいいというものではないです。それはわかってください。いろいろなご意見を頂き、逆にお礼を言わせて頂きます。ありがとうございました。

吉田氏:その他、質問がいろいろあったかと思いますけれども、残念ながら時間が押しております。代表からもうひと方という声がありましたので、ではもうひと方。

2番目の質問の方:先ほどからお金の話が出ていたと思いますが、クラブとして株主に関して、第三者割当をやるだとか、場合によってはIPO(株式公開)という選択肢もあると思います。市場から資金を集めるということについては、社長はいかがお考えでしょうか?

藤口代表:それは先代から受け継いでいることでもありますが、これは大株主の三菱自動車との関係というのがずっとありまして、実はケンカしてずっと話ができていなかったのが、やっと今話し合いの段階になったところです。ようやく話し合いができるようになって、これからレッズがよくなるためにどうするのか、資本金を増やすのがいいのかどうかも含めて、それを検討しているところです。幸いにも例えば今、お金が必要だというときに、地元の銀行さんがレッズに対しては、信用があるのでお金を貸してくれるという、そういう関係を築き上げられてきています。長年の積み上げの中でですね。例えば現在の資本金が1億6千万です、でも、今、運用ということではやっていけています。ですから今、お金がないからとかそういうものではないんです。ただ、私共としてはやはり地元の人たちとやっていくためには、必要なんですということを今訴えているところです。ただ、資本金というのはただ1回出してもらうだけですよね。レッズにとって今一番大事なのは何か?もちろん株主を軽視するわけではないです、これからも一緒になってやっていくんですけれども、ただ、レッズとしては、シーズンシートを持ってくださっているファン・サポーターの皆様と本当に一緒にやっていくことだと思います。毎年毎年お金を出してくださっているわけですから。ですから来年からももっともっとシーズンシートを持っている方に対して、レッズが何を恩返しできるのかということを、クラブを挙げて検討しているところです。これも一つです。ですから、株主についても第三者割当を一切検討していないわけではありません。これは先方も結構強いんですよ。

吉田氏:ということで、代表も結構ご苦労されていると思います。こういう会は一晩通してやる方がいいのかもしれませんけれども、本当に残念ながら時間になってしまいました。

藤口代表:私ももっと出ていきますので、言ってくださればどこにでも行きます。

3番目の質問の方:そのことについて言いたいことがあるんですが。

藤口代表:どうぞ。

質問:強引に言わせてもらってすみません。質問を受けるという言葉をいつも聞いていますが、例えばスタジアムにはサポーターの意見を受け入れるような質問箱なんて一つもありません。本当に僕らが何かを言えるのはこの会だったり、インターネットのメールだったりします。今日のこの会の告知も、インターネットの小さなトピックのところにしか書いてありませんでした。たぶん気付いている人は少ないと思います。本当に僕らが言いたいことを受け入れる体制はここにはないと思っています。本当はもっと言いたいことがあります。入場時に競馬のゲートのように、どっと入って危険な状況をまったく改善しようとしているのかどうかとか、いっぱいありますけども、そういうのを受け入れるところがないんです。真摯に受け入れる体制を作ってください。スタッフが一人一人に話を聞くのでもかまいません。ここの会場にいる人たちだけではなく、6万人のすべての声を聞いてください。そういう体制を作ってください。

吉田氏:質問箱は設けますか?

藤口代表:具体的に質問箱という形になるかどうかはわかりませんが、今回スタジアムの「コンシェルジュ」的な役割をする人、意見を集約する人がないということで検討はしていたところなので、おっしゃる通りに真摯に受け止めて対応したいと思います。

吉田氏:いろいろな皆様からのご意見をレッズはたぶん受け止めましてよりよいクラブになっていくかと思います。本日はここで終了ということになりますが、続きましてはエンゲルス監督が今か今かと登場を待っておりますので、次の第2部に移らせていただきたいと思います。
※掲載内容は、実際の発言の主旨を変えない範囲で、変更している箇所があります。
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